第25話
「おはよう。入学して7日を過ぎたところだけど、寮での生活は慣れてきたかい?それと授業の流れはつかめてきたかなー?」
次の日の朝、グレイシア先生が俺達の顔を見ながらこんなことを聞いてきた。
頷く人、苦笑いする人、ドヤ顔する人、疲れた感じの人、反応は様々だ。
「うんうん、当然だけどバラバラだよね。まだ7日だよ。始まったばかりだし、焦る必要もない。ごく一部がやらかしたり、驚くことをやってのけた子がいた程度、気にすることもないよー」
「…そこで俺を見る必要あります?」
グレイシア先生が驚くことをやってのけた、の辺りで俺を見ながら言うものだから、ジト目でそう返す。
目を丸くしたり、笑ってたり、呆れた顔だったりと様々な表情で俺を見てくるクラスメイト。
「まだ7日だけど、ライル君は話題になることをやってのけた子だからねー♪既に冒険者として活動している子達からはかなり注目されてるよ」
「俺に影響がないなら話題や注目されるのは構いませんけど、相手の行動次第では容赦しませんよ?」
「そこはもちろん、相手が邪魔してきたり迷惑をかけてくるなら容赦なくやってほしい。そこはみんなも同じだよ」
俺とグレイシア先生の言葉に驚くクラスメイト。
「校則は確認してると思うけど。冒険者学校は身分関係なく様々な人が通える場所だ。自分だけの都合や我儘で高圧的な態度や行動、特に理由もなく権力なんて使ってしまえばあっという間に学校だけじゃなく、冒険者ギルドからも信用は失うし、最悪退学だ」
退学という言葉に唖然とするクラスメイト。ん?ちょっと待てよ…?
「そうなると、俺けっこう我儘言ってません?勧誘が嫌だから大会に参加しないとか」
「ん?ライル君の場合は既に卒業後の予定か目的が明確に決まってて、それに基づいて行動してるからいいんだ。
大会は自分の名前を覚えてもらうアピール目的だったり、腕試し目的が大半だから、参加したい子達にやらせればいい。だから気にしなくていいよ」
笑顔で言ってくれるグレイシア先生。それを聞いて少し安心したよ…
「勧誘されたくない子は大会とか特に気を付けた方がいいよ。新入生の中では、ここ1組が実力者として既に見られてるからね。
逆に有名になりたいという子はアピールのチャンスだ。活躍次第では様々なところから見られ、評価されるからね」
けど、最初に話したように君達は入学したばかりだから、焦る必要はないからね。という締めでグレイシア先生の話は終わった。
それからの5日間はこれといったこともなかった。
せいぜい属性魔法の授業で光魔法と闇魔法の下級系を覚えて使えるようになったらグレイシア先生と撃ち合うことになって負けたり、
無属性魔法の授業ではインパクトを使えるようになったから男性の先生と身体強化とインパクトのみで模擬戦することになって負けたり、
回復魔法の授業では練習してたおかげか、他の人にも失敗することなくヒールを使えるようになって合格もらったり、
空いた時間に王都内の依頼を受けたり、学校が休みの前日にオークの巣を壊滅させた時の報酬を受け取ったくらいだ。
そんな感じで5日間が過ぎ、今日は学校が休みなので朝から学校ギルドの依頼を確認してると、少し気になった依頼を見つけた。
「急ぎ回復魔法のヒールが使える人限定で手伝いの募集?教会のシスターから?」
「あら?少し前にきたその急ぎの依頼が気になった?」
「はい、ヒールが使える人限定という部分を見て……あれ?ネリネさん?おはようございます」
「おはよう、ライル君」
声をかけられたので振り返ると、王都側のギルドにいるはずの受付嬢、ネリネさんがいた。
「今日はどうしたんですか?普段なら王都のギルドにいるはずなのに」
「こちらを担当してる受付嬢に急遽欠員が出ちゃってね、だから今日は私が受付のフォローに来たの」
「あ、なるほど」
そういうことなら納得だ。ネリネさん、お疲れ様です。
「それで話を戻すけど、この依頼が気になったということは、ライル君は回復魔法が使えるの?」
「ヒールだけですけどね。授業で習って2日前に合格もらって、他の人にも使えると認められましたよ」
「…回復魔法は習得が難しい魔法じゃなかったかしら…?けど合格をもらって認められているライル君なら大丈夫そうね。この依頼については受付で話しましょうか」
「はい、お願いします」
ネリネさんから話を聞いたけど、簡潔に言えば回復役に欠員が出たから応援に行く。ネリネさんと似た状況になるってことだね。
王都は言うまでもないが人が多い。特に人通りの多いところは移動やら仕事やらで怪我をする人も出てくるそうだ。
教会では近くの診療所と協力して、安い金額で怪我をした人の治療をしていて、一般人を中心に毎日それなりに人が来るらしい。
で、今日その治療を受け持つシスターに欠員が出てしまったので、冒険者ギルドでヒールが使えて、フォローができる人を探している、という感じだね。
俺はこの依頼を受けることにした。ヒールは使えるようになったばかりだから、練習したいと思っていたからだ。
ネリネさん曰く、この依頼は不定期だがそれなりにくるそうで、回復魔法の練習目的で受ける人もいるんだってさ。
だから時間があって、回復魔法の練習がしたいなら受けた方がいいと言われたよ。
こうして依頼を受けた俺は一度寮に戻り、必要ない荷物を置いてから王都の教会へ向かった。
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