第48話

 昼食も兼ねた休憩後、探索を再開した俺達は更に奥へと進み、地図上では5ヶ所目の採掘場所に続く分岐地点、入口と中部の間辺りの場所まで移動した。


 ここも3ヶ所目と同じように採掘場所へと続く道が2つあり、その片方から ズシン ズシン と重量のある音が響いてきた。


 おそらくゴーレム系だと思うので、俺が先行して確認に行くと、少し曲がった道の先で討伐目標のアイアンゴーレムを発見した。


 アイアンゴーレムの状態を確認した後、俺は来た道を戻り、先輩達に発見したアイアンゴーレムの情報を伝えた。


「予想通りいました、討伐目標のアイアンゴーレムです。高さは俺の約1.5倍の小柄、確認できた範囲では特に傷も無かったです。ゆっくりとこっちに移動していたので、このまま待っていてもここに来る可能性が高いです」

「ありがとう、ライル君。さて、一応確認するけど、この広場と通路、どっちで戦う?」


 アイリス先輩が俺にお礼を言い、次に俺達を見ながら戦う場所の確認をしてきた。


「アイリス様、安全にいくならこの広場の方がいいかと、通路でも幅に余裕はありますが、壁際に追い込まれると最悪攻撃が回避できない可能性があります」

「俺もクレア先輩と同意見です。攻撃魔法で一方的に攻撃するなら通路でもいい、というくらいですね」


 クレア先輩と俺がアイリス先輩の確認に答える。


 身体強化とアイリス先輩の支援魔法の強化で軽減されるとはいえ、今の能力的に考えると俺とクレア先輩以外がまともに攻撃をくらえば1撃でも重傷になる可能性が高い。


 だからゴーレム戦では、基本俺かクレア先輩が前衛になってゴーレムの注意を引く必要がある。


 アイリス先輩は頷き、上級生2人に事前に決めたゴーレム戦での立ち回りを改めて伝える。


「ええ、2人の言う通り広場の方がいいわね。打ち合わせ通り、ディーン君とミーアさんはアイアンゴーレムの正面には立たず、クレアかライル君に注目してる時に横か背後から攻撃して。特にディーン君は無理しないで、1撃でも攻撃を入れたらすぐに離れること、いい?」

「「は、はい!」」


 上級生2人は緊張しながらも返事をした。今の2人にとっては本来なら自身の攻撃が通じない相手、緊張して当然だ。


「いい返事ね。アイアンゴーレムがここからでも見えてきたし、それじゃあみんな、戦闘準備!」

「「「「はい!」」」」



 俺は荷物とつるはしを収納袋に入れ、クレア先輩の横に並び、槍を構えて身体強化と武装強化を発動する。


 クレア先輩も身体強化と武装強化を発動したみたいだ。


 アイリス先輩は身体強化と支援魔法で自身と全員を強化。


 ディーン先輩とミーア先輩は身体強化を発動、それと2人にはアイリス先輩の支援魔法で武器に土属性が付与されたみたい。2人の武器に薄い黄色が纏って見える。

 これならアイアンゴーレム相手にもダメージが入るようになるだろう。ただし武装強化のように武器自体が強化された訳じゃないから、武器の耐久力には注意してと2人に言っていたよ。


 準備している間にアイアンゴーレムも俺達を発見して、移動速度を少し上げながら俺達に、そして広場まで近付いてきた。


「ライル」

「クレア先輩、なんですか?」


 槍を構えて待機していると、クレア先輩から声が掛かった。俺はアイアンゴーレムを見ながら返事をする。


「今回は私が主にアイアンゴーレムの注意を引く。ライルは最初サポートだが、もしもの時のアタッカーと上級生のフォローを頼む」

「わかりました、けどまずは…」

「みんな!アイアンゴーレムが広場に入ってきたわよ!クレアとライル君で広場の中央まで誘導して!ディーン君とミーアさんは誘い込むまで待機!」

「「はい!」」

「はい!…これがありますね」

「はい!…そうだな、まずは広場の中央に誘い込むぞ!」

「了解です!」


 俺とクレア先輩はアイアンゴーレムへと2人で駆け出す。


 こうして俺達はアイアンゴーレムとの最初の戦闘を開始した。



 アイアンゴーレムは俺とクレア先輩が接近してきたのに気付くと、左腕を上げてきた。早速思い切り振り下ろすつもりかな?


 アイアンゴーレムの攻撃範囲内へと入ると、予想通り左腕を振り下ろしてきた!


 攻撃動作に気付いてた俺とクレア先輩は左右に分かれて攻撃を回避しつつ、斜め後ろに回り込む。

 アイアンゴーレムの左腕はそのまま地面に振り下ろされて少し前屈みになった。


「うーん…いきなり縦の大振りとか、隙だらけだなぁ」

「時間が省けて丁度いいだろう。このまま中央付近まで飛ばすか?」

「そしたら俺が地面を凍らせて滑るようにしましょうか?」

「その方法か、なら私が転倒させる!」

「それじゃあ俺が半ば強制的に移動させますね!」


 そう言うと同時に早速行動に移し、クレア先輩はそのまま背後まで移動して後ろから盾を構えながら突進。


「ふっ!」


 クレア先輩がアイアンゴーレムにぶつかり、アイアンゴーレムが前から倒れる直前に俺が氷魔法で地面を広場の中央辺りまで緩い下り坂の直線で凍らせ、倒れたアイアンゴーレムを後ろから槍の石突側で押し出すように突き、中央付近までそれなりの速度で滑っていく。


 アイアンゴーレムと並んで中央付近まで戻った俺とクレア先輩は武器を構え直し、アイアンゴーレムが止まったのを確認してから氷魔法を解除して起き上がれるようにする。


 ディーン先輩とミーアさんは目を丸くして驚いていて、アイリス先輩は少し呆れた表情で俺とクレア先輩を見てる。


「…2人とも」

「いや、今回はしょうがないですよ。相手が最初から回避余裕で隙だらけの攻撃だったし、それに誘導に時間を掛けてもこの後の探索に影響するだけでしょう?」

「…それもそうね。ディーン君、ミーアさん!アイアンゴーレムが起き上がるわよ!これからが本番!警戒しつつ、いつでも動けるようにして!」

「「は、はい!」」


 アイリス先輩に言われて上級生の2人も武器を構え直す。


 ちょっと最初はすんなりいきすぎちゃったけど、アイリス先輩の言った通りこれからが本番、まずはディーン先輩とミーアの攻撃が通用するか確認しないとね!

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