第5話

〈ライル視点〉


 2日目以降も順調に進んでいった。


 基本は1日目と変わらず、何事もなく進んでいき、4日目には俺と同じ入学希望の子が2人加わり、6日目に1人、そして9日目に3人加わり、計7人まで増えて、これで全員だと御者さんは教えてくれた。


 この馬車は俺のような、王都からかなり遠い地域にいる子供を連れていく役割のようだね。



 子供の年齢は俺より低い子もいて、10歳と11歳の子もいたよ。簡単に自己紹介すると、既に仮冒険者なのは俺だけで、他の子は戦えないか、村や町では狩をしてて、魔物との戦闘経験があるという子もいたよ。


 手合わせに関しては2日目と3日目、4日目は朝にできたが、それ以降は残念ながらできずにいた。護衛依頼の邪魔をする訳にはいかないからね。


 2日目は女斥候さんと模擬戦をした。

 女斥候さんは双剣使いで、俺の周囲を駆け回り攻撃をしてくる速さと手数の多い戦い方だった。他にも投げナイフを使い動きを止めてきたりしたので、女斥候さんは多彩な攻撃と素早い動きで味方のフォローをしたり、不意打ちや奇襲をするスタイルかもしれない。


 結果は時間切れで終了。最初からほぼ防戦一方だったけど、慣れてきた終盤で動きを変え、反撃が成功して攻めている時に時間切れになった。

 女斥候さんは、防御を崩しきれなかった…と肩を落としながら呟いてた。俺の攻撃はほとんど回避されてたけどね!



 3日目は男戦士さんと模擬戦をした。

 男戦士さんは盾を主体に剣を使ったタンク役だと思われる。実際攻撃を盾で受け止め、動きが止まった所を攻撃してくるし、甘い攻撃は弾かれるし、盾を使った突進をしてきたりと体勢を崩されそうにもなった。


 結果は同じく時間切れ。10分間基本は俺の攻撃主体だったが、男戦士さんの防御を崩しきることはできなかった。終盤に盾の側面下を横から槍で強く打ち付け、無理矢理盾をずらして攻撃した場面は意表をつくことに成功した。

 男戦士さんは微笑みながら、まさか盾をずらしてくるとは思わなかった、君の攻撃には驚かされたよ。と言っていたが、しっかり対応してたじゃん!



 4日目の朝は女魔法使いさんとは模擬戦を変更して的当てをした。

 模擬戦で周囲に影響を与えるのはマズいという話になったので、俺はお互い魔法で的になる球を作り、攻撃手段は威力の低いボール系やアロー系のみで、先に的の球を当てた方の勝ち。というのを提案して採用された。


 俺は風、女魔法使いさんは水属性の球を頭上に作り、お互い立ち位置と的は固定というルールで、まず相殺や防御方法などの見本を見せてから始めた。


 結果は1勝1敗の引き分けて時間切れ。初戦は試しながら、慣れてくると徐々に手数が増え、攻防が激しくなってきたところで俺のウインドボールが的に当たり1勝。

 2戦目はルールを理解したのか、最初から手数の多い激しい攻防が続き、最後は女魔法使いさんのウォーターアローが俺の的を貫き1敗となって終了した。

 女魔法使いさんは呆れたような顔をして、君の魔法制御の高さに納得したわ。と言っていたが、俺からすればすぐに対応していった女魔法使いさんの方が凄いから!というか魔法で作った球だってバレてる⁉︎



 ちなみにこの的当てを見ていた御者さんと男戦士さんはハラハラしながら見ていたそうだ。それを男剣士さんと女斥候さんから聞いた俺は野営をした日でよかったと思ったよ。


 まぁ的当ては野外だったから提案したんだけどね。



 俺以外の子供が増えてからは、俺は自己鍛練で済ませ、野営の時は料理を手伝ったり、戦えない子の近くにいたり、暇な時はお菓子や魔力操作で注意を引いたり、護衛4人の誰かに伝えて気を付けてもらうようにした。


 そんな感じで動いていたからか、俺達子供組はすぐに仲良くなって、基本は俺か、狩のできる子の近くにいるようになり、大人組の指示を聞いてまとまって行動するようになった。


 女斥候さんからは、君が動いてくれたおかげで、早い段階から私達は護衛や警戒に専念しやすくなった。とお礼を言われた。

 男戦士さんと女魔法使いさんはちょっと複雑な顔をしてたらしい…本来は俺も護衛対象の子供だからね。



 10日目には御者さんの言っていた通り、1台の馬車と合流した。

 合流した馬車の子供と護衛には獣人もいたね。殆どの子供は少し疲れた表情をしてたな。

 俺達の馬車は特に問題なし。気を紛らせたり、気にかけてた分、早めに変化に気付いて対応してたのもあってまだ元気だ。


 それから共に移動してると、護衛の人達は知り合いなのか休憩中によく話してたり、子供達の様子の違いに気付いた向こうの護衛が俺達を観察してたこともあった。


 途中でボア、猪の魔物が10体の集団で来たが2分程度で全滅。それを見た子供達は興奮してたし、ボアの肉は美味しくいただきました。


 あ、護衛の人は途中変わったりしてないよ。一緒に行動してた分あの4人の方が信用できるからね。



 その後は問題なく進み14日目のお昼前、予定より半日ほど早く街に着いたそうだ。

 ここの冒険者ギルドで中間報告と、1台の馬車と合流するのだが、こちらが早かった分まだ到着していないとのこと。


 そんな訳で少し急だが、合流するまでこの街で待機することになった。街の外には出ないのを条件に、今日は夕方まで自由行動の許可が出た。それを聞いた子供達は凄く喜んでたよ。


 さて、俺も楽しみなこの自由時間、はじめて来た街だし、どう動こうかな?

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