第89話 テトリス開始! いろはに秘策あり?!

「思ったより早く崩れちゃったから、あまり持ってこれなかったのよねー」


「ちょっと、こんな重いの持って、どこまで歩けばいいの?」


 ツルギたちが車両を置いてきた場所までの道のりを、いろはは大量の缶詰を抱えて歩くはめになった。ツルギと咲菜さなはいろはを見つけるまでの間に大量の缶詰を集めていたのだ。当然、ツルギと咲菜はいろは以上に大量の缶詰を抱えていた。

 重いからといって、文句ばかりも言えない。荒廃した世界での貴重な食糧なのだ。

 それに、ツルギたちが元来た道を戻るのだ。突貫とはいえ、多少は通りやすいように瓦礫が退けられていた。それでも道は荒れており、困難な道のりであったが。


 シブヤからは南西へ向かう。北のシンジュクや東のポンギは倒壊した旧時代の遺物が山のように積み重なり、とても踏破できる場所ではなかった。彼らは大きく迂回してシブヤまで辿り着いていたのだ。

 どうにか人の歩くことのできるニヨンロクの道を進み、サンチャ、ニコタマの瓦礫を越えると、大きな川がある。崩壊した橋の僅かに残った残骸を飛び越えて、ようやくニコ新地に辿り着いた。この地にツルギのパトカーが置いてある。


「や、やっと、ついたあ」


 ヘトヘトになったいろはがパトカーの前で座り込んだ。

 その時、ミゾノクチの方向から轟音が鳴り響いてきた。何かの砲撃のようだ。


「な、なにー!?」


「あの方角はハンターチームの縄張りのはずだな。おそらく戦車乗りの誰かだろう。

 ちょうどいい、行こう」


 ツルギはそう言うと、パトカーのエンジンを吹かす。いろはと咲菜は慌てて後部座席に飛び乗った。


「よし、動くな」


 この辺りまで来ると、車両が走れる道が残されていた。もともとビルが少ないため、被害が小さかったということもあるが、ハンターチームや彼らの庇護する人々が整備しているためでもある。

 果たして、サンドストーンの目立たない戦車とパッションピンクのハデハデな戦車が2台並んでいるのが目に入ってきた。


「あの戦車は……、えーと誰だっったっけ?」


 咲菜が2台の戦車から、戦車乗りの名前を思い出そうとする。


函田はこた青槻あおつきだ。運がいい、腕利きのふたりだ」


 ツルギがそう答える。戦車乗りもパトカーに気づいたのか、戦車から体を乗り出して手を振り始めていた。

 三人は戦車にパトカーで近づく。そして、パトカーから降りた。戦車乗りのふたりはいろはの姿を見ると唖然とした。


「えーと……、誰?」


 青槻が疑問を口にする。


「いや、聞いたことがあるな。徳さんがツルギさんから聞いたって話だと、世界を救う女神いろは、っていうのがいるらしい」


「なにそれ? バカにしてんの?」


 青槻が裏拳で函田の肩をしばく。


「痛っ。ホントの話だって。徳さんが話してたんだから」


 いろはは徳さんの名前が出て心が痛む。徳さんはもうこの世にいないのだ。

 あれ? 本当にいないのか? 時系列がぐちゃぐちゃなので、いろははよくわからなくなった。


「本当の話だ。急で悪いが、あのブロックがわかるか? あれを撃ち落としたいんだ」


「あれなら、特殊砲で一撃よ」


「ミサイル使うの? 貴重なんだから無駄撃ちしないでよ」


 ツルギの緊迫した態度にふたりは態度を変え、いろはの指示に従ってテトラミノを特殊砲弾ミサイルで撃ち落とす。さすが、ツルギが太鼓判を押すほどのハンターたちだ。的確に砲撃を当てていった。

 Iテトラミノを横に倒して左隅に配置する。Oテトラミノは右隅。Jテトラミノは中央に配置した。

 そして、Tテトラミノが降ってくる。


「ふっふっふー。今までのいろはじゃないってところ、見せてあげちゃうよ!」


○○〇:まさか、あの技を取得したのか!?

◆◆◆:妙に強気だな

□□□:あー、あれやるのね

●●●:絶対失敗すんぞ

◇◇◇:がんばってくれ


「なんか、予測してる人いるの気になるんですけどー。

 わかっててもネタバレはしないでね。


 って、このTテトラミノ、ホールドしたいんですけど、この世界にそんなことできる人いるの?」


■■■:飛行ユニットいるかな

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