第21話

 次の日、朝は生活魔法の授業があったんだけど、最初の授業で合格をもらって習得、十分使えるレベルになったと認められたんだよね。

 それで今日、授業を始める前に使えるのを見せたら、今日を含めてこれ以降は参加しなくていいと言われた。俺の他にもいたよ。


 認められたのは嬉しいんだけど、急遽お昼後の選択授業まで時間が空いてしまったよ…


 鍛練や練習、依頼もダメだな。お昼後は精霊の選択授業だからね!

 それまではゆっくりすると決め、王都を散策することにした。



 散策して少し時間が経ち、途中で買った食材やポーション類を収納袋に入れた俺は噴水広場のベンチで休憩していた。


 噴水を見てる時に空に気配を感じ、ふと見上げると風の精霊がいた。今回も複数いて俺が見えない精霊と遊んでるみたいだね。


 …ん?少し離れたところに他より強い気配の風の精霊がいるな…遊んでる精霊達を見守ってるのか?

 あ、その風の精霊がこっち見た。


 目が合った風の精霊は目をパチクリさせ、左右を見てまた俺を見る。どうやら自分を見てると気付いたようだ。


 その風の精霊は目を輝かせ、興味深そうに俺の前まで近付いてきた。大きさは俺の手よりちょっと大きく、見た目は大人の若い女性という感じかな。


『あなた、わたしのことが見えるのね!人族なのに珍し〜♪』


 なんだ⁉︎この頭に響く感じ⁉︎この風の精霊からか⁉︎


『あ、念話ははじめて?それなら…ねえ、風属性の魔力は作れない?』


 あ、それなら大丈夫です。身体に軽く風属性の魔力を巡らせ、風属性の魔力の球も作って渡す。


『ありがと〜。魔力の球も作ってくれたおかげで合わせやすくなったわ!頭の中で話すようにしてみて』

 頭の中で…『こんな感じ?聞こえてる…というか届いてる?』

『おお⁉︎もうできたのね!大丈夫よ、届いてるわ!』

『あ、よかった。風の精霊はこんな会話手段があるんだね。はじめまして、俺はライル。よろしくね』

『わたしはフリージアよ。ライル君、よろしくね!』


 こうして王都ではじめて風の精霊の知り合いができた。



 フリージアさんには俺が風の精霊しか見えないこと、辺境の町から来たこと、今は冒険者学校に通っていることを話した。


 フリージアさんはここ王都を中心に、フリージアさんと同じくらいの精霊達と協力して小さな精霊達を見守っているんだって。


 だから俺が風の精霊しか見えないのを伝えると残念そうな顔をしてた。わたしの友達や知り合いに紹介したかったのに〜!と言ってたよ。


 話してたらいい時間になってきたので、お昼過ぎに授業があるからここを離れることを伝えるとついていくと言ってきた。え、いいの?




 昼食後、俺は学校に戻り精霊の授業をする教室に移動している。フリージアさんは俺の左肩に座ってるよ。


 …ん?授業する教室の前にエルフの男性と女性がいるんだけど…この2人が先生?


「…本当に精霊の授業を受けにくる人族の子がいると思うか?」

「いや、実際に希望者の子がいたから私達が来たんでしょ?かなり久しぶりなのは確かだけどさ…ん?」

「あ、こんにちは。おふたりが精霊の授業を担当してる方ですか?」

「あ、はいこんにちは。私達がそうですけど、もしかして君が精霊の授業を受けにきた子?」

「はい、そうです。今日はよろしくお願いします」

「あ、これはどうも…本当に来たな」


 そう言って教室の前でお辞儀をする3人。とりあえず教室に入ってみると…まだ誰もいないな。なら今回は教卓の目の前にするか。


「時間になった。これから精霊の授業を始める」

「…もしかして俺1人だけなんですか?」

「そうなの。だからほんとに来るか気になっててね、教室の前で待ってたのよ」


 あぁ…それは確かに気になるだろうな。


「あ、それならわたしは姿を見せておくわね。この2人は知り合いだし」

「「フ、フリージア様⁉︎」」


 フリージアさんが指を鳴らすと、エルフの2人がフリージアさんを見て驚く。え?様づけ?姿消してたの?


「え?フリージアさん姿消してたの?存在感薄いくらいで俺普通に見えてたんだけど…」

「うそ⁉︎ライル君ずっと見えてたの⁉︎」

「「精霊がみえるの(か)⁉︎」」


 俺の発言と精霊が見えることに3人が驚く。このままだと授業が始まらないな…


「…フリージアさんの知り合いだというので、まずエルフの先生おふたりを信じて伝えますが、確かに俺は精霊が見えます。けど、見えるのは風の精霊だけなんです」

「っ…そうか、すまない。人族で精霊が見える者は久しぶりで驚いてしまった。知り合いの冒険者にはいるが、王都で精霊が見える知り合いは数人程度だったからな…」

「私もごめんなさい。会話のできる精霊と普通に話せるみたいだし、気を付けてると思うけど、精霊絡みの面倒ごとには十分気を付けてね。何かあれば私達も協力するから」

「わたしも驚いたわ。ライル君て風の精霊と相性が凄くいいのね!あ、さっき遮音の結界を張ったから、叫んでも大丈夫よ!」



 うん、この2人の先生は信用してよさそうだ。というか王都でも精霊見える人属そんなに少ないの⁉︎これはしっかり精霊について話を聞いておかないとね。

 それとフリージアさんナイス!

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