第74話 竜汽船スキルヴィングVS戦艦デュナミス、です!
いろはたちは竜汽船スキルヴィングに搭乗していた。
彼女たちを出迎えたのは、毛皮のフェルトに身を包んだ金髪の美女である。アルビダだ。
「遅くなってすまなかった。これからアンの空賊団も来る」
アルビダの言葉は頼もしい。すでに北方諸王国の軍勢が大挙しており、局所的には反空賊同盟を圧倒し始めていた。
しかし、キビツヒコが戦闘に入ると、その優位もあっという間に覆される。しかも、キビツヒコは無数にいるのだ。戦局はなかなか安定しない。
「あの銀色の飛空艇、あそこに指揮官がいるようですね。あれを私たちで叩きましょう」
参謀の言葉に耳を傾け、アルビダはそう自分の取るべき行動を見出す。
当然、銀色の飛空艇にいるのはバスコである。それを考えると、いろはにはアルビダに伝えるべきことがあると思えてならなかった。
「あのね、アルビダさん。カエルって覚えているでしょ。あの銀色の飛空艇の船長やってるバスコってカエルなんだよ」
思っていた以上にストレートに口に出してしまった。
その言葉を受けてアルビダはショックを受ける。いろはの力を知らないわけではなかったが、まさかカエルのことまで把握しているとは考えていなかった。そして、カエルが不倶戴天の敵であったバスコその人であるという事実まで突きつけてくるのである。
それでも、アルビダはバスコの正体について半信半疑であった。そして、ある決意をする。
「そうだとしたら、私は隠してきた過去に決着をつけるときなのでしょうね」
その言葉とともに、竜汽船スキルヴィングはデュナミスに狙いを定め、行動を開始した。
デュナミスに距離を詰め、砲撃を撃ちまくるが、しかし、北方諸王国の砲術ではデュナミスにダメージを与えることはできない。逆に、デュナミスの砲撃を受けて、スキルヴィングの船体は深刻なダメージを与えられ、電撃を受けて、本体である
「なにか、弱点はないの?」
攻め手に詰まり、アルビダと側近たちが苦悶の声を上げる。
だが、いろはには思い当たるものがあった。
「右側の前方にあるハッチ、わかる? あれだけ元からあったものじゃないの! 新しく設置されたもののはずよ」
かつてバスコがオロチを謀殺した際、オロチの反抗に遭ってデュナミスのハッチは破損していた。それを現代の技術で直したとして、デュナミス自体の無敵の防御力を持ち合わせているはずがない。それを読んだ上でのいろはの言葉であった。
「そうか!」
アルビダはいろはの言葉に得心すると、スキルヴィングを自在に操り、デュナミスの側面を突いた。そして、アルビダが叫ぶ。
「アルフ!」
その名前が響くのと同時に、飛竜が火を吹いた。その高熱の炎がデュナミスを覆うが、それで鉄壁の装甲を破ることはない。だが、そのハッチは別である。かつてオロチに破られ、急増の装甲を付け足されたそのハッチは、飛竜の炎によって溶かされ、そして、開かれ通路からデュナミスの内部を炎が焼く。
この瞬間、デュナミスの反撃はやんだ。
「行く!」
アルビダはそう宣言すると、スキルヴィングからデュナミスに飛び移った。そして、開かれたハッチを通りデュナミスの内部に進入する。
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