第31話 乱世が近づいてるみたいです
ムラカミが当主になって数年が経っていた。ウワジマでたった一人で空賊を退治した少年の噂が広がったこともあったが、すでに昔の話になっている。
ウワジマはムラカミ空軍の拠点であるイヨの内側にある。イヨはムラカミ空軍がその武力で持って実効支配し、朝廷もムラカミ空軍を制圧する軍を派遣する余力がなかったため、実質的にその支配は黙認されていた。だが、ウワジマは独立の気風が強く、空賊も多発するため、勢力下にはおかず、朝廷から派遣され県令が統治に苦労し続けている。
その県令として新たに派遣されてきた男の名がスミトモだった。
空賊退治で名を馳せた少年の成長した姿である。
御所の守護軍で揉まれてきたスミトモはたちまち辣腕を発揮し、ウワジマの治安は格段に良くなった。しかし、イヨでは依然としてウワジマから来る空賊に悩まされ、それはスミトモが就任する前と比べても増加の一途を辿っている。
ムラカミは空賊の増加にはスミトモが関与していると理解していた。彼もまた自分と同じく乱世に備えるものなのだろう。
いずれ雌雄を決する時が来ることを予感し、ウワジマには自分たちの戦力が過少に伝わるよう工作しつつ、ウワジマの戦力を見極めるよう
そんな警戒を強くしている折、御所より使者が現れる。御所を守護する将軍、キビツヒコからのものだった。
その書状によれば、近々都に反乱が起きたという噂を流し、それによって反乱を企てているものを炙りだすという。そして、その際に、ウワジマの県令、スミトモが暴発する可能性が高く、その場合は軍勢を差し向けるようにという指令であった。
ムラカミは戦いの準備を急がせた。しかし、ウワジマとの戦いにはキビツヒコの監視があるだろうことを予測し、ヨシマサと戦った時と同様に改造型の兵器に武装をとどめ、奥の手は温存する。
この頃には、弟のブキチも成長し、ジャガイモ頭の副将、キジマに師事して軍務を学び始めていた。スミトモとの戦いが初陣ということになる。
果たして、都の噂がウワジマに伝わると、スミトモは軍勢を率いて挙兵した。イヨや隣国であるアキの軍事拠点を電撃的に襲撃し、それぞれの県を次々に支配下に置いていく。そのスピードは脅威であった。
スミトモが転戦しているうちにその拠点を落としたい。だが、水波にウワジマの軍事拠点を探させたが、思いのほか警戒が厳しく、替え玉の拠点しか見つけられない。
ならば、とムカラミは思案する。スミトモが庶民の出身であることを利用するのだ。民衆もろともウワジマを攻撃すれば、スミトモは怒り狂って戻ってくるに違いない。
その策は功を奏し、スミトモの軍勢は攻め口からとって返して、ムラカミ空軍と対峙する。
その戦力はムラカミ空軍を過小評価していたため、ムラカミにとっては楽に勝てる戦いのはずだった。
○○〇:反乱の噂、キビツヒコが流してたんだな 情報戦はなから負けてんじゃん
◆◆◆:スミトモは脳筋
□□□:拠点隠しは巧妙にやってるみたいだけど
●●●:キビツヒコの知将ぶりがやばい
◇◇◇:スミトモの戦いの後、ムラカミも別のとこから攻撃受けてたよな
「スミトモさんの時の話をムラカミさんの視点で見るとこうなんだねー。
たしかに、キビツヒコさんが裏で動いてたんだ。スミトモさんは乗せられちゃってたんだね。
ムラカミさんたちはこのあと謎の攻撃を受けるんだっけ? なんか不穏だよね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます