第13話 ホールドします!

 イェスタフと彼の背に乗ったいろはとウォルフは、ようやくIテトラミノへと辿り着きつつあった。彼の後ろには、いつのまにか大勢の大鷹たちがついてきていた。


「そのブロックを斜め上に押し上げてほしいんです。

 そこがホールドの位置なんです」


 いろはが身振り手振りでイェスタフとウォルフに指示を出す。

 それを受けてイェスタフが「ピィィー!」と甲高い鳴き声を上げる。


 鳴き声に呼応して大鷹たちはブロックのもとに飛びついていく。

 あるものは爪でブロックをがっちりと掴み、持ち上げようと大きく羽ばたく。

 あるものは全速力でブロックに激突し、位置を変えようとする。そして、落下しかけながらも、どうにか揚力を取り戻し、再びブロックに向かっていく。


○○〇:やべーな

◆◆◆:一回ホールドするだけで、こんな壮絶なのか

□□□:これでテトリスになる?


「いやいや、ほんとだよね。どうにかホールドの位置まで行けたみたいだけど、それでも何十羽の大鷹さんたちに掴んでもらっていないといけないもの」


「いろは殿、気になさるな。これこそ我らが太陽から地上に訪れた使命なのであろう。それよりも、次の指示をいただきたい」


 大鷹たちの力によりなんとかIテトラミノは空中に固定された。

 そして、上空からはJテトラミノが落下しつつある。


「え、えーと、あれを右回転させて、今ある隙間に落としてほしいんだけど、またカタパルト部隊のところに戻って指示しないとかな」


「ふむ、あれならば、もう少し待てば大鷹の二陣が来る。彼らに頼もうか」


 いろはの疑問にウォルフが答える。

 しかし、いろはの脳裏には先ほどの壮絶な大鷹たちの姿が甦る。


「大鷹さんたち? また体当たりするんじゃ大変そうだけど」


「いろは殿、心配なさるな。先ほども言ったが、これは我らの使命。

 それに、現れる者たちは一味違いますぞ」


 いろははウォルフとイェスタフの言葉に従うことにする。

 イェスタフが少し移動すると、新たな大鷹の群れが見えてきた。確かに、先ほどまでの大鷹たちとは様子が違う。

 どの大鷹の背にも武装した人間が乗っていたのだ。


 いろはたちのもとに近づいてくる一羽の大鷹がいた。大鷹は若者のようだったが、背中に乗せているのは老いた戦士だった。


「父上、ただいま到着いたしました」


「陛下、遅れて申し訳ございませぬ。これより、我らもいろは殿の指示で動かせていただきたい」


 若鷹と老戦士はうやうやしくあいさつし、イェスタフの次の言葉を待った。

 イェスタフは意味ありげにいろはに目を向ける。


「いろは殿、我が息子、クラウディオです。

 そして、人間の英雄の子、アールトとは彼のことです」

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