第20話

「はーい、これから回復魔法の授業を始めます」


 次の日の朝、俺は選択した回復魔法の授業を受けている。先生はおっとりした感じの女性だね。


 最初は回復魔法が既に使える人、使えない人を分かれさせ、それぞれ別の教室で進めるみたい。


「最初に言いますが、回復魔法は適性によって習得難易度が変わる難しい魔法です。相性が悪くて覚えられなかった子もいましたし、覚えられるタイミングや速度も違います。それを理解してこの授業を受けるようにして下さいね」


 あー、やっぱり回復魔法は習得できない可能性もあるのか。使えるようになるのだって人によってバラバラだし、こればかりはじっくり何度も試すしかないな。


 最初に教わった回復魔法はヒールで、怪我や傷を治せる魔法だね。

 指先とかを軽く切ってそれを治せたら使える証明、スタートラインになるんだけど、この最初が難しくて発動しない。


 俺は最初30回くらい唱えても発動しなかったのだが、回復魔法で治してもらった時の感覚を思い出して、それから10回ほど唱えた時にようやく発動したよ。


 先生は驚きながらも聞いてきて、以前回復魔法で治してもらった時の感覚を思い出して唱えてたら使えたことを伝えると、納得したように頷いた。


 その感覚や治したいという気持ちも大事らしく、それを他の人にも使って治せるようになれば習得、あとは発動失敗しなくなるまでひたすら練習だそうだ。


 でもまずは自分の傷で失敗しないレベルまでならないと不安なので、傷をつけては回復を繰り返した。その際には傷を2つに増やして治したり、傷を大きくして治したりした。


 最初の授業が終わるまでにヒールを発動できたのは俺を含めて3人だった。先生が言うには3人でも多いらしく、0人だったこともあったそうだ。


 …これは回復魔法の練習も入れて数を重ねないとダメだな。次の選択授業まで時間があるし、1度寮に戻って感覚を忘れないよう練習しておこう。




 それから昼食後、無属性魔法の授業があるので訓練場まで移動した。


「よし、集まったな。これから無属性魔法の授業を始めるぞ!」


 そう言ったのは男性の先生、女性の先生もいて、どちらも近接職なのか腕や脚が引き締まっている。


「まずは無属性魔法が既に使える子と使えない子で分けるよ。確認したいことがあるから、使える子は私の近くに集まってほしい」


 女性の先生がそう言ったので、俺はそちらに移動する…なんか男性の先生が悔しそうな顔してるんだけど…まぁいいや。



「うん、集まったね。それじゃあまずはどの無属性魔法が使えるかの確認なのだけど…」


 確認が始まり、身体強化が約9割、インパクトと呼ばれる魔法で約3割の人が手を上げた。10割以上になってるのはどちらも使える人だね。


「なるほど、2割ほどが両方使える子だね。どちらも当てはまらない子は?…いないね。それじゃあ他の無属性魔法が使える子はいる?」

「は、はい」

「はい」


 俺ともう1人の男子が手を上げた。


「お、2人いるね。先にあなたから聞いてもいいかな?」

「は、はい!ぼ、僕はインパクトと魔弾が使えます!」

「魔弾かぁ!威力は他の魔法より低いけれど、使い勝手がよくて応用もきく無属性魔法の1つだね。次にあなたは?」

「はい、俺は身体強化と武装強化が使えます」

「武装強化かぁ!武装強化は身体強化の武器版だと思ってくれればいいよ。それを使うと武器の種類にもよるけど、威力、強度、切れ味が上がるから、武器を使う子は将来覚えておきたい無属性魔法だね」


 さすが先生というべきか、使える無属性魔法を言うとスラスラとどんな魔法かわかりやすく説明してくれる。俺はインパクトと魔弾を覚えていくのがこの授業の目標になりそうだ。


「この学校では身体強化が無属性魔法の基本としてるんだ。だからこの授業を選んだ子には前衛後衛問わず覚えてもらうようにしてるんだよ。なのでまだ身体強化が使えない子は彼の方に移動してほしい」


 身体強化が使えない人があちらに移動する。地域によって基本としてるのは違ってくるみたいだね。


「それじゃあ、既に身体強化を使えるあなた達が次に覚えてもらうのはインパクトだね。これも既に使える子がいるけど、復習だと思って聞いてほしい」



 インパクトという無属性魔法は衝撃を飛ばす魔法で、属性魔法が使えない人がよく利用する近〜中距離の攻撃魔法とのこと。


 敵を吹き飛ばしたり、体勢を崩したり、うまく使えば身体の内部にもダメージを与えられるらしい。


 属性魔法が使えるならその属性を付与して発動させることも可能で、追加効果や更にダメージを与えられることもできるそうだ。


 たしかに属性魔法があるならあまり使わないかもしれないなぁ…俺は風魔法があるから少し似てるのもあるね。

 でも離れた相手への攻撃手段が増えるし、身体の内部にダメージっていうのがいいね!内部に核があるスライムやゴーレム、大型の魔物には予想外のダメージを与えられそうだ。



 そして説明後、訓練が始まった。


 まずは近距離で的に触れず発動して当てられるようになること。安定して発動できるようになったら段々距離を離し、中距離でも当てられるようにするのが目標になった。



 既に使える人は開始から離れた位置でインパクトを発動している。

 はじめて使う人は発動に悪戦苦闘してるが、俺は風魔法で吹き飛ばすイメージができていたからか、3発目で発動した。


 これには俺も周囲もビックリしてたね。


 何度も試していくうちにイメージができてきたので、的に当てながら徐々に離れ、正面以外にも上下左右とあらゆる方向から的に当てていく。


 あ、交代の時間になってしまった…離れてる間にもう少しイメージを固めておこっと。


 再度俺の番になった。待ち時間の間にほぼイメージが固まったので、唱えずにインパクトを放てるか試す…成功、続けて何度も放つ…成功、移動しながら…成功、正面以外のあらゆる方向から…成功。


 そろそろ交代の時間だと思ったので、最後に風属性を付与して…成功!威力と速度も上がってるね!ウインドインパクトとでも呼んでおこうか。


 お、交代の時間になった。

 そして、今的当てしてる人達が終わると今日の無属性魔法の授業は終わった。



 夕食まで時間があるので、訓練場で的当てをしてる場所まで移動し、引き続きインパクトの練習をおこなってから寮に戻った。

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