第7話

 夕方にはまだ少し早い時間、散策に満足した俺は冒険者ギルドへ戻ると、馬車が増えてることに気付き、御者さんが他の御者さんらしき2人と話しているのを見かけた。


 どうやら予定通り合流できたみたいだね。


 冒険者ギルドに入り中を少し見渡すと、男剣士さんや見覚えのある他の護衛の人達を見つけたので、戻ってきたことを報告しに近付いた。


「ん?おう、思ってたよりも早かったな」

「はい、さすがに全部は見れないので、満足したところで戻ってきましたよ」

「まぁ、そりゃそうだ」


 俺に気付いた男剣士さんが手を上げ挨拶してくれた。


「まだ戻ってない子供がいるから、ここで少し待つことになるぞ」

「あ、それなら訓練場で身体を動かす予定だったので大丈夫です」

「そこは考えてたか、何をするつもりなんだ?」

「移動中あまりできなかった走り込みですね。時間があればそのままいつもの自己鍛練です」

「…わかった。そしたら訓練場はあっちだな。入口にいる職員に冒険者カードを見せれば無料で利用できる。子供が揃ったら声をかけるから、それまではやってていいぞ」


 男剣士さんにお礼を言って、訓練場の入り口まで行き職員さんに冒険者カードを見せて入る。



 訓練場にはそこそこ人がいた。

 素振りをしている人や的に魔法を当てている人など様々だ。

 ここの訓練所は走り込み用のコースがあると職員さんに聞いたので、そこで周回する。俺は軽く準備運動をしてから走り込みを開始した。


 最初は身体強化なしで、荷物と槍を背負ったまま走り、徐々に速度を上げていき、15分ほど思い切り走ったら速度を緩めつつ槍を構え、また徐々に速度を上げていき、15分ほど思い切り走る。


 そのまま走るのはやめず、槍を背負ったら次は身体強化ありで。


 かなり速度が上がるので、他の人とぶつからないよう注意しながら走り、その速度を維持したまま槍を構えて走る。

 修行中はこの繰り返しで体力の限界か魔力切れするまで続けてたんだけど、男剣士さんから声がかかったので徐々に速度を緩めて終了。


 とりあえず思い切り走れたので満足だ!身体強化中、追い抜いて驚かせた方はごめんなさい!



 そうして男剣士さんと戻ると、帰ってきた子供達に加えて、護衛の人達とはじめて見る人達がいた。合流したメンバーだそうだ。

 女斥候さんとか一部の護衛は出掛けた子供から気付かれない距離で離れて見守ってたよ。お疲れ様です!


 その後、宿まで行き全員集まると、明日の昼前に出発するという話があり、夕食を食べて解散となった。

 俺は自分の泊まる部屋で魔力操作の鍛練をした後お風呂に入って寝た。久々のお風呂は気持ちよかったよ!




 15日目の朝、朝食の後は出発するまで時間が空き、キッチンを借りられたのでクッキーを多めに作っておいた。宿の人には使わせてもらったお礼にクッキーお裾分けしたよ。


 そして出発する前、冒険者ギルド前まで行くと、俺に案内図をくれた受付嬢さんや副ギルド長が見送りに来てくれた。

 受付嬢さんにあれから問い合わせがきたのか聞いたところ、何件か問い合わせがあったそうだ。しかし、俺の伝言を伝えると諦めてくれたらしい。


 俺は対応してくれた受付嬢さんに改めてお礼を言い、ついでにクッキーの感想を聞くと好評だったみたいなので、同じものを渡したら喜ばれた。


 こうして3台になった馬車は街を出発した。



 その後の旅も順調で、20日目には1台、23日目にもう1台馬車が増えて、計5台となった。これで馬車は全部だそうだ。

 人数がかなり増えたので、町の宿に泊まる時は複数の宿を予約して対応していたよ。

 あ、これまで泊まった宿は冒険者学校と冒険者ギルドが協力して予約してたんだって。改めて思うけど、育成のために力を入れてるよね。



 合流した子供達の中では、既に冒険者になっている子もいた。

 Dランク以下の子達だね。戦闘経験のある子は野宿の日や休憩中に手合わせしてたり、戦えない子も観戦して集まってることが増えた。


 自分も戦えるから、魔物が来たら戦いたいってワガママ言ってる子もいたよ…その子は怪我して同じ馬車に乗ってる護衛の人に叱られたらしい。


 …俺?俺は参加しないよ。自己鍛練してる時に手合わせしないか声をかけられたけど断った。文句は言われたけどね。



 俺としては集団での長旅なんてなかなか体験できないことだから、今のうちに学べることは学んでおきたいんだよね。

 そう思った日はいつもと動きを変えてみたんだけど、同じ馬車の子達がそれに気付いてどうしたのか聞いてきたんだよね。

 その夜に話をしたら、次の日から6人は積極的に護衛の人達の作業を見るようになったり、手伝えることはないか聞くようになった。


 元々準備や動きがよかった俺達の馬車の子供は、更に動きがよくなったそうで、他の護衛の人達が驚いてたよ。


 子供達の変化に気付いた女魔法使いさんが俺に聞いてきたので、同じ内容を話すと、君が動くと子供達にいい影響を与えてくれるわね。と言って微笑んでいた。



 魔物はオークやゴブリンが出てきたけど、数体だけだったから護衛が瞬殺。オーク肉は美味しい食材になるので、数日は肉の量が多かったよ。



 そして30日目の午後、ついに俺達は王都に到着したのだった。

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