第10話

「ふふーん♪3年ぶりのライルの抱き心地〜♪」

「改めて3年ぶりだなライル。王都にはいつ到着したんだ?」

「昨日だよ兄さん。今日は学校側のギルドと訓練場を見に来たんだ」


 俺は3年ぶりに再会したシェリル姉さんに抱きつかれながら、カイル兄さんと3人で話をしている。


 訓練場まで案内してくれた先輩(予定)の2人は身内でごゆっくり、みたいな顔して手を振り去っていった。

 入学して再会したらお礼言わなきゃね。


「それじゃあライルは4日後が入学試験になるんだな」

「理事長はそう言ってたよ。2人に会えて今日は満足したから、明日に王都の冒険者ギルドへ行く予定」

「私達が卒業する前にはライルと会えると思ってたけど、かなり運がよかったみたいねー」


 2人は現在15歳、俺の入学と入れ替わるように卒業してしまうので、タイミングが悪いとこうして会えなかった可能性もあったのだ。


「それなら俺をここに連れて来てくれた先輩方に感謝だね。2人は俺達の様子を見て挨拶とお礼もできないまま帰っちゃったけど」

「彼女達には俺らもライルを連れてきてくれたお礼を言わないとな」

「そうね。その2人とは知り合いだし、私達から会いに行きましょ」


 それから俺達は馬車の長旅のことや学校のこととかを話していると、ふと兄さんが聞いてきた。


「そういえば、ライルはいつ冒険者ランクがCになったんだ?」

「あ、それ私も気になる」

「…まだCランクなってないとか思わないの?」

「「思わない」」

「ぐっ…1年前だよ」

「「十分早いじゃない(か)!」」

「いやいや、2人の方が早くCランクになってるでしょ⁉︎」

「ライルは父さん母さんとの模擬戦と、メリルの世話ばかりしてたんだろ?」

「どうせ依頼受けずに樹海で鍛練と実戦優先してただけでしょ?」

「……どっちも正解です…」

「「ほらー」」


 さすがというべきか、2人は3年離れてても俺の行動はよく分かってました…。


「…ライルから聞くとこの後模擬戦をやりたくなるが」

「あー、察してると思うけど、入学試験前だし戦闘で目立つ気はないよ」

「まあ、そうなるわよね。私達の弟が入学するってだけでも噂になるのは間違いないし」


 姉さんが呆れたように言うと、兄さんが同意するように何度も頷いてる。2人とも実力がある分、面倒ごとが多くて苦労したみたいだ。


「それならライル、一緒に王都に行かない?その時王都の冒険者ギルドにも案内するし、私達がいる間によく利用してるお店も紹介しておきたいのよ」

「お、それはいいな。俺達も世話になって助けられたし、ライルのことは紹介しておきたいな」

「わかった。そういうことなら2人と王都に行くのは大丈夫だよ」


 俺がそう言うと、2人は嬉しそうな顔をして


「よし、決まりだな!さすがに今日は…ダメだよな」

「明日も打ち合わせがあるからダメよ、行くなら2日後ね!」

「ああ!なら2日後確実に行けるよう準備するぞ!」

「ええ!終わらせられることはとっとと済ませちゃいましょ!」

「兄さん、姉さん。なら明日は王都の散策だけさせて。さすがに何もしないでいるのはもったいないし、嫌だから」

「ああ、それならいいぞ」

「それじゃあライル、私とカイルは急いで用事を済ませてくるからまた2日後に」

「うん、それじゃ2人とも」


「「「またね(な)!」」」


 こうして俺は兄さんと姉さんと別れた。かなり話し込んじゃったし、今日は宿に帰ろう。




 入学試験まであと3日。


 朝、自己鍛練を済ませ宿の1階に行くと、何か考えごとしながら待機している案内の人がいた。

 声をかけてみると、どうやら学校で有名な実力者の双子の弟だか妹が今年の入学試験を受けにきたと噂になっているそうで、それを聞いた人達が騒いでいて、先生方は対応に追われているらしい。


 すみません、それはきっと俺のことですね…と心の中で謝罪をしながら兄さんと姉さんはほんとに有名なんだな、とも思った。


 散策する前に宿の人からキッチンを借りる許可をもらえたので、持ってる材料を使い切る勢いでクッキーを作った。

 その匂いを嗅ぎつけたのか、宿の女性の人やここに泊まっている子供達が覗き込んでいたから、作った一部を渡すと喜んでくれた。



 少し時間がかかり昼食後、荷物を持った俺は案内の人に許可証を返すのと同時に王都を散策することを伝え、案内図をもらい宿を出た。ここからは散策の時間だ!



 王都の方に行くと、そこには以前散策した街より更に広く、多くの人や店が並んでいた。


 王都も人以外の種族がいて、街で見かけた他種族以外にも、小人や鳥人、竜人らしき人もいたよ。


 圧倒されながらも散策を続けていると、途中屋台の並びを見つけたので、小腹が空いた俺は串に刺された焼肉と果汁水を買い、その先の広場に運良く空いてるベンチがあったので、食事も兼ねて休憩することにした。



 食事をしながら広場を見渡している時に、ふと空から気配を感じたので空を見上げると、複数の風の精霊が飛び回っていた。


 あれは追いかけっこでもしてるのかな?風の精霊が何もない空間を捕まえると、今度は逃げるように動きはじめた。

 …これは俺の見えない精霊もいるな。故郷以来だから久しぶりに見たよ。


 そのまま見てるとまた風の精霊に気付かれそうなので、俺は広場に視線を戻して食事を再開する。



 その後は店の多い並びを歩き、王都の冒険者ギルドの建物を眺めてから宿に戻った。いやー、建物もデカかった!

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