第9話

 先に学校内にあるギルドの方へ行くと、中は思ってたより人がいた。依頼を受けに来たのか、受付には多くの人が並んでる。その殆どが俺と同じくらいか、少し年上の子だ。


 職員さんに話を聞くのは落ち着いてからがいいと思い、邪魔にならない位置に移動して全体の様子を見ていると、制服を着た女子が2人、俺に近付き声をかけてきた。


「おはよう。あなたは今年の入学試験を受けに来た子かしら?」

「おはようございます。はい、そうですよ。今日は様子を見にきたんです。そんなあなたは俺の先輩にあたる方ですか?」


 そう返すと、俺の様子を見ていた周囲がざわついた。もしかして高い身分の人かな?俺に質問してきた女子は目を丸くし、この人の後ろにいる女子からは強い視線を感じるんだけど⁉︎


「あら、ふふ。そうね、君が入学したら在学してる私は先輩になるわ。ギルドに来たということは、あなたはもう仮冒険者として登録してるのかしら?」

「あ、確かに入学できないと先輩とは呼べませんもんね。故郷では仮冒険者として活動してましたよ。だから依頼はどんなものがあるか気になってるんです」


 そう言うと予想通りだったからか、微笑みながら頷いてた。


「なるほどね…それなら私達がここを案内するわよ?どうせ見るなら近い位置で見た方がいいでしょ?」

「…邪魔にならないなら、是非よろしくお願いします。いつ落ち着くかわからなかったので、ここは後回しにして訓練場へ移動しようか考えていたんですよ」

「それなら、ここを見た後は訓練場にも案内するわ。まずは…ここからね」


 そうして案内されながらギルド内を見ていくと、いくつか違いがあった。


 ① 学校のギルドにはCランク以下の依頼までしか置いてない。学校側ではBランク以上の依頼は基本受注できないようにしてあるそうだ。

 通常は自分のランクより1つ上の依頼も受注ができるようになっている。


 昔はBランクの依頼も置いていたが、Cランクになったばかりの子が受注して重傷を負い、中には亡くなった子もいたらしい。

 今は実力が認められればBランクの依頼を受けられるようになるそうだが、現在認められてるのは数人しかいないって。



 ② 依頼の報告は王都、学校どちらでも報告できるようになっている。

 これは2箇所に分かれてあるからだね。

他に考えられるのは大人の冒険者がいる場所でも利用できるよう慣れておくためもあると思う。



 大きな違いはこの2つ、他は今のところ通常のギルドと変わらないね。


 先輩(予定)に冒険者ランクを聞かれたが、ここで騒がれるのは嫌なので入学してからの楽しみにして下さいと言っといた。

 これでまた周囲がざわついたけど、その先輩(予定)はそれなら君が入学してからの楽しみにしておくわ。と言って引き下がってくれた。ありがとうございます!



 その後は予定通り訓練場に案内してもらった。


 訓練場は複数あって、用途別に利用することが多く、大人数になる大会とかでは、複数使って同時進行で進めることもあるそうだ。

 ひとつだけでもかなりの広さで、今見ている場所では2ヶ所に分かれて模擬戦をしているところだ。


 俺達はいま観客席の方で模擬戦を見ている。


「丁度いいタイミングで来れましたね」

「そうみたいね。今ここの訓練場を利用してるのは冒険者ランクC相当やそれ以上の実力者が模擬戦をしているの。その中でも今左側で模擬戦してる男女、あの2人は別格よ。2年前冒険者ランクがCになって、今年のはじめにBランク依頼も認められて達成をしているこの学校の2強よ」

「あー、はい…これは、確かに、レベルが高い戦いですね…」


 後ろに控えてた人がそう言うと、先輩(予定)が今利用してる人達について教えてくれた。


 今左側で模擬戦をしてる男女、男子が剣が主体で体術と氷魔法、女子が手甲と足甲を装備した体術に雷魔法を使っている。


 男子の方は斬撃と同時に氷魔法を使って2方向から同時に攻撃してる…あ、蹴りも入れて攻撃のタイミングずらしてきた。

 女子の方は手甲で受け流すか回避しながらの反撃に足甲の蹴り、雷魔法で氷魔法の対応…だけじゃなくて攻撃に使わせないようにもしてる。


 どっちも攻防の入れ替わりが激しいな!


 …うーん、この戦闘スタイルに見覚えがあるぞ…?というかよく知ってます。

 大きくなってるけど、3年前の面影があるし、すっごく強くなってるよ2人とも!!


 あ、その女子と目が合った。


「?……あぁーーーーー!!!!」


 訓練場に突如響き渡る大声。その女子は俺達…正確には俺を2度見て何か気付いたのか指差して叫んだ。


「おい!いきなりなんだよ大声出して!あっちに誰かいる……?……あぁーーーーー!!!!」


 再度響き渡る大声。耳を塞いでた男子が女子の指差した方を向いて、俺達…これも俺を2度見て気付いたのか指差して叫んだ。


 これはちょっとイヤな予感…俺は硬直してる2人に声をかける。


「あー…先輩方、この観客席から跳び降りても大丈夫ですか?あの2人こっちに来ると思うので」

「…え?あ、それは大丈夫だけど、知り合い?」

「はい、というか身内ですね」

「「身内!?」」

「じゃあちょっと迎えてきます!」


 先輩(予定)達が驚愕すると同時に観客席から跳び降りる。と男女2人も装備をしまってこちらに向けて走り出す。うん、予想通りだわ。


「姉さん!久しぶ「ライル〜!久しぶり!!」ぶふぅ⁉︎」

「ライル!久しぶりだな!!」

「…ぷはぁ⁉︎…兄さんも久しぶり!」


 俺はニヤけてた顔を笑顔に変えて2人に手を上げると、ひと足先に来た女子…姉さんが手を広げて思い切り抱きついてきて、ちょっと遅れて来た兄さんが俺に近付き肩を叩いてきた。



 こうして俺は双子で兄のカイルと、姉のシェリルと3年ぶりの再会を喜ぶのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る