第4話

〈三人称・護衛4人視点〉


「…あの子は寝たみたい」

「わかった。確認ありがとう」

「いやぁ、護衛初日からなかなか濃い1日だったわね」

「あぁ、今年は初日からすげぇ子がいたもんだ」


 ライルが寝た後の夜、護衛4人は明日の打ち合わせと、ライルについての感想を話すため集まっていた。


「それじゃ明日も今日と変わらず、午前と午後に分かれて警戒場所を交代でいいかな?」

「「「問題なし」」」


 3人の言葉に男戦士は頷き、次はライルについての話題になった。


「馬車での魔力操作には驚いたわ。魔力で作った球じゃなくて、それより難易度の高い魔法の球だったんだもの。しかも魔法だと気付かれにくくしてるし、その分制御や維持が難しくなるのにあの子は長時間平然とやってたのよ?あれは魔法のレベルも相当高いわね」


 女魔法使いの言葉に男戦士と男剣士は目を丸くした。


「魔法もそこまで使えるのかよ……槍は正直想像以上だった。握手した時の手もガッチリしてたし、相当修練を積んでると思ったな。今回はお互い様子見だったが、身体強化ありでやってたら激しい打ち合いになってたかもな」


 男剣士の言葉に3人は納得したような顔をして、男戦士が付け足すようにこう言った。


「しっかり能力差も把握できてたよ。身体強化なしだと力負けすると分かってたから、攻撃を受け止めるんじゃなく、受け流すか回避で対応してたのも凄いね。実力はもうCランクの上位に入るかもしれない」


 その言葉に女魔法使いが目を丸くし、男剣士は同じ感想なのか頷いている。


「…それにとてもいい子。何かあれば聞きにくるし、少しでも離れる時は声かけしてくれる。よく周りを見て行動してくれてるから私達も助かる。基本子供達は何かあるとバラバラに動いちゃうことが多いから」


 女斥候は休憩中とか楽できるのも多分今だけ。と呟き、3人は共感したのか何度も頷いていた。


「まだ初日だけど、僕達のクランとしては彼のような逸材は勧誘して卒業後の候補として考えてもらいたいところ。なんだけど…」

「…絶対断られる」

「…でしょうね。おそらくあの辺境の町でも活躍して小さな頃から勧誘が多かったと思うわよ」

「あー、だから基本目立ちたくないって言ってたのか」


 この護衛依頼は王都の冒険者学校からの依頼で、Bランク以上の実力と信頼の高いクランやパーティーが選ばれる。

 その特権として勧誘が許可されており、護衛した子達の中でも将来有望そうな子がいれば、この護衛中に声を掛けて覚えてもらい、繋がりを残して卒業後の選択肢に入れてもらう。という考えだ。


「あの子の勧誘についてはまだ早い、ということで保留で。話をする前に他のクランメンバーと合流したら伝えるようにしようか」

「賛成。警戒されて嫌な空気にはしたくないし、もっと仲良くなれたらクランの加入とか考えてるのかを聞いてみましょ」

「俺も賛成。まだ初日だし、急ぐこともないだろ」

「…私も賛成。野営の時はまたあの子の作ったご飯食べたい」


 女斥候の言葉に笑い合い、それぞれ昼食の感想を言った後解散し、初日の夜は明けていくのだった。

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