第119話 ピンチなんて撥ね退けるためにあるんだから!
どうにか当面の危機を脱したものの、戦いに勝ったわけでも、この局面を乗り切ったわけでもなかった。
開きし者どもはうじゃうじゃいるし、いろはは今回まだ一度も敵を倒していない。いろはが敵を倒して、ブロックを相殺する力、敵を妨害するブロック量を上げていかなければ、結局はこの世界を守り切ることはできないのだ。
いろはは再び岩崎と協力し、対空戦車の砲撃でテトラミノを落としていく。
ブロックを消すべく、どんどんテトラミノを積み重ねていくが、しかし順調にはいかない。敵の攻撃が再三入り、消しても消しても、押し返されるばかりだ。
さらに凡ミスもする。Lテトラミノを隙間に嵌め込もうとして、一つずらして配置してしまった。Lテトラミノは鍵状のようになってしまい、3~4マス分もの隙間が空いていた。
「なんてこった!」
岩崎が落胆するような悲鳴を上げる。
「大丈夫! これはリカバリーできる」
いろはは慌てずに、再度降ってきたLテトラミノを隙間に入れなおした。そして、ホールドしていたOテトラミノを横滑りに移動させ、2マス分になった隙間に嵌め込んだ。
ひとまず隙間はなくなった形となり、どうにか整地できた。
だが、敵の攻撃が入り、7列分の灰色ブロックがせり上がる。ミスをカバーしたために小高いブロックの山もできており、全体の3/4が埋まってしまったことになる。
しかも、敵の攻撃も止んではいない。
○○〇:ひぇっ
◆◆◆:これはまずいぞ
□□□:終わった
ギャラリーの悲鳴にも反応せず、いろはと岩崎は一心不乱にブロックを消していく。
だが、灰色ブロックがどんどん積まれ、ついには限界いっぱいまでテトラミノが積み重なっていった。
一方、前方を守る二両の戦車隊も苦戦を強いられていた。
節くれだった足を持つ蟲のような開きし者――奇しくも綾瀬に似ていた――が出現し、跳躍して襲撃してきていた。この三次元的な戦いに翻弄され、戦車の砲撃はあさっての方角に飛んでいく。どうにか歩兵部隊が迎撃しようとするも、その動きを捉えきれずに負傷するものが現れ始めていた。
さらに巨大な角を持つ甲虫のような開きし者も出現し、体当たりを仕掛けてくる。その直線的な動きは、函田によって捕らえられ、彼のサンドストーン色の戦車の砲撃によっていくつもの弾丸を浴びせる。
しかし、予想以上に甲虫は頑強であった。何発もの砲撃を受け、瀕死になりながらも、函田の戦車にガンガンにぶつかってくる。やがて、函田の戦車のキャタピラが外れ、その動きが止まってしまった。
函田は単なる砲台となった戦車をそれでも操り、さらに何発もの砲弾を当て、そうして甲虫の動きは止まった。
「青槻、先に行っててくれ。戦車を直したら追いつくから」
函田はしばらく様子を見たのち、ハッチを開け、戦車の外部に這い出てくる。
この瞬間を狙われた。
「うへへぇ。やられちゃった……」
血の気を引かせながらも函田は照れ笑いするような表情を浮かべるが、それとは裏腹に抜け目なく手は動いていた。瞬間的に、自らを刺した開きし者の口に拳銃を突っ込み、ぶっ放す。バッタの怪物の頭は吹き飛んだ。
「ええぇ! 函田さん、大丈夫なの!?」
それを後ろで見ていたいろはが悲鳴を上げた。
「大丈夫じゃないだろうな。だけど、
おい、藤田、安全確認したら函田の戦車を直して、乗ってきてくれ」
岩崎は近くにいたハンターに声をかけると、「テトリスをどうにかするぞ」と言わんばかりに、対空戦車の操縦席に戻った。
「そうだよね……。やんなきゃ!
ピンチなんて撥ね退けるためにあるんだから!」
ブロックは限界まで迫っているように見えるが、まだ落とせる場所はある。いろはは冷静に見極め、岩崎の砲撃でその場所にLテトラミノを落とす。L字のブロックはピタリと当てはまり、一列分のブロックを消した。
そして、次いで落ちてきた棒状のブロックを回転させて左奥に逃がすと、灰色ブロックの隙間にぶち込んだ。一気に4列分のブロックが消え、多少なりとも余裕が生まれる。
落ちてきたSテトラミノは無難な場所に落とし、Zテトラミノで1列を消す。さらにIテトラミノが来ているので、これでまた4列分のブロックを一掃した。
これで半分以上のブロックを消すことができた。なおも、丁寧にブロックを並べていき、灰色ブロックの隙間を埋めているブロックを消していく。
そうして隙間ができると、Lテトラミノ、Zテトラミノ、Iテトラミノで、灰色ブロックを消していった。
限界に近かったブロックが、もはや僅か1列にまで減っていっていた。
●●●:すげー
◇◇◇:これ凌げるのか
■■■:棒だけじゃなく、すべてのテトラミノの特性を理解できてる
「力が……どんどん
○○〇:攻撃してきてた奴らを全員やっつけたのかも
◆◆◆:ピンチを乗り越えただけの甲斐があった
「このままの勢いで、今回こそ!」
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