第90話 ヒーローチーム出動です!

「兄貴、ヒライの上空に開きし者が出たらしい。飛行タイプだ」


 ガガ、ガガとノイズが走るが、トランシーバーからの音声はハッキリと聞き取ることができた。

 その言葉に従い空を眺める。確かにヒライ方面に飛行するものが確認できる。


「わかった。今いる地点を伝える」


 そう言うと、深町はシロウに地点情報を伝えた。そして、近くの廃ビルの扉をこじ開けると、上階に向かう階段を探して駆けだす。

 やがて、廃ビルの屋上に出た。そこで深町は服を脱ぎ、全裸になる。脱いだ衣服は丁寧に折りたたんでその場に置いた。

 再びトランシーバーを手にすると、シロウに連絡を取る。


「準備はできた。機甲鎧の射出を頼む」


 そう言うとトランシーバーを衣服と同様に丁寧に置くと、屋上から跳躍して飛び降りた。


 一方、シロウである。

 彼はトレーラーの荷台に通信機とともに、機甲鎧の整備施設を設置していた。


「草加、兄貴のいる地点はさっき伝えたとおりだ。移動してもらいたい場所は……」


 シロウは大声を出して、運転席にいるドライバーの少女、草加に指示を出そうとする。それに対し、ガンナーの少女、角松が先回りして答えた。


「ここだ」


 電磁投射砲レールガンによる射出の角度を計算し、助手席にいた角松が地図の地点を示す。


「じゃあ行くよ」


 運転席には草加と呼ばれたドライバーがいる。大柄なその女性――草加はハンドルを握ると、エンジンを起動させる。


「角松、射出の準備を始めてくれ」


 シロウがそう声をかけると、「あいよ」と角松が返事をし、運転席の梯子を通って、荷台に移動した。

 角松はシロウとともに電磁投射砲に機甲鎧のパーツを設置していく。


「ついたよー」


 草加の声とともにトレーラーが止まった。荷台から電磁投射砲が姿を現す。

 角松は地点情報を分析したうえで、電磁投射砲の角度を算出し、引き金を引く。


 電磁投射砲から射出された機甲鎧は、屋上から飛び立ち、落下する深町の元に届けられた。

 まずは籠手が飛来し、吸いつくように深町の腕に装着される。次いで脚部、脛当、腰部、胸部へと、次々に機甲鎧が到着し、自動的に装着されていった。

 そして、最後に兜に当たる頭部を覆うヘルメットが被さってくる。


 全身が黒色を基調とするメタリックと筋肉の融合したような全身鎧に覆われた。深町は自分の筋肉と鎧とが融合し、神経が鎧にも通うようになったことを実感する。

 機甲鎧の各部に配置された噴出口から青白い炎のようなエネルギーが吐き出され、深町に揚力と推進力を与える。


「シロウ、角松、草加、機甲鎧、確かに受け取った。今より開きし者の殲滅に移行する」


 機甲鎧に内蔵された無線機によって通信すると、深町はヒライの空へと飛び立った。

 そして、その推進力により生まれた速度のまま、飛行する開きし者に殴り掛かる。


「亀戸機甲部隊の深町だ。残された人類の今日と明日のため、貴様らをここで殲滅する」


 そう宣言すると掌底から熱射砲を放出する。その熱により開きし者は浄化された。


「開きし者の殲滅に成功した。だが、我らの宿敵ではなかった」


 通信機によりシロウたちに伝達する。

 しかし、それに対するシロウの反応は意外なものだった。


「兄貴、ツルギさんたちから連絡あったよ。ブロックをホールドしてくれ、だって。意味わかる?」


 ホールド? 耳慣れない言葉だった。

 掴む、という意味を表しているのはわかるが、ブロックとは何を示しているのか。


 ジジ、ジジとノイズが走った。そして、聞き慣れない女性の声が聞こえてくる。


「深町さん、ホールドってわからない!? あのTテトラミノ、見えないかな?」


 その声を聞いた瞬間、なぜだか彼女の言いたいことがストンと腑に落ちた。そして、周囲を見渡すと、南方に紫色のブロックが降ってきているのが見える。


「あれだな。今から向かう。いろは殿、待っていてくれ」


 無線通信で返事をすると、深町は南方のTテトラミノに向かって飛び立っていった。

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