第67話 オロチさんの空賊生活は充実してます
アンの空賊団に入ったオロチは急速に満たされていくのを実感していた。
宝を求めて西へ東へ飛び回り、シマを奪い合い敵対する空賊たちと命のやり取りを行い、そして、時に略奪をする。気の合う仲間たちとの生活はそれだけで楽しかったし、アンの空賊団は昇り調子だった。人間、上昇を続けている時が一番面白いものだ。
この時代のアンは時代の寵児とも呼ぶべきだった。的確に宝を見つけ出し、戦いにおいては負けることがない。空賊の立場でありながら、帝国の中枢にも顔が利き、政治を動かす存在でもあった。
オロチは自ら空賊団を組織した時、アンを意識したのだろう。より、自ら政治に関わろうとする意識は強かったものの、お手本にするものがあるのとないのとでは違う。
ハウエルがアンの空賊団に入った時には、すでにオロチも空賊として板についたものになっていた。
故郷を追われたハウエルはひとり行く当てのない旅をしていた。女性の一人旅とは危ういものだ。ハウエルが山道を通った時、山賊に襲われる。
しかし、その山賊団はちょうどアンの空賊団に襲われているところだった。山賊団の一部がハウエルに襲いかかった時、オロチは残党狩りで山を駆け巡っており、その様子を目撃する。
「今時、山賊なんぞ流行りはしないぞ」
その言葉とともにオロチは山賊の背後から襲いかかり、一撃で首を落として絶命させる。
この時にはハウエルも気絶していた。オロチはハウエルをアンの空賊団の旗艦であるラコンコルドまで運び、船医に介抱を任せる。
やがて、ハウエルが意識を戻すと、アンが面会する。その結果はオロチに任せる、だった。
オロチはハウエルの病室に行き、その身の上を聞くことになった。
錯乱した患者に両親が殺され、自ら手を下さなければならなかったこと。そして、周囲にあらぬ噂が広まり、殺人鬼であったり、身体を穢されたものとして扱われることになったこと。
その過去はオロチにとっても受け止めきれないほど重いものであった。だからこそ、彼女を救いたいと思ったことも事実である。
「それで、お前はどうしたいんだ? 故郷の奴らに復讐したいのか? それとも消し去りたいのか?
もし、この空賊団に入るんなら、俺たちは仲間だ。その目的に協力するぜ。どうせ、みんな、手を汚し切った奴らばかりだしな」
この言葉でハウエルは救われたのだ。目を開かされたと言ってもいい。あるいは、居場所を見つけたと言えるかもしれない。
ハウエルはアンの空賊団に加わることになった。オロチとハウエルはやがて男女の中になるのだが、そのことを語る時間はないだろう。
オロチがバスコを発見したのは偶然だった。
周囲の観測のため、オロチは単身、小型の飛空艇に乗って、情報をラコンコルドに伝えていた。そんな時、ひとりの昏睡した少年が小型の飛空艇の甲板に乗っかっていたのだ。オロチも訳がわからなかった。
ハウエルら、船医に預けると、少年は栄養失調に加え、酸素欠乏症にかかっていることがわかった。船医の奮闘により、彼は意識を取り戻し、空賊団で働くことになる。
しかし、バスコは空賊団には馴染まなかった。いつもツンツンとした態度で、誰にも心を開こうとしない。
オロチはバスコを助けた責任を感じており、何かと世話を焼くようになっていた。そんなオロチにバスコは反発するが、次第にそんな関係性が普通になっていく。
「いい加減、俺に構わないでくれ」
バスコがそんなことをぼやいたことがあった。それに対し、オロチはキョトンと返事する。
「構わないでほしいなら構わないさ。そんなこと最初から言ってくれればいい。
お前はどうしたいんだ、どうしてほしいんだ? もっと主張してくれ」
それ以降、バスコのオロチに対する、いや、周囲に対する態度が変わっていた。それは我がままと取られるものもあったが、その場合は周囲の反発を受ける。そうしている間に、バスコはどんどん丸くなっていく。
そして、オロチにとって運命の時が来る。
アンの空賊団が襲った遺跡の内部で映像資料を目にすることがあった。それは、巨大な空を飛ぶ大地が大陸に落ちていく姿だった。映像資料を見ていくうちに、それはオロチの故郷に近い場所であり、自在に空を飛ぶ浮遊島であることがわかっていく。
オロチはその浮遊島に力を見た。自分が空賊団を立ち上げるなら、国盗りを目指すなら、必要な力だろう。
それ以降、オロチは浮遊島を求め、情報を集め始めた。やがて、アンの空賊団を抜けると、ついてきたバスコとともに、欠けた情報を求める旅に出るのである。
○○〇:アンって思ってたより実力者なんだな
◆◆◆:いろはを見つけたのもアンだけど、やたら運がある気がする
□□□:ハウエルと会い、バスコと会い、浮遊大陸を探す 今までの情報通りかな
●●●:オロチは啓蒙させる、みたいな描写が多いのか
「アンさんって、すごい人なんだね。オロチさんもそうだけど、ハウエルさんとか、浮遊大陸とか、意図的なのかな? ピンポイントで見つけていくよね!
オロチさんはハウエルさんとバスコを味方に付けて、浮遊大陸を探すってところまで来たね。
次回は……、オロチさんからハイレディンさんの話に戻るかなあ」
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