第13話
入学試験当日。
「それでは!これより王都冒険者学校の入学試験を始める!」
こうして開始された入学試験。まずは筆記から始まった。これ読み書きや計算がどれだけできるかの確認のようなものだね。
読み書き、計算ができない人は違う場所に移動したようだ。
これは基本を覚えていれば難しくはない。続けて魔法についての筆記試験を受けた。
これは自身の魔法の使い方を説明する感じだね。俺や家族の場合はイメージによる発動になるから、形や大きさを変えられて自由度が高いと説明できるけど、他にも詠唱しての発動や、魔法名を唱えて発動するのがある。
筆記試験が終わり実技試験。
ここではグループに分かれて試験を受けるようだ。
①冒険者カード持ちで、魔物との戦闘経験がある人
②冒険者カード持ちだが、魔物との戦闘経験がない人
③冒険者カードは持ってないが、魔物との戦闘経験がある人
④冒険者カードを持っておらず、魔物との戦闘経験もない人
俺は①のグループに入るね。
グループ別にそれぞれ違う訓練場まで移動して中に入ると、観客席には多くの生徒が観戦に来ていた。
これは…戦闘経験があるグループの訓練場は観戦人数が多そうだな。兄さんと姉さんの弟が誰か確認に、というのもあるかもしれない。
…あ、先輩(予定)の2人を見つけた。けどお礼を言うのは入学してからだな。
俺は視線を戻して中央にいる試験官の男女2人を見た。これは……女性の方が圧倒的に強いな。相手の力量を測るのも試験の内容に含まれてそうだ。
「戦闘能力を測る試験として、これから君達には私か、彼女と戦ってもらう!どちらと戦うかは各自自由に決めてもらって構わない!」
「舞台にあがったら戦う前に基本の戦闘スタイルを教えて。支援職や回復職の子は前衛の人を連れてくるから。自分で戦えるというならその戦闘を見せてもらうわ」
アタッカーじゃない人もしっかり見てくれるみたいだね。
試験官2人が分かれたので、子供組も移動を開始する。女性の試験官に行く人が少し多いかな?俺もとっとと終わらせたいけど、悩むふりして少し立ち止まってから男性の方に行く。
試験はもう始まっていて、子供組が先制で開始してるね。
試験官の男性は大剣を使うようだ。盾のように受け止めたり、弾いたりして体勢を崩したら追撃、というスタイルみたいだな。
受付してる人に冒険者カードを見せるのか…持っているという証明のためだね。
並んで待っていると俺の順番になったので、受付の人に冒険者カードを見せた。
「はい、ライル君だね。冒険者カードは…持っているね。冒険者ランクはCか……C⁉︎」
受付の人が大声で言ってしまったので、それを聞いた周囲がざわついた。
想定済みだった俺はその間に槍を持ち、舞台に上がって試験官の男性の前に移動した。顔を引きつらせているね。
「…まさかの同ランクの子か。私を選んだ理由はあるかな?正直に言ってくれていいよ」
「女性の方が強いと感じたからですね。わざわざ危険な相手と戦う気はないし、近付く必要もないでしょう?」
「…そこも確認して選んだんだね」
試験官の男性はCランクのようだ。確認が終わったのか大剣を構えたので、俺は深呼吸をしてから槍を構えた。
「よし、それじゃあ始めようか」
「はい、ライルです!槍と体術を使います!」
「それでは…始め!」
俺は開始と同時に身体強化を発動して一気に近付き、間合いに入って正面から攻撃…すると見せかけ、そのスピードのまま背後に回り込む。
相手の反応が遅れたので、俺は振り向かれる前に背中に迫り、思い切り蹴りを入れた。
「な⁉︎」
「ふっ!」
「しまっ⁉︎…ぐあ⁉︎」
打撃音が響きそのまま場外まで吹き飛ぶ試験官の男性。その瞬間周囲の音が止んだ。
少し待ったが試験官の男性は動かないので、俺は硬直している審判に声をかけた。
「審判」
「…え?」
「判定は?」
「あ、はい!ライル君の実技試験は終了です!他の子が終わるまであちらで待機をお願いします!」
「はい、わかりました」
俺は審判に一礼して舞台を降り、待機場所まで移動した。試験官の男性は…交代みたいだな。俺は少し申し訳なく思い、心の中で謝罪した。
抑えるにしても、兄さんと姉さんの弟として、やることはやらなきゃね。
試験が再開すると同時に周囲は先ほど以上に騒いでいるが、俺以外にもいい動きや戦いをする子もいるので、とりあえずは落ち着いた。
俺は身体強化を維持しながら待っていると、集合の合図があったので身体強化を解除して、試験官の女性と復活した男性の前に並んだ。
「これで入学試験は終了です。クラス発表は明日のお昼過ぎになりますので、それまで皆さんは宿で待機していて下さい。では、解散!」
クラス発表という言葉に、知らなかった子がざわつくが、入学は確定したことを告げられると歓声が上がる。
ほとんどの子供達は笑顔で解散し、それぞれの宿に戻る。生徒も動き始めてたので、声をかけられる前に俺は子供達に紛れながら移動して、宿まで戻ってゆっくりした。
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