第14話
〈三人称・冒険者学校 教師視点〉
入学試験が終わり、今年の受験者の評価やクラス分けを話し合うため、教師達が集まっていた。
「今年も未成年でありながら高い実力を持った子が来てくれたな」
「中には冒険者ギルドがない小さな村から来た子もいましたよ。しかも何名かは試験官に勝利しています」
「魔物との戦闘経験がない子からも勝利した子がいますね」
「負けはしたが、粘り強く長時間戦ってた子もいたぞ!」
「ひとつの魔法を10個同時に展開させた子もいたよ」
「違う属性の魔法を同時に発動してた子もいたわね」
「支援職では強化効果の高い子がいたり、長時間付与していた子がいました!」
「体術が得意な子が試験官を翻弄してる展開もあったな」
「がっはっは!今年も将来が楽しみな子が多いみたいだな!」
「「「「「理事長!?」」」」」
教師達がそれぞれ実技試験の感想を言っていると、急に理事長が出現したので、殆どの教師が驚愕した。
「それで?その中でも特に印象の残った子はいたか?」
「…俺は回復職の子で、杖術を使いこなしていた女子だな。攻撃魔法はまだ弱いが、自身を回復しながら杖で戦って持久戦して勝ってたぞ」
「私は盾と短剣を使った男子ね。盾の扱いが上手かったわ。攻撃を盾で受け止めたり、弾いて隙を作ったら腕や腹部に短剣で攻撃してたわよ」
「僕は使い分けの上手い魔法使いの男子でした。ボール系の魔法で注意を逸らして、威力の高いアロー系やランス系を当ててましたね」
「あたしは試験官を一撃で場外まで蹴り飛ばした男子だね」
「「「一撃!?」」」
「それどこで戦ってた子⁉︎」
「仮冒険者組か⁉︎」
「ああ、あの子の動きは別格だったな」
一撃という言葉にまた驚愕する教師達。その戦闘を見ていた教師達は何度も頷いていた。
「開始と同時に身体強化して突っ込んだから正面で打ち合うと思ったんだが、間合いに入る直前か入った直後だな、その勢いのまま一気に後ろに回り込んだんだ」
「で、大剣くんは他の受験生とは違うその動きで反応に遅れてね、振り向かれる前に背中を蹴られ、そのまま場外まで飛ばされたって流れだね」
「じゃあその少年は体術特化ってこと?」
「いや、残念ながらそうだ、とは言えないんだよ、これが」
「槍を構えてたからな。だから最初突っ込んだ時は正面から打ち合うと思ったんだ」
「…武器を使わず、実力を隠されたまま勝利したんですか」
戦いの流れを聞いた教師達は驚きを隠せないでいた。試験官は冒険者ランクC以上の実力者達だ。
それを背後からとはいえ、一撃で倒した少年、ライルは相当な実力を秘めていると教師達に知れ渡った。
「…まるで3年前の双子の再来だな」
1人の教師が呟いた。
3年前の入学試験でも似た展開があり、その双子は一撃とはいかなかったが、開始10秒程度で試験官に勝利して終わらせている。
「その少年の名前は?」
「えっと…ライル君ね。辺境の町から護衛馬車で王都に来た子よ」
「…この子が噂になってるあの双子の弟じゃないか?」
「ライル君本人に確認はとれてないが、辺境の町からは今回彼1人だけだったし、ほぼ間違いないだろうね」
「双子に確認は?」
「噂があった日に確認しましたが、入学試験前から弟に面倒ごとを増やさせないと言われ、名前までは聞けませんでした」
「あー…それは双子の方が正しいな。実際その言葉のおかげで騒いでたのは静かになったんだしな」
話に出る双子とは兄カイルと姉シェリルのことだ。実力者で面倒見のいい2人は他の生徒からも慕われている有名人なので、影響力は高い。
「それで、ライル君の実力と評価は?」
「実力は冒険者ランクC以上で確定ね。あと言いそびれたけど、ライル君は既に冒険者ランクもCになってるわ」
「…おいおい、どれだけ驚かせてくるんだ…」
「冒険者としてはもう十分やっていけるレベルじゃないですか…」
衝撃的なことが多くて驚愕を通り越して呆れる教師もいた。
「それでも何か学びたい、知りたいものがあるからここに来たんだろう。それなら力になる。他の生徒と変わらんよ」
その言葉に他の教師達も頷く。どんなに実力が高くとも生徒達はまだ子供なのだ。
「さて、ライル君のことばかり話しても終わらない。彼以外にも実力のある子達がいるんだから、そちらも考えてクラス分けしていかないとね」
そしてまた受験者の評価や感想の話に花を咲かせ、時間は進んでゆく。
…教師達は明日までにクラス分けを決められるのだろうか…
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