第19話

 属性魔法の適性確認のため、俺を含めたグレイシア先生のグループは教室から訓練場まで移動した。


「それじゃあ、ここで適性の確認と、既に魔法が使える子は適性の確認の後、どれだけ使えるのか見せてもらうよ。この球体は魔法の適性を確かめることができてね、これに触れて魔力を流せば適性のある魔法に応じた色に光るん…どうしたんだい?」

「いや、グレイシア先生の魔法のレベルに俺も含めて驚いてたんですよ?」


 そう言ってグレイシア先生は透明な球体を取り出すのと同時に地面が盛り上がる…これ土魔法か⁉︎

 あっという間にできた台に、取り出した球体を置いて俺達生徒を見ると、不思議そうな顔をしていた。


 入学試験の時にも思ったけど、凄くレベルが高いよこの先生!ほとんどの生徒は唖然としちゃってんじゃん!

 俺の言葉に同意するように何度も頷く生徒達。


「その中でもライル君は平然としてるねー。それなら最初はライル君にお願いしようかな?」

「…わかりました」


 指名を受けたので台の前に移動して、深呼吸してから球体に触れて魔力を流した。


 球体は即座に変化し、透明から黄緑、水色、紫の大きくとても強い光が球体の中に広がり、そこに白、黄色、黒の順の大きさで小さな光が見えた。


 俺はその球体の中の光景に目を奪われ、じっと眺めていた。


「…これは早速いいものを見せてもらったよ。黄緑の風を中心に水色の氷と紫の雷が並んでたね。ライル君はこの3属性の適性がとても高いみたいだねー」


 グレイシア先生の言葉にハッとした俺は球体から手を離すとグレイシア先生を見た。球体は元の透明に戻っている。


「それと小さな光も見えただろう?白は回復、黄色は光、黒は闇の適性になる。他の属性は0か、かなり低い適性になるから、この6種の魔法を鍛えた方がいいと言っておくよ」

「それならこの授業では光と闇を中心に習って全体的に鍛えます。回復は使えるようになったらいいなと思ってたので、選択してた回復魔法の授業で習いますよ」

「うん、回復はそれがいいだろうねー。適性の高い3つは既に使えるってことでいいのかな?」

「はい、使えますよ」


 俺の返答にグレイシア先生は満足そうに頷いた。回復魔法は習得したいと思ってた魔法だからいいとして、光と闇の魔法適性があるとは思わなかったな…


「よし、それじゃあ続けて他の子も適性を見ていこうか」


 生徒の魔法適性の確認が再開される。

 離れた位置で様子を見ていたけど、球体の光り方が毎回違うから見てて飽きなかったよ。


 1色だけだが強く光ってたり、2色3色と光ってたり、光は小さかったけどその光の数が多かったりと、どれも綺麗だった!



 確認が終わった後は魔法が既に使える生徒の実力確認だ。グレイシア先生が土魔法で的を作ったので、それを壊す気で当てるようにとのこと。


 それからは様々な魔法が飛び交ったね。ただ、かなり強度が高いのかビクともせず、中にはランス系で貫こうとしたり、規模の大きい魔法を使った人もいて、数人だけど的を破壊した人もいたよ。


 で、もう少しで俺の番になるんだけど、どうするかな…少なくともグレイシア先生にはある程度実力がバレてるみたいだし……うん、ここは真剣にやるか!


 兄さんと姉さんから抑えすぎはよくないと言われたし、何より鍛えられる機会を無駄に過ごしたくないからね!



 そう決めたと同時に俺の番になった。やる前にグレイシア先生に確認しておこう。


「グレイシア先生、使える属性魔法は全部見せた方がいいですか?」

「いや、ひとつだけでもいいよ。ライル君のように隠しておきたいって子も中にはいるからねー」

「分かりました」


 …よし、なら風魔法だけでいこう。

 ウインドランスをただ放つだけでも、魔力を込めるだけでもダメ。圧縮したウインドランスに回転も加え、貫通力を上げて放つ!


 頭上に作り出したウインドランスは俺が使う槍とほぼ同じ大きさで、その大きさを維持したまま魔力を一気に込める。


 そのウインドランスを見た生徒の反応は小さいとか軽口や笑い声が多く、ヤバさを理解した一部の生徒は青褪めていた。


 ウインドランスを放つと同時に回転させ、威力と貫通力を上げながら的に当たったその瞬間、今までと違う音が訓練場に響く_


 ギャリギャリギャリギャリギャリ!!


 その音に驚く生徒達、グレイシア先生は的を見ながら笑う。


「ちょっ⁉︎グレイシア先生!的の強度上がってません⁉︎」

「はっはっはっ!ライル君が最後だったし、真剣にやるみたいだったからね!少しサービスしておいたよ♪」


 何やってんのこの人⁉︎

 そんなやりとりをしてたら音が止んだので、ウインドランスを止めて手元に戻す。うわっ、余裕もって込めた魔力あとちょっとしか残ってないじゃん!


 魔法の槍を消して的を見ると中央に穴が空き、破壊というよりは貫いて貫通した状態になっていた。


「的を破壊した子も凄かったし、工夫して的を貫くやり方も凄かったね。使い方や工夫次第でも変化するから魔法は楽しいんだ♪私達教師側もこれからしっかり教えていくけど、ここにいる間は君達も色々試してみるといい!」



 こうしてグレイシア先生の言葉で最初の属性魔法の授業が終わり、そのまま解散になったので、俺は寮に戻ってゆっくりしたのだった。

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