第76話 飛空艇ラコンコルドと合流! テトリスやります!

 アルビダが銀の飛空艇デュナミスに進入してから、竜汽船スキルヴィングの飛行は不安定になった。主人あるじがいて始めて飛空艇として機能するのだろう。

 メアリが何度となく「兄さん!」と呼びかけるが反応はない。飛竜ワイバーンが声を聞くのはアルビダだけのようだった。


 やがて、飛竜はデュナミスに掴みかかった。船体が激しく揺れ、いろはたちは立っていることもままならない。

 飛竜はデュナミスを抱えたまま、大気中を真っ逆さまに落ちていかんとする。こうなると、スキルヴィングの乗組員たちも空の藻屑と消えてしまう。


 そう思った時であった。

 竜汽船スキルヴィングが何者かの攻撃を受けて、飛竜から切り離された。そして、複数の飛空艇のアンカーによってキャッチされる。

 それはアンの空賊団の艦隊であった。


 スキルヴィングの甲板は飛空艇ラコンコルドに拾い上げられ、乗組員たちはラコンコルドに移った。

 見ると、アンの空賊団やムラカミ空軍の艦隊が大挙して出現しており、アンチ空賊同盟に対して善戦を始めている。


「よし、来たね!」


 いろはたちを女船長のアンが迎えてくれる。

 そして、笑顔のまま言い放つ。


「逃げるよ!」


「えっ? えっ? なんか、勝てそうじゃないの?」


 アンの言葉に困惑して、いろはが疑問を口にした。


「いや、無理だから。キビツヒコひとりで、何隻の船が沈むと思ってるのさ。まともにやって勝てるはずない。

 今のうちに、テトラミノを消すしか手はないよ!」


 その言葉に押され、いろはは再びテトリスと向き合うことになった。


「敵からの攻撃も来てるからね! とにかく消していくしかない!」


 いろははそう宣言して、アンやメアリに指示を出していく。

 敵からの攻撃でできた隙間は避けて、次々にテトラミノを配置していく。

 Sテトラミノが落ちて来る。しかし、これを凸凹を埋めるように配置すると、隙間の上に凸部分ができてしまう。


「これはダメ! ムラカミさんにホールドを!」


 ムラカミ空軍からTテトラミノを受けり、Sテトラミノをホールドしてもらう。

 上手いことTテトラミノを配置した。そして、次のLテトラミノをきっちりと嵌めて上段のテトラミノを消す。

 さらにIテトラミノを敵の攻撃で出現した灰色ブロックに刺す。灰色ブロックは消え去った。


 これで、大分安定した。そう思った矢先である。

 いろはは何か空気が変わるものを感じた。


「あ、あれ? これって、落ちるスピードが上がってる!?」


○○〇:始まったな

◆◆◆:ここからが本当のテトリスの地獄だ

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