第43話

 アイリス先輩から遠征先と依頼の内容を聞いた先輩達はアイアンゴーレムとスチールゴーレムの討伐に悩んでる感じだね。


 アイアンゴーレムは魔物の強さでいうとCランク相当、スチールゴーレムはアイアンゴーレムの上位互換となっており、同じCランクでも上位相当の扱いになっている。1番の理由は体の硬さで、スチールゴーレムの方が硬さが上だ。


 どちらも動きは遅く攻撃も大振りが多くて回避しやすいが、その一撃はどれも重い。

 生半可な物理攻撃は殆ど通用せず、体に受けたダメージを修復する能力を持っているが、心臓部分で弱点となる核は体と比べて脆く、攻撃魔法には弱いというのが特徴だ。


 討伐方法は核の破壊で、手段としては3つ。


 ◯核を守る体を破壊して核を露出させ、露出した核を狙って倒す方法。

 俺だと武装強化した武器での攻撃と攻撃魔法かな、身体強化した体術もいけるけど基本体勢を崩す時に使うくらいだね。


 ◯召喚士の先生との模擬戦で使ったインパクトのような攻撃で体の内部にダメージを与え、核を露出させずに破壊して倒す方法。


 ◯アイアンとスチールゴーレムは体のダメージを修復する能力を持っているが無限じゃないので、修復できなくなるまで体にダメージを与え続けると体から核が出てくるので、そこを狙って倒すという方法。

 正直この方法は時間が掛かるからオススメしない。



 アイアンとスチールゴーレムは特徴と弱点がはっきりしていて、通用する攻撃手段を持っていれば討伐しやすい魔物でもあるため、スチールでもCランク止まりという扱いになっている。


 依頼として選ばれたのなら、少なくともアイアンゴーレムは俺を含めた2.3人は問題なく戦えるレベルだと先生達は判断したんだと思う。


 あと気になったのは採掘する鉱石と討伐対象がはっきり決まってないのはなんでかな?


 …あ、依頼主は冒険者学校ここになってる。ということは、この依頼は課題のようなもので、結果次第で評価が変わるという感じか。


 んー…討伐は問題ないけど、採掘がなぁ…



「こ、鉱山で採掘とゴーレムの討伐ですか…」

「採掘はいいとして、討伐が厄介ですね…」

「そうなのよ…攻撃手段が限られてくるからゴーレム戦での戦い方も考えないといけないわね…」

「アイリス様、まずは私達の誰がゴーレムと戦えるか確認しましょう」

「スチールゴーレムくらいの硬さなら問題ないけど、採掘はやったことないんですよね…」

「「「「え?」」」」

「…え?」


 俺の呟きに4人が反応して俺を見てきた。


「ライル君はスチールゴーレムとの戦いは大丈夫なの?」

「近接戦、遠距離戦どちらもいけますよ?故郷ではその上位種になる魔鉱石でできた体のゴーレムと戦って倒してますので」

「成程ね…僕はゴーレムとの戦闘経験は殆どないのと、アイアンゴーレムでも体にダメージを与えるのは厳しいです」

「わ、私もディーン君と同じです」


 上級生の2人は自己紹介の時、冒険者ランクがCになったばかりと言ってたからね。物理攻撃になる双剣と弓矢だと、無傷の体には殆どダメージを与えられないだろう。


「それなら現状はアイリス様と私、ライルの3人が戦える手段を持っているということだな」

「余裕があればアイリス先輩の支援魔法を使ってディーン先輩とミーア先輩も戦えるか試すのもありかもしれませんね」

「それもいいわね。アイアンゴーレムで私の支援魔法で戦闘を試して、それでも厳しそうなら2人は採掘を優先してもらう、ということでいいかしら?」

「「はい、わかりました」」


 そんな感じで話は進み、鉱山という場所や戦闘の有無も考え、斥候は俺がやることになり、採掘場所と魔物が近い場合は相手の構成によるが、上級生の2人には採掘を優先してもらうことが決まった。



 こうして話していくうちにお昼の時間になったので、食堂で一緒にお昼を済ませた後は各自で鉱山や道中の情報を調べることになった。

 その際俺は今回はじめて鉱山へ行くことになるので、基本情報から調べますと伝え、3日後の学校が休みの日に調べた内容と予定を話し合うことを決めてから解散した。



 俺はそのまま王都の冒険者ギルドに行き、資料室にいたギルド職員さんに聞きつつ、鉱山とそれまでの道のりや出現する魔物を調べ、必要な情報を書き写していく。


 夕方近くまで調べて分かった情報はこんな感じ。



 ①ここ王都から鉱山までの道のりは草原が多く、整えられた道があり、鉱山付近は森になっている。

 徒歩だと約3〜4日、馬車だと約2〜3日の距離になる。


 ②道中で主に見る魔物はスライム系にゴブリン系にラビット系(兎)、ホース系(馬)にバード系(鳥)で、王都から離れるほど強い魔物が出るそうだ。

 鉱山付近の森になるとオーク系にウルフ系やボア系、アント系(蟻)が出てくるとのこと。

 魔物の強さは基本Cランク以下となっている。


 ③鉱山内部にいる主な魔物は今回の討伐目標であるゴーレム系、バット系(蝙蝠)、アント系にスライム系がいて、奥へ行くほど強い魔物になり、最深部の方はそれらの上位種となるBランク以上の魔物もいるそうだ。

 討伐目標のアイアンゴーレムは入り口からある程度進んだ辺りから、スチールゴーレムは中部辺りから出てくると教えてくれた。


 ④ ③に伴い、鉱石類も奥へ行くほど純度が高く珍しい鉱石が採掘できるようになっているそうだ。

 入り口付近だと主に銅と鉄。中部辺りになると銀や魔鉱石。最深部の方だと数は少ないが金やミスリル、もしくはその鉱石の体になっているゴーレムがいるそうだ。


 ⑤鉱山の推薦冒険者ランクはD以上からになっていて、奥へ行くほど高くなっていき、中部辺りだとCランク以上、最深部は最低でもBランク以上となっている。


 ⑥注意事項として、鉱山内部では広範囲に影響を及ぼす魔法や攻撃は注意が必要で、下手すると崩落なんてこともあるそうだ。

(実際に広範囲魔法を使ったことでその一部周辺が崩落して、脱出まで数日掛かり、多くの冒険者が重軽傷を負ったという事例が載っていた)



 そんな所だね。こうして調べた情報は話し合った時に被ってもいい。より確実性が増すし、それが基本、もしくは重要な情報だったりするからね。


 ある程度調べられた俺は色々対応してくれたギルド職員さんにお礼を言い、そのまま冒険者ギルドを出て学校の寮へと戻った。




 それから2日後、昼過ぎからは選択授業がなく空いた時間なので学校ギルドに行き、いつもの気さくな受付嬢さんから鉱山について話を聞いてる。


 鉱山は採掘やゴーレム系を討伐すれば鉱石を集められ、依頼や装備目的以外にも稼げる場所でもあるらしく、王都から少し離れているが人気が高いらしい。


 ゴーレム系や他の魔物と戦える冒険者は入り口付近の鉱石は採掘せず、Dランク冒険者や先に進めず戻ってきた冒険者のために残しているそうだ。


 けど採掘者が多いと鉱石なんてすぐ無くなるんじゃ?と思ったが、鉱山には鉱石を生み出している存在が住んでいて、しかも国が公認しているという話には驚いた。


 その正体と名前は本人?の希望で公開はしていないとのこと。匿名の国の協力者ってことだね。


 昔は廃鉱だったが、その存在が住むようになってから鉱石が復活して、また採掘できるようになったのだとか。


 だから冒険者ギルドの資料や、依頼等で鉱山へはじめて行く人には周知と注意をしていて、鉱山の入り口にも注意喚起の看板を立てているそうだ。



 次に聞いておきたかったのはの有無だ。


 気さくな受付嬢さんの情報では鉱山周辺での件数は少ないが、と言った。


 鉱山から出た帰り際の森で、人数が少ない時や、DランクやCランクなりたての冒険者を狙い、金品や採掘した鉱石を奪われ、最悪殺されるそうだ。


 盗賊との戦闘経験がない、もしくは少なそうな弱い相手を狙ってるみたいだな…先輩達も聞いてるかもしれないけど、明日の打ち合わせで伝えておかないと…


「情報ありがとうございました。パーティーメンバーにも伝えて鉱山から出た後も周囲を警戒するようにします」

「そうするといいわ…ちなみにライル君は盗賊との戦闘経験はあるの?」


 気さくな受付嬢さんが心配そうに俺を見てくるので、そこはしっかり伝えておく。


「既に故郷で戦ってますよ。躊躇いませんし、もし襲ってきたら撃退しますので大丈夫です」

「…そう。それならライル君と組むパーティーメンバーも心強いわね」


 一応納得してくれたみたい。濁した言葉で撃退と言ったけど、多分察してるだろうな。


「あ、あと有料でもいいので鉱山内部の地図ってありますか?」

「…そういえばライル君ははじめて行くんだったわね。只今お持ちしますので、少々お待ちください」


 鉱山内部の地図を購入した後はお礼を言ってから受付を離れ、学校ギルドの資料室で地図と資料を確認してその日は終わった。


 ちなみに学校ギルドの資料は王都のギルドと比べると、調べられた情報は変わらなかったけど、一部学生向けにわかりやすく載っていたよ。

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