第100話 いつも通りテトリスする回です

 ミゾノクチを出発したいろはたち一行は、いったんニコタマ方向に引き返しフチュウカイドウに進んだ。そのまま東南方向に進み、深町のいるトキオベイ付近に辿り着く見込みだった。

 そうは言っても、フチュウカイドウとて整備された道ではなく、荒れ果てたままになっている。ミゾノクチ付近であれば整備されてはいるのだが、次第にただ進めばいいというものではなくなってくる。

 時に迂回し、時に道を拓き、彼らは進んでいく。


 緑地化したムサシコスギの廃墟を迂回し、ニューマルコを越えた辺りだろうか。角度が変わり、降りゆくブロックの側面を捕らえることができた。

 パトカー後部に収納されたミサイルポッドを開き、テトラミノを砲撃する。


「あれ、こんなだったっけ」


 いろはが思っていたよりも、盤面は凸凹していた。とはいえ、二か所の凹があるくらいなので、すぐにリカバリー可能である。


「これ、どこに置くつもりだったっけ?」


 そう呟きながらも、ツルギに落とす場所を指定する。

 左側にある、より凹の深い2マス分の空きがある箇所に入れる。さらに落ちてきたJテトラミノは右側の隙間に嵌め込む。これでだいぶ均等になった。

 そして、落ちて来るのはOテトラミノ。それも二回連続ではあるが、整地したタイミングなのでむしろタイミングがいい。いろはの指示により並んで配置された。Sテトラミノも嵌まる場所に入れ、続いてふってくるのはIテトラミノだ。


「はい、これは決めます」


 右側に残しておいた隙間に差し込み、一気に4列のブロックを消す。もはや、このくらいはいろはにとって平常運転だ。

 続いてふってくるテトラミノの数々も危なげなく均等に配置していく。

 そして、降ってくるTテトラミノ。


「Tスピンのにえに相応しいのは、やはりTテトラミノよのぉ」


 なぜか悪役のような口調になりつつ、右端にTテトラミノを置く。すると、ちょうどTテトラミノの形の隙間ができた。


 ○○〇:完全にTスピン覚えてるじゃん

 ◆◆◆:やるねー

 □□□:ストックしているのはJテトラミノだし、しばらくTテトラミノないけど


「へっへっへー、上達してるでしょー」


 ギャラリーに褒められて、いろはも上機嫌だ。

 しかし、この場で落とせるのはこのくらいまでだった。また、車上の人となり、トキオベイまでの困難な道を進む。


――ザザ、ザザ……


 無線が反応していた。

 助手席にいる咲菜さなが無線を調整して、音を拾う。

 それは先に進んでいるであろうシロウからのものだった。


「つ、ツルギさん、咲菜さんですか……。角松が、角松がっ……!

 うわぁーっ!」


 その言葉とともに通信が途絶えた。


「ええぇっ、どうしたの!?」


 咲菜が無線機をカチカチと操作するが、つながることはない。


「無駄だ。向こうの通信機に問題があったようだ」


 ツルギがその様子を制止した。そして、後部座席に向かい、声をかける。


「いろは、シロウたちがどこにいるかわからないか?」


 しかし、いろはにそんなことがわかるはずがない。


「えぇっ! そんなのわからないよ!」


 そう答えるしかなかった。


 ●●●:角松ってシロウといい感じになってた子だっけ?

 ◇◇◇:やっぱり恋愛フラグは死亡フラグなのか

 ■■■:せちがらいねぇ


「うぅーん、シロウくんも角松さんも可哀想だよね……。

 どうにか助けられたらいいんだけど、間に合うかなあ」

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