第60話 浮遊大陸バルバロッサと亡国の王子の運命の出会いです
街を後にしたホルミズドはしばらく各地を放浪していた。身に付けているもので売れるものを売り、どうにか路銀を作る。徒歩での移動は困難だったため、
ミルドランドの支配地を避け、各地を転々とする。路銀がなくなると働いて金を稼ぐようになった。
そんな時である。ミルドランドに反旗を翻す対抗勢力が現れたという噂を耳にした。
それは浮遊大陸バルバロッサを根城とし、移動要塞として戦線を自在に変える空賊団なのだという。
空賊ということに失望は隠せなかったが、しかし、ほかに当てがあるわけでもない。その空賊団の様子を探ることにした。ホルミズドはようやく目的を得たのである。
再び、ミルドランドの勢力圏に近づいていた。西方の旅装を得ていたホルミズドはハシ族ではなく、西方人の振りをして驢馬とともに入り込んだ。しかし、それも杞憂だった。訪れた町はすでに浮遊大陸バルバロッサの支配下にあった。
空賊に支配された町だというのに、町の雰囲気は明るかった。話を聞いてみると、オロチという空賊船長が演説を行い、人々の意識を変えていったという。人間社会において自意識を持ち、国家に盲目に従うことの無知さを教えていったとか。それにより、町の人々はミルドランドに反抗することを覚え、浮遊大陸に移住していったものもいるという。
ホルミズドはそのことに胡散臭いものを感じつつも、オロチという男の感化力、扇動の能力の有能さを思い知った。自分の求める力を持っているのかもしれない。
以後、ホルミズドはバルバロッサの足跡を追い、驢馬に乗り旅を続けていく。
いくつかの町を越え、ホルミズドはバルバロッサにとうとう追いついた。だが、それは折しもミルドランド軍との戦闘中であった。
これは好機だ。バルバロッサの戦力を知るチャンスである。
ホルミズドは戦いに巻き込まれないよう、物陰に隠れながら様子を窺う。
バルバロッサには大量の飛空艇がまとわりつくように群がっているが、バルバロッサは砲撃により、その数を着実に減らしていく。だが、飛空艇の中には浮遊大陸に軟着陸したものもあり、浮遊大陸で白兵戦が起きているようだ。
それも近くで観察したい。そう考えたホルミズドは意を決して戦場に踏み込んだ。墜落した飛空艇の中でまだ動かせそうなものを探すと、気絶していた兵士を振り落として浮遊大陸に向かった。ホルミズドが打ち落とされなかったのは偶然であろうか、あるいは運命だったのか。
推進力を失い、墜落した場所では空賊と兵士の戦闘が行われていた。
ホルミズドの飛空艇の落下により場は混乱し、無勢の空賊はその機に乗じて、多勢のミルドランド兵士を斬り捨てていく。だが、やはりミルドランド兵士は数が多い。空賊のひとりの背後から襲い掛からんとする。
咄嗟の行動だった。ホルミズドは飛空艇の破片を手にして、兵士めがけて投げつける。兵士はその破片を打ち落とすが、その隙を空賊は見逃さない。一瞬にして、兵士の首を打ち落とした。
「あんた、ミルドランドの兵士じゃないようだな」
空賊は落ち着いた物腰の男だった。
「もしかして、俺たちに加勢するために駆けつけてくれたのか?
俺はオロチ。あんたは?」
なんと空賊はバルバロッサの船長として名高い男だった。
ホルミズドも反射的に名乗ろうとする。しかし、空賊に本名を言うことは憚られた。
「わ、私はロバーツ……です」
驢馬の名前が出ていた。
○○〇:ロバーツって驢馬との駄洒落なのかよ
◆◆◆:ロバーツはオロチと合流したね
□□□:バルバロッサもすでに大勢力になってるのか
●●●:もう戦争始まってるじゃん
◇◇◇:こんろは!
「はい、始まりましたね、戦争やってますねー。
うーん、これ勝てる戦いなのかな。ロバーツくん、王族に戻ってるわけじゃないし、悪い予感するよね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます