大乗の章

第135話 海洋世界の脅威! 最後の戦いです

 ショゴスとミ=ゴの融合兵器ヌガー=クトゥンが起動した。


 ヌガー=クトゥンは頭部のない類人猿のよう形状をしていた。四本足で移動し、前足は人間の腕のように器用に取り回すことができる。その高い機動性を発揮して、瞬時に移動すると蛇神ハンの上方へと現れ、その拳を叩き込まんとする。

 だが、その前に立ちはだかるものがあった。ツァトゥグアだ。ツァトゥグアとヌガー=クトゥンはがっつりと組み合う形になった。


 ショゴスのてのひらから強烈な酸が流れ出て、ツァトゥグアの毛皮を溶かし、皮膚を焼いていく。さらにショゴスは粘液を分泌し、握力の弱くなっていたツァトゥグアの手を滑らした。この隙を逃さず、ヌガー=クトゥンは拳を作り出し、ツァトゥグアに叩きつける。

 ツァトゥグアは滑る勢いのままに地面に伏した。


「ほぉう、なかなかやるじゃねーの」


 ツァトゥグアはすぐさま立ち上がると、にたりと笑う。


 一方の九頭龍坂くずりゅうざかいろはであるが、彼女はテトリスに向き合っていた。

 いろはは加速するブロックの流れの中でとにかく消していくことに集中する。

 ZテトラミノをSテトラミノと噛み合わせ、JテトラミノをホールドしてIテトラミノを開放して、1マスの隙間に差し込んで1列を消す。

 敵は残り2人。いろはを含めて3人が熾烈な戦いを繰り広げているのである。


「クトゥルー、何とかなりそうなの?」


 彼女の緊迫感が移ったのか、ハスターも緊張しながらいろはに尋ねた。しかし、次の瞬間、しまったと思う。研ぎ澄まされたいろはの神経に障るようなことをしてしまったと考えたのだ。


「任せて、ハスターちゃん。任せて、みんな」


 いろははテトリスに向き合ったまま答える。


○○〇:頼もしいじゃん

◆◆◆:行ける! 行けるよ!

□□□:任せたぞ!


 順調にブロックを消していっていたが、敵の攻撃が入る。それと同時に敵がひとりいなくなるのを感じた。いろはの攻撃が入ったわけではないため、もうひとりの攻撃によるものだ。


「潰し合ってくれてラッキー! って言いたいとこだけど、これって最後のひとりの力が上がってるってことだよね」


 警戒すべきは最後のプレイヤーである。加えて、いろはの世界には何段もの灰色ブロックが置かれてしまっていた。これ以上の攻撃を受けるのは危険だ。

 いろははIテトラミノを温存すべくホールドし、Lテトラミノを開放する。しかし、これは失敗だった。置くべき場所が見当たらず、何度もフサッグァの雷撃を浴びせ、回転させる。この時点で置ける場所は限られてしまうのだが……。ついに観念して配置する。隙間ができてしまったが、どうにか1列を消せる場所に置くことができた。

 さらに続いてのIテトラミノは落下するままに配置してしまう。焦りと緊張、そして、テトリスの加速により、もはやまともにプレイできる状態ではなくなっていた。


 Tテトラミノ、Oテトラミノ、再度のIテトラミノはどうにかバランスよく配置するが、しかし、列を消すタイミングが訪れない。また、IテトラミノとIテトラミノを1マス挟んで配置したために、3マス分の隙間ができた箇所ができてしまった。これを一手で埋めるにはIテトラミノを使うしかない。

 そうこうしているうちに、敵の攻撃がさらに入り、灰色ブロックがせり上がる。もはや限界地点まで僅か。正念場が来ていた。


 その頃、立ち上がったツァトゥグアはヌガー=クトゥンとの再戦に挑もうとしていたが、はたと気づいて、ため息を吐く。


「なんでい、これじゃあ、もう終わりじゃねえか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る