第30話

〈ライル視点〉


 虎さんとの模擬戦を終えた次の日の朝、1組の教室に入って挨拶すると、中にいたクラスメイトが一斉に俺を見てきた。


「…ん?どうしたの?みんなで俺を見て」

「多分昨日の召喚獣との模擬戦を見たか、聞いたからだと思うよ」

「昨日の?…あ、虎さんとの模擬戦か。あれは楽しかったよー、最後ボロボロになって負けたけどね」

「楽しかったで済ませられるものなの⁉︎」

「最後速すぎて全然見えなかったんだけど!」

「休みの訓練場では有名な召喚獣だって聞いたけど…見てみたかったなー」

「あの強さなら試験官を一撃というのも納得です…」

「接近戦も魔法も凄かった…どれだけ戦い慣れてるんだ…?」


 そんな感じでクラスメイトが感想を言っていると、グレイシア先生が入ってきた。


「おはよう。話が盛り上がってたねー♪もしかして昨日の模擬戦のことかい?」

「おはようございますー。グレイシア先生も見てたんですかー?」

「そうだよー。召喚獣が召喚されたと聞いてね、どんな物好きが選ばれたのか見に行ったら、ライル君だったんだよね」


 物好きて…まぁ確かにあの虎さん格上だし、積極的に挑みたいという生徒は少ないかもね。


 ガッカリされたらそれ以降頼まれても模擬戦しないだろうなぁ…強くなったら声を掛けてくれるかもしれないけど。




 朝の選択授業は無属性魔法の授業だ。昨日の模擬戦が話題になっているのか、ここでも生徒達からなんか見られてるんだよね。


 俺は変わらずインパクトの練習。模擬戦で使ってみたけど、正直精度は微妙だったし、覚えたばかりでまだまだ練習不足だ、もっとコントロールできるようにならないとね!



 昼食後は生活魔法の授業だったけど、前回合格をもらったので授業を受ける必要がなくなってる。


 ということで、早速ガイウスさんの武器屋に行こうか。折れた槍と貰った槍を念の為見てもらう予定だ。


 向かっている途中、風の精霊は見たけどフリージアさんは見なかったな…他の上位精霊が見守ってたのかもしれないけど。



「こんにちはー!ガイウスさんいますかー?」

「…おーう!今行くから少し待ってろー!」


 ガイウスさんの武器屋に着き、中に入って声を掛けると返事がきた。また武器を眺めて待ってよっと。


「待たせたな…って、ライルの坊主じゃねえか。思ってたより早かったな。武器に何かあったか?」

「こんにちは、ガイウスさん。はい、昨日格上の召喚獣と模擬戦をしまして…」

「格上の召喚獣?はっはっはっ!そりゃまた珍しい相手とやったもんだな!で、結果はどうだったんだ?」

「ボロボロにやられましたよ…その時に武装強化も使ってやり合ったので、念の為見てほしいんです」

「武装強化も使えるのか、なるほどな…よし、見せてみろ」


 俺は貰った槍と、折れた槍を収納袋から取り出し、台の上に置くと、ガイウスさんがそれぞれの槍を確認し始めた。


「俺が渡した槍は……僅かに歪んでるな。この程度なら問題ないが、ライルの坊主が持ってた槍なんて折れてんじゃねえか」

「それだけ相手が強かったんですよ…それで相談なんですけど、折れた槍を素材にして剣に作り変えることはできませんか?」

「剣か……ふむ、1番使いやすい剣の刃渡りは?」

「それなら…この長さですね」


 ガイウスさんが使いやすい剣の長さを聞いてきたので、俺は氷魔法で剣を作ってガイウスさんに渡すと、氷の剣を色々測り始めた。


「ほお、また見事なもんだな…片刃で刃渡りはこの長さ、重さも同じがいいか?」

「もう少し重くなってもいいですね。鍛錬や実戦を続けていけば筋力も上がっていくと両親から言われてるので」

「分かった。と、言いたいが刃の部分は素材が足りん。鉱石、もしくは魔物の牙や爪は持ってるか?」

「はい、鉱石なら折れた槍と同じ素材の鉱石が」


 次に素材の有無を聞かれたので、故郷で手に入れた鉱石を収納袋から取り出してガイウスさんに渡す。


「ほう…いい純度の魔鉱石だな。これなら槍は2日後、剣は5日後には渡せるぞ。金額は素材の持ち込み分を引くと、剣の製作と槍の修繕の合計でこの金額になる」

「分かりました、それでよろしくお願いします!それと代金は今渡しますね」


 ガイウスさんに代金を渡し、5日後に両方受け取る予定だと伝えてから武器屋を出た。

 夕方までまだ時間もあるし、今日はゆっくりでいいな。夕食とクッキーの材料買って散歩するか。



『あ!ライル君はっけーーん!』


 買い物をしていると、聞き覚えのある声が空から聞こえたと思ったら、頭にぽふっと軽い衝撃。

 声が頭に響く感じ、念話か!


『あ、フリージアさん、こんにちは』

『こんにちは、ライル君!』


 フリージアさんだ。俺を見つけてまっすぐ来てくれたみたいなので、お礼に?風属性の魔力の球を作って俺の頭の上にいるフリージアさんに渡す。


『ありがと〜♪あ、この風の魔力ってまだ作れる?他の風の精霊達にも渡したいのよ』

『大丈夫ですよ。何個作ればいいですか?』

『10個なんだけど、大丈夫?』

『その程度なら…はい、どうぞ』

『ありがと〜♪今渡してくるから、ちょっと待っててね!』


 移動の邪魔にならない所まで移動して、追加で作った風属性の魔力の球10個をフリージアさんに渡すと、フリージアさんが自分の魔力で包んで頭から飛び立つと共に空に持っていった。


 …フリージアさん簡単にやってたけど、譲渡したとはいえ他人の魔力を自分の魔力で包んで運ぶってかなり難しいはずなんだけど…精霊は凄いなぁ。



 少しの間待っていると、フリージアさんが戻ってきた。俺の左肩に座ってきたのを確認してから移動を再開する。


『おまたせ!それとありがと〜♪風の精霊達も喜んでたわ♪』

『それならよかったです。それでどうしたんです?わざわざ俺の所までやってきて』

『あ、そうそう、少し前に風の精霊を見てたでしょ?その様子を見てた他の上位精霊がわたしに話してくれてね、少し探してライル君を見付けたら何を買ってたのか気になっちゃって!』

『なるほど、風の精霊を見た時近くに上位精霊がいたんですね。それと買い物してたのは食材ですよ。帰ったら夕食とお菓子作る予定なんです』

『へぇ〜、夕食とお菓子…お菓子⁉︎』


 お菓子にもの凄く反応したフリージアさんが前のめりになって肩から落ちた。

 いや何してるのこの人!すぐにまた飛んで肩に座ったけどさ…


『…フリージアさん、というか精霊って俺達人族のご飯食べれるんですか?』

『それは精霊によってバラバラね。基本わたし達精霊は食事を必要としないけど、わたしは人族の料理も食べられるわよ!』

『へぇ、新事実。それじゃあ動物の姿に近いと肉やら草とかを食べれたりするんですか?』

『そういった食事もできる精霊もいるわね。それで、ライル君にお願いがあるんだけど〜?』


 フリージアさんが身を乗り出して笑顔で俺の視界に入ってきた…まぁ察しはついてるし、試したいこともできたからね。


『…次会った時でよければ作ったお菓子を渡しますよ』

『ほんと⁉︎じゃあそれでお願いね!お菓子を持ってきてくれたら、わたしからそのお礼をあげるわ!』


 そう言ってフリージアさんは帰っていった。どんなお菓子かは次会ってからの楽しみにするんだと。



 買い物の続きを済ませて寮に戻り、夕食を作って食べた後にいつものクッキーと、試したいことを取り入れたクッキーを作り、別々の袋に入れて収納袋にしまってから寝た。

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