第26話
「おぉー、王都の教会は大きいな…近くの建物より綺麗だし、なんか神聖な感じがする…」
学校ギルドで依頼を受けた俺は、依頼主のシスターがいる教会に来ていた。
教会へ向かう途中、診療所らしき建物には怪我をした人が並んでたね。まだ朝になって少ししか経ってないんだけどな…
教会の入口に着くと修道服を着た女性が立っていて、近付いた俺を見ると驚いた顔をした。
「おはようございます。俺は学校側の冒険者ギルドから依頼を受けたライルといいます。あなたが依頼主の方で合っていますか?」
「お、おはようございます。そうです。私が今回依頼を出したのですが…思っていた以上に来られるのが早かったので驚いてしまいました」
驚きながらもシスターさんは依頼主だと教えてくれた。
「そこは運よくタイミングがよかったと思ってもらえれば。念の為確認なのですが、俺は今回この依頼をはじめて受けるのと、あと回復魔法はヒールしか使えませんが、大丈夫ですか?」
「はい、ヒールが使えるなら大丈夫です。作業の流れについては、実際に見てもらいながら説明をしますので、ついてきてもらえますか?」
「わかりました、よろしくお願いします」
シスターさんについていき、先程見た診療所まで移動すると、そこで作業を見ながら説明を受けた。
まず診療所の医師が診察して対応、診察の結果に応じて案内する部屋を変えていて、ヒールで治せる怪我ならシスターが待機している部屋に案内して、ヒールをかけて治療、という流れだ。
で、この診療所では重傷者の診察優先、軽傷者は順番で診るから横入りはするな、だから順番を守るようにと強く言っているそうだ。
実際説明中に腕を大怪我した人が運ばれてきた時は軽傷者の人達が道をあけ、重傷者を先に入れた場面を見たよ。
説明が終わると、早速対応する部屋に案内された。
案内された部屋には俺より年上の若いシスターさんが1人いて、俺の補佐として動くそうだ。
若いシスターさんはまだ回復魔法が使えないらしく、実際使っている場面も見ながら学んでいるんだって。
それなら早速人が来る前に容器と柔らかいキレイな布を用意してもらうよう指示を出した。
若いシスターさんは不思議そうな顔をしながらも動いてくれてる時に最初の患者が入ってきた。
「おや?ここは手伝いの人が治療してくれるのかのう?」
最初に入ってきたのはおじいさんで、足を怪我したのか片足を引きずっていたので、案内の人に代わり手を貸して椅子に座らせる。
「はい、そうですよ。足のどこを怪我したんですか?」
「ありがとう、この位置じゃ」
「はい、ここですね。最初ちょっと傷が沁みるけど我慢して下さいねー」
生活魔法のクリーンと飲み水生成で傷口を洗い流し、ヒールを唱えて治し、最後に柔らかい布で軽く拭く。
生成した水は用意してもらった容器に入れる。それを見た若いシスターさんは目を丸くしていたよ。
「おぉ、手際がいいのう。痛みもなくなったわい」
「いえいえ、気を付けてお帰り下さいね」
「あぁ、ありがとう」
おじいさんは元気な足取りで帰っていった。そのまま入れ替わるように入ってきたのは中年の男性で、怪我をした腕を押さえながら入ってきた。
「なんだ、シスターの嬢ちゃんじゃねえのか…」
「はい、残念ながらここは坊主が対応してる部屋ですね」
「ぶふっ、笑わすんじゃねぇよ!悪いが早速頼むぜ」
「ぷっ、ふふふっ」
「わかりました。この椅子に座って下さい」
「くくく…おう」
俺の返しに男性と若いシスターさんが笑う。男性を座らせると先程のおじいさんと同じやり方で腕を治療する。
「…随分手際がいいな…治す前に傷口を水で流したのは意味があるのか?」
「汚れとか治療に邪魔なのものを洗い流してキレイにするためですね。例えば、小さな石とか木材の破片とか、そんなのが傷口に付いたまま治療されたらどう思います?」
「ん?石や木材の破片が腕に…うわぁ…」
男性が想像したのか、痛そうな顔をする。
「想像できましたか?傷の部分に入ってたら、下手するとそれが原因で痛みが残ったり、病気になるというのを聞いたから治す前に洗い流してるんです」
「…確かにそれはイヤだわ。お前さんや前に治療してくれた人が先に水で流した理由がよく分かった。ありがとな!」
「いえいえ、気を付けてお帰り下さい」
男性は治った腕で手を振りながら帰っていった。次に少しして入ってきたのは肩を怪我した若い女性だった。
俺を見ると不安そうな顔をして部屋の入り口で止まる。
「だっ、男性が対応するんですか…?」
「この部屋に案内されたならそうですが…あー、もしかして男が苦手だったりします?」
俺が聞くと凄い勢いで何度も頷く女性。
「んー…ならこの離れた位置で治療しましょうか。肩の怪我をこちらに見せて立っていて下さい。シスターさんは布を持ってあの人の隣にいて、ヒールをかけたら肩を拭いてあげて下さい」
「…へ?あ、はい…」
「わ、分かりました!」
女性が怪我をしてる肩を見せてくれたので、俺は離れた位置で同じ治療をおこない、最後は若いシスターさんに女性の肩を拭いてもらって終了だ。
「わ、凄い…治ってる…あ、ありがとうございました!」
「いえいえ、気を付けてお帰り下さいね」
女性は入り口でぺこぺこしながら帰っていった。
そんな感じで相手によって対応を変えながら怪我の治療していき、お昼を少し過ぎたあたりで休憩の時間になった。
休憩場所は若いシスターさんの案内で、教会の食堂みたいなところで昼食をとることになった。
俺と若いシスターさん以外にも、診療所の別の部屋で治療していたシスターさん達や、診察後に部屋を案内をしていた人達、王都側のギルドで依頼を受けた回復職の女性が休憩している。
「え⁉︎それライル君が作ったの⁉︎」
「そうですよ。元々は外の依頼を受ける予定だったので、事前に作ってたんですよ」
「あぁ、なるほどですね」
「あ、このお肉美味しいです!」
「ちょっと!なに勝手に食べてるの⁉︎」
「あー…その肉ならまだあるので大丈夫ですよ…皆さんも食べます?」
「「「いいの⁉︎」」」
「それじゃあ、はい、どうぞ」
「お言葉に甘えて…あ!ホントに美味しい!」
「私も…あ、濃すぎず薄すぎず、美味しくて食べやすいですね」
昼食を食べてる時に作っておいた肉料理にシスターさん達が興味を持ったみたいなので、残りをあげることにした。うん、凄い食いつきだったよ。
そんな感じで昼食休憩を過ごし、それから夕方頃まで診療所で治療をおこない、今回の依頼が終わった。
学校ギルドに戻って報告をすませると少し報酬が増えてたよ。やったね!
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