第44話

「以上が俺の調べた鉱山関係の情報です」

「…3日でよくここまで情報を集められたわね。ありがとう、ライル君」


 翌日、朝早くから学校の食堂に集まった俺達は調べた内容と鉱山に行くまでの予定を話しているところだ。


 まず情報については俺の調べた情報を基に先輩達が調べた情報を追加・補足していく形で話を進めた。


 その追加の情報で俺が新たに知ったのはこんな感じ。


 ◯俺達以外にも遠征先が鉱山のパーティーがいる。

 盗賊の件もあるので、何かあればパーティー同士で協力するのもありかもしれない。


 ◯採掘した量にもよるが鉱石と、素材になるゴーレム系の体は重く、鉱山は王都から少し離れてる場所のため馬車の利用が認められている。

 学校で馬車と馬の貸出しをしているが、御者に馬の世話と馬車の管理ができる人がいないと貸出ししてくれない。



 聞いた中で重要なのはこの2つかな。ちなみに御者ができるのはクレア先輩とディーン先輩の2人。


 話し合った結果、俺達のパーティーは馬車を使わないことが決まった。


 理由は全員で鉱山の中に入るので、入ってる間馬の世話の問題と、素材を運べる収納袋を俺とアイリス先輩とクレア先輩の3人が持っているから、素材を馬車に乗せる必要がないというのが大きい。

 何より馬も馬車も借りるようになるから死なせたくない、壊したくないというのもある。



 盗賊については先輩達も聞いていたようで、盗賊の話になった最初に戦闘経験はあるのか聞かれたよ。

 俺はあると答え、俺以外にはアイリス先輩とクレア先輩の2人が戦ったことがあるそうだ。


 なので鉱山から出た時はクレア先輩が前、俺が後ろになり、アイリス先輩とディーン先輩、ミーア先輩を中央にして警戒することが決まった。



 それから話は進み、今日の打ち合わせが終わった後は王都から出て魔物相手の実戦と野営の練習。

 明日王都に戻って学校ギルドで素材を売った後は各自の準備のため自由行動になる。


 次の休みの2日間で出発前の最後の打ち合わせと、食料やポーション等の物資の買い出しと準備をして、休み明けに出発する予定を立てた。




「クレアはフォレストベアの攻撃を受け止めて!動きが止まったらディーン君は足、ミーアさんは顔を狙って怯ませて!怯んだらライル君は止めをお願い!」


 打ち合わせが終わり、俺達は予定通り実戦と連携を確認するために王都を出て森の深部まで行き、そこでCランク相当の魔物…ゴーレム戦を想定して一撃が重めのワイルドボアやフォレストベアと多く戦っているところだ。


 今は2回目のフォレストベア1体を相手にしている。


 全員が身体強化とアイリス先輩の支援魔法で強化済みだ。

 アイリス先輩は身体強化を習得したみたいだね。ミーア先輩は元々故郷では狩人として育ったそうで、学校で身体強化と適性があるとわかった回復魔法を習って習得したそうだ。


 アイリス先輩の指示通り、フォレストベアの爪撃をクレア先輩が盾で受け止め、ディーン先輩が足を斬って体勢を崩し、ミーア先輩が額を射抜いて怯み、倒れてきたところを止めに俺が槍で首を切り落としてこの戦闘が終わった。



「…しゅ、周囲に魔物の気配は感じません」

「ミーアさんありがとう…ふぅ、みんなお疲れ様。何戦かしたけど、このメンバーだとCランク相当の魔物相手でも危うげなく対応できたわね」

「連携やお互いのフォローもできるようにもなったのも大きいと思います」

「オークジェネラル3体の複数とも戦いましたが、ライル君とアイリス先輩が攻撃魔法で2体を足止めして、その間に僕達3人で1体ずつ倒したり、というのもありましたね」

「お疲れ様です。それじゃあ俺は今のうちにフォレストベアの血抜きだけしちゃいますね」


 先輩達が会話しつつ周囲を警戒している間に、俺は倒したフォレストベアの血抜きを行い、終わったら氷魔法で凍らせて収納袋に入れておく。


 今日は魔物相手の戦闘優先なので、倒した魔物は先に血抜きだけ済ませて解体は後回しだ。

 俺と最上級生の2人が収納袋を持っているからできることだね。だから倒した魔物で素材や食料になるものは3人で分けて入れてるよ。



 実戦で連携を試せたし、暗くなってきたので戦闘を終わらせ、森から出たら身体強化を解除して以前俺が野営した場所まで移動した。

 支援魔法は効果時間切れで既に解除されてるよ。アイリス先輩曰く、自身で解除もできるし、効果時間は使う人によってバラバラだそうだ。


 既にいくつかテントがあるから、今日は俺達以外にも野営する人がいるみたいだね。


 となると今夜は夜番が必要か。そういえば決めてなかったし、話し合うのは食事中の時か食事後にでもいいだろう。


 空いてる場所まで移動して、先に俺とディーン先輩のテント設営を見てもらい、次に女子達が設営して、作業に戸惑ってたら説明。

 設営が終わったらクレア先輩とミーア先輩で食事の準備をしてもらい、俺とディーン先輩とアイリス先輩は解体だ。



「ライル君、かなり手慣れているね」

「まぁそこはテント設営と同じく慣れですね」

「…慣れるとここまで戸惑うことなく進められるのね」


 テントから少し離れた位置まで移動して、風魔法でテント側に匂いがいかないようにしてから俺はフォレストベア、ディーン先輩はオークジェネラル、アイリス先輩はワイルドボアを解体することになった。


 他にもフォレストウルフやゴブリン等、戦って倒した魔物はいたが持ち帰えってない。数が多くなるとその分解体の時間も掛かっちゃうからね。


 それぞれ解体を進めていたのだが、2人とも手を止めて俺の解体を見てたよ。俺は解体の手を止めずにそのまま話す。


「あと解体ナイフもいいのを使ってるのはありますね。思い通りに切れなきゃ意味ないので」

「成程、解体ナイフも考えてるのね」

「へえ、それも大事なんだね」

「はい、使いやすさが全然違うので、余裕ができたら探してみるといいですよ」


 その後は解体に集中して、俺は2体のフォレストベアの解体を終わらせたら次は2人の手伝いだ、数で言ったら2人の方が多いからね。


 全ての解体が終わったら俺達と素材に生活魔法のクリーンをかけ、肉類は氷魔法で凍らせてからそれぞれの収納袋にしまった。



 テントまで戻ると、既に食事の準備はできていたみたいで、料理はもちろん食器も用意されていたよ。


 うん、2人の料理も美味しかった!夢中になって食べてたね。先輩達も美味しそうに食べてるし、夜番については食事後だな。



「さて、ひと段落ついたし、話し忘れてた夜番について決めていきましょうか」


 食事が終わり、食器を片付けてひと段落ついたところでアイリス先輩が苦笑いしながら言った。先輩達は今気付いた様子で、俺もテント設営する時まで忘れてたので苦笑いだ。


「数は2・3で分けるとして、分かれ方にいい案はある?」

「それなら、今日は男女別でいいと思います。安全にいくなら回復魔法が使える俺とミーア先輩は別々で、あとはどちらも最低1人は前衛がいるように分ければ大丈夫かと」

「成程…いいわね、それ。私は採用したいと思うけど、みんなはどう?」

「僕はそれで大丈夫です」

「わ、私も大丈夫です」

「私もそれで問題ありません…ライルも夜番について気付いてたのか?」

「俺は先程、テント設営の時に思い出したので、組み合わせは少し考えてましたよ…もしアイリス先輩が話さなかったら、俺が先輩達に聞いてましたね」


 そう答えると、クレア先輩は「そうか」と言って会話が終わった。クレア先輩も野営の最中に思い出した感じかな?



 組み合わせが決まり、俺とディーン先輩が先に夜番することになった。俺は起きてる間に槍と解体ナイフの手入れを済ませておく。


 クレア先輩が持っていた60分の砂時計を借りて、砂が落ちきったらひっくり返すのを繰り返し、4回落ちきったら交代。

 アイリス先輩と2人で行動してる時はこれを使い、交代しながら休んでたそうだ。


 少し使った魔力も回復して余裕があるから、軽く魔力操作の鍛練をしながらディーン先輩と焚き火を囲み、雑談しながら過ごす。


 3回目の砂時計をひっくり返したところで小腹が空いたので、クッキーの入った袋を取り出し、ディーン先輩にも渡して食べてもらう。

 微笑みながら美味しいと言ってもらえて安心したよ。趣味で作ってると言ったら驚かれたけどね。



 予想外だったのは同じく夜番をしてた獣人の女性冒険者がクッキーに反応したことだね。


 クッキーの匂いにつられたのか、ディーン先輩と食べてたら見てきて、堂々と少しずつ近付いてくるものだからビックリしたよ。


 クッキーの余裕はあったから、同じくらいの空の袋はないか聞いたら速攻で取りに行ってたね…すぐに袋を持ってきたので、その空の袋に新しく取り出したクッキーを移したら喜ばれたよ。渡した時、耳と尻尾がよく動いてた。


 そして仲間の女性冒険者が獣人女性冒険者を脇に抱え、俺にお礼を言って戻っていったよ。


 少しすると「貰ったクッキー美味しい!」と聞こえた時はディーン先輩と目を見合わせて苦笑いした。

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