逆襲の章

第118話 こんなところで負けていられないから!

 岩崎たちはトレーラーや深町と通信しようと試みるが、まったく連絡が取れないでいた。

 ただ、救いなのは特異点クローンに乗る加藤とは無線がつながり、ホールド役を買って出てくれたことだ。


「やるもやらないもないのよ。もう持っちゃっているから」


 加藤はぶっきらぼうにそう返事しただけだった。


「加藤さん、ありがとう! 今まで疑っててごめんね。

 でも、やっぱり深町さんも、シロウ君も角松さんも助かってないのかな。ツルギさんはどうなったんだろ」


「どうにか生きていることを祈るしかないな。

 開きし者の大群はどうにかしないと、俺たちのところにも押し寄せてくるだろう。このまま進軍するぞ」


 岩崎の言葉により、戦線を確保しつつ、ハンターチームは先へ進んでいく。

 その陣容は岩崎、函田はこた青槻あおつきの操縦する戦車三両に加え、ジープが二両付いてきており、銃火器で武装したハンターが数人いる。それに犬のジェイムズがいて、いろはと榊もいた。

 彼らは開きし者どもを目視ではあるが、必死で探し出し、どうにか撃ち滅ぼしていく。


 その進みは速いとは言い難いものだが、開きし者どもの侵攻を食い止め、テトリスの整地も行っていっていた。

 テトリスはホールドが使えないまま、窮地に陥っていた。ホールドが使えない間に敵の攻撃が連続し、ブロックは半分以上にせり上がり、さらに移動できないまま落下したテトラミノもある。

 いろはは状況に焦りつつも、手際よくブロックを消していった。灰色ブロックの上に乗っていたテトラミノを消し切ったタイミングで、都合よくIテトラミノが降る。これにより灰色ブロックの隙間を一気に埋めることに成功した。


○○〇:手際が鮮やかだな

◆◆◆:もう、危なげがないよね


「そうでしょ! もうだいぶ上手の民になってしまいましたな」


 ブロックを大量に消す爽快感を味わい、いろはも上機嫌だ。


 このタイミングで開きし者どもと出くわした。どうやら、群集の中に突入してしまったらしい。。

 函田と青槻の戦車が前線に出て、四つ足の獣のような開きし者どもを攻撃する。そして、戦車を持たないハンターたちが討ち漏らした敵を殲滅していった。榊も彼らとともに開きし者どもの掃討に加わっていた。

 岩崎といろははやや後方に陣取り、戦況を見極めつつ、ブロックへの攻撃を継続する。


 しかし、状況が状況だからかミスが頻発した。Tテトラミノの回転が足らず、嚙み合わない状態で落としてしまう。隙間のあるブロックの上にJテトラミノの凸部分を上にして配置してしまった。

 さらに世界の外部からの敵の攻撃で灰色ブロックが波状攻撃のように何度となくせり上がってくる。


「ああぁっ、こんなことしていて大丈夫なのかな?」


 その後はどうにか消せる列は消していき、立て直そうとする。それでも、ブロックに空いた穴がぽつぽつと目立つ状態になってしまった。

 函田と青槻たちの戦況も思わしくなく、獣人どもが迫ってきている。


「こんなところで負けていられないから!」


 いろはは叫びとともに、岩崎にブロックを落とす地点を次々に指示していく。一列ずつでも確実にブロックを消していった。

 そんないろはの声に反応したのか、犬のジェイムズが飛び出し、獣人どもの群れの中に突っ込んでいく。機銃を放ちつつ、敵の動きを攪乱かくらんし、戦車砲の餌食になるよう誘導していく。

 その甲斐もあって、ハンターたちに近づく敵の数は少なくなっていった。


「まだまだ水際だけど、どうにかなった感じだね」


□□□:ちなみに、現在倒した敵の数0だよ

●●●:そうか、今回も厳しいのかな

◇◇◇:Tスピンもできるようになったのにね

■■■:ピンチは終わってないよ


「うぅーん、まだ敵倒せてないのかあ。でも、まだ勝負はこれからだからね!

 敵を倒して力をつけるし、ツルギさんたちだって助かるんだから」

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