第45話

 アイリス先輩達と夜番を交代して目が覚めた早朝、朝食を食べてからアイリス先輩とミーア先輩は1時間程の仮眠。残りの3人で片付けと出発の準備だ。


 クレア先輩は従者をしていることもあり?仮眠しなくても大丈夫と言っていたので分担して片付けをしてる。


 ちなみにアイリス先輩達と夜番を交代する時にクッキーの入った袋を渡してる。朝起きた時に美味しかったと言ってくれたよ。


 片付けが終わり、自分の荷物をまとめ、2人が仮眠から起きるのを待っていると、昨夜の獣人女性冒険者と連れてった人とは違う女性冒険者の2人が俺の所にやってきてお菓子のお礼を言われたよ。


 その女性冒険者、女剣士さん曰く食いしん坊獣人女性が久しぶりのお菓子の匂いで俺達、というかクッキーを持ってた俺に突撃したんだってさ。


 食いしん坊獣人女性が食べてなんともなかったから、女剣士さん達もお菓子を久しぶりに食べて美味しかったから、今日改めてお礼を言いに来たそうだ。


 まぁ警戒するのは当然だよね。中には食べ物に毒とか睡眠とか仕込んでる奴もいるみたいだし。


 そんな事して誘拐や殺しなんかしたら即犯罪者だ。


 俺達は基本学校の制服着て活動してるから信用を失くすし、そんな事したら退学は当然、というか子供でも牢に入れられるだろうね…


 美味しいと言ってもらえるのが嬉しくて、最近いろんな人に渡してたから、誤解されないよう注意しないといけないな…昨夜は渡す気はなかったんだけど、食いしん坊さん獣人女性がお菓子を見た時の迫力がね…



 で、本題に戻ると女剣士さんのパーティーは王都を拠点に活動してるらしいので、お菓子のお礼として、何かあれば1度だけ協力してくれるそうだ。

 流石にお菓子を渡しただけだったから最初は断ったんだけど、「なら君を見かけた時、困ってそうだったら声を掛けるわ」と女剣士さんが言って去っていった。


 去る前に2人の冒険者カードを見せてもらうと、どちらもBランク冒険者だったよ。


 …ほんとに困った時に会ったら協力のお願いをしようかな。



 その後はアイリス先輩達が起きたので、2人の準備が終わったら王都まで戻り、そのまま学校ギルドで素材を売り、その金額を5人で分けてから解散した。

 次に集まる時は主に出発前の買い出しになるだろう。



「こんにちはー!ガイウスさんいますかー?」

「…おーう!今行くから少し待ってろ!」


 時間はお昼過ぎ、1度寮に戻り、寮長さんに戻ってきた事を伝えて不要な荷物を部屋に置いてからガイウスさんの武器屋に行き、中に入って声を掛けたら返事がきた。


「待たせたな、ライルの坊主。武器に何かあったか?」

「こんにちは、ガイウスさん。いえ、近々パーティーを組んで鉱山へ行くことになったので、その前に槍と剣の確認と調整をしてもらいに来たんです」

「ほう、鉱山か。わかった、槍と剣を見せてみろ」


 俺は背負ってた槍と収納袋に入れてた剣をガイウスさんに渡し、状態を見てもらう。


「……ふむ、剣はあまり使われてないから特に問題ないが、槍は多く使われてる分少し消耗してるな。これなら2日後には渡せるぞ」

「それで大丈夫です。よろしくお願いします」

「おう、任せておけ。ところで、鉱山には何をしに行くんだ?目的は鉱石か?」

「鉱石類の採掘とアイアンゴーレムの討伐ですね。だから主に回収するのは鉄になると思います」


 そう言うと、ガイウスさんは顎に手をあて、少し考えるそぶり見せる。


「…となると、あまり奥には行かんか。つるはしは持ってるのか?」

「つるはしは持ってないので、これからですね。何か欲しい鉱石でもあるんですか?」

「ああ、鉱石というかスチールゴーレムだな。もし挑むんだったら鋼をと思ったんだが…」

「あー…スチールゴーレムは、アイアンゴーレム相手にパーティーで苦戦せず討伐できたらになるので、すみませんが約束はできませんね」

「ああ、Cランク冒険者1人前レベルになってるとはいえ、流石にまだ経験の浅い子供に無理はさせられん。ちなみに、お前さんだけだったらいけるか?」


 にやりとした表情でガイウスさんが聞いてくる。この人、わかってて聞いてきたよ!


「…まぁスチールゴーレムくらいの相手だったら攻撃魔法の遠距離で一方的に倒せるでしょうね。ただ、俺は今回鉱山にははじめて行くので、地図は買いましたが地形把握ができてないからそれ次第ってのもありますよ?」

「む?そういやはじめてだったか。なら尚更無理はさせられんな。鋼の素材は頭の方隅にでも入れといてくれ。それとつるはしは俺の方でも用意できるが、どうする?」

「鋼に関しては了解です。つるはしは武器の受取と一緒にお願いします」

「わかった、それじゃあ用意しておくぞ」

「はい、よろしくお願いします」


 そのまま槍と剣をガイウスさんに預け、先につるはしを含めた代金を支払ってからガイウスさんの武器屋を出て、寮に戻って荷物の整理をした後、その日はゆっくりした。




 それから出発までの時間はあっという間だった。


 属性魔法と無属性魔法の授業では、先生に遠征先の場所を聞かれたので鉱山と答えると、攻撃魔法の操作と制御、それと圧縮技術を中心に教わった。


 圧縮は1番最初の属性魔法の授業で、グレイシア先生が作った的にウインドランスを当てる時に使った技術だね。


 なら圧縮は既に使えるんじゃ?と思われるけど、今習ってる光と闇魔法、インパクトや魔弾は元々使ってた属性魔法と感覚が違うんだよね。


 紺の修道服先生が言うには慣れもあるけど、それが適性や得意とする魔法との違いだそうだ。


 そういった違いもあるのかと実際に使ってみて気付く感じだよ。


 重点的に習った分、かなりスムーズに使えるようになったと思う。先生達からは上達の早さに驚かれたけどね。


 回復魔法は変わらず、キュア系の練習とヒールの復習だ。安定して使えるようにならなきゃ意味ないからね。


 武器とつるはしは丁度選択授業か入ってないのもあって、予定通りの2日後に受け取ったよ。

 その際にガイウスさんから採掘のやり方を教わった。



 休みの日になってからはまず全員で集まり、収納袋を持ってる俺とアイリス先輩の2組で分かれて買い出しをした。

 食料組と道具組に分かれた感じだね。


 俺とミーア先輩は食料組で、日数としては往復で10日前後を予定しているので、食料はそれに合わせて冷やしたり凍らせて日持ちするものを相談しながら買った。あとは料理ができなかった時用の携帯食料も買っている。


 残るアイリス先輩達の道具組は怪我や魔力を回復できる各ポーション、それとつるはしとかを買っているね。


 実際に使う予定の大きいテントは学校の方で貸出しをしてるそうなので、事前にアイリス先輩が申請していて、受取り済みだ。

 今回の遠征以降、使わない可能性の方が高いから、買うのは微妙だったというのが1番の理由だね。


 それに各個人でテントが5つとなると、それなりにスペースを取るからね。この前は練習のためとはいえ、スペースに余裕があってよかったと思う。



 買い出しが終わったら全員で出発前の最終確認だね。買い忘れがないかの確認や、自身が用意するもの、それらの確認が終われば明日に備えて解散だ。


 王都に来てから初の遠征、楽しみだ!

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