第3話 クリア後の世界に来たのかな?
「すみません、……ウォルフさん?
そもそも、ここってどこですか? 私、なんにもわかっていないのです」
困惑しっぱなしのいろははゲルトウォルフの名前も覚えられないままに質問する。
それを聞いたウォルフは驚くような顔をしつつ、言葉を返す。
「なんと! では、もしや、テトリスという言葉にも心当たりはないですかな?」
その言葉で現実に引き戻される。
「いえ、それはあります。
前にいた世界もテトリスをやっていて、いつの間にかここに来たので……」
つい、テトリスで負けたという事実を隠してしまった。
なんとなく恥ずかしかったということもあるが、それを言うことで失望させてしまうかもという予感もあった。
ただ、どうせ失望させるなら早い方がよかったのかもしれない。
「ふむふむ。わしらにはテトリスがなんなのかも見当も突かん。
いろは殿の知恵を、そして戦い方を教えてほしいのじゃ」
ウォルフは殊勝な姿勢で、それでいて堂々とした態度で、いろはに教えを乞う。彼ほどの人物にこんな態度をとられるとは、いろはもまた大人物になったかのように錯覚する。
しかし、そんなことは、やはりおかしい。そもそもこの世界は何なんだろう。
「私はテトリスをやってって、この世界に迷い込んだだけなんです。
あなたがたが何を期待しているかはわかりません。でも、大したことができる自信はありません。
そもそもこの世界がどのような世界で、どんな危機にあるのか、教えていただけませんか?」
いろはの真剣な態度にウォルフはハッとした態度になる。
「これは礼を失しており、申し訳ない。なにより、異世界より客人を招いたことなどないものでな。
我らが世界をどのような、とは難しいことじゃ。比較するような他世界などないものでな。
ただ、少し前に大きな出来事があった。善と悪、光と闇、秩序と混沌。その両者を分けるような途方もない戦争があったのじゃ。
わしらは当然、善の側に立って戦った。苦しい戦いだったが、運命は我らに味方した。
ゆえに我らが生き残り、今こうしてこの世界を救う戦いに身を投じることができておる。
こんな答え方でいいのじゃろうか。疑問があるなら、尋ねてくだされ」
いろははウォルフの言葉をそれほど理解できたわけではないが、なんとなく、RPGの後日談みたいな世界なのかなとだけ理解した。
なんとなくワクワクし始めた。
「RPGのクリア後の世界にお邪魔する。そんなの危険もないし、楽しいばかりじゃないの!」
しかし、当然と言えば当然だが、彼女の期待は打ち砕かれることになる。
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