6話 到着!!

 撫子が車を用意する。そうは言ったものの、別にレンタカーを撫子が運転して、皆で海まで行こうって訳ではない。

 そもそも、撫子は高校生の時から女優業をやっていた都合上免許を持っていない。

 現時点で高校生(十八歳未満)である、鏡也、桃、柳は言わずもがな。


 故に、彼らはミニバンタイプの大型タクシーで海まで行くことにした。


 一応、海は遠いし一泊二日の予定で行くため、それぞれそれなりに荷物が多い。

 故に最大定員数が4人の通常タクシーではなく、5~6人乗れる大きめのタクシーを利用することによって、狭さに苦しめられずに済むのである。

 まぁ、狭ければ密着できるし。実はちょっとだけ、大きめのタクシーを取ったのを後悔してる人が四人ほど居るわけだが……。


 まぁ、助手席にあぶれるのが自分である可能性を考えればやむなしである。


 因みに、電車でなくタクシーにした理由は、海水浴場が駅から微妙に遠かったからである。

 そんなこんなで、タクシーに揺られること二時間。

 鏡也たちは、目的の海水浴場に着いた。


「海だ!!」

「海なのです!!」

「海じゃん!!」

「海ね!!」


 タクシーから降りて、料金を払って外に出る。

 車に乗って二時間、少し痛くなった腰とくたびれた背中をきゅーっと伸ばしながら磯臭い潮風を全身で受けた。

 海である。

 蒼く、陽光が反射する太平洋。テンションが上がる。


 早速浜辺に飛び出して泳ぎたいところだが、生憎まだ水着に着替えてないし、それに沢山ある荷物をどうにかしなければならないのである。

 故に、鏡也たちは先にホテルのチェックインを済ませてしまうことにした。




                  ◇



 海水浴場すぐ側にある、リゾートホテル。


 絶好のロケーション、部屋から見える海。そして、あまり広くはない一人部屋。お風呂、トイレ付き。一泊晩ご飯付きで2万円。

 もの凄く安いって訳ではないが、決して高いわけでもない。


 この海水浴場が凄く有名であるわけでもないことを考えれば、普通ってところか。

 まぁ「学生が遊びに行く」割には一泊2万+交通費割り勘はそこそこ高いのかもしれないけど、そこは鏡也も桃も柳も撫子も今をときめく有名人だ。

 収入も少なくないし、このメンツで楽しい時間を共有出来ることを考えればめちゃめちゃ安いとすら感じる。


 だってお泊まりだ。お泊まり!!!


 異性と一緒にお泊まりで小旅行なんて、両親に反対されるかと思いきや、鏡也は一緒に行くのが柳と桃と撫子であることを、桃と柳は同行する異性はカガミであることを伝えたら、ものの数秒でOKされてしまった。

 ただ一つ不満を上げるとすれば


「くぅ、なんで俺はあんなことを言ったんだ……」


「うぅ、せっかくならカガミ様と同じ部屋でお泊まりを……い、いや、流石にそれはお、恐れ多すぎて死んじゃうのです!!」


「はぁ、一人かぁ」


「むぅ、鏡也くんと同じ部屋が良かったなぁ」


 一人、一部屋取れちゃったことである。

 最初はなんとなく「大きめの部屋取って、四人で泊まる? 節約できるし、そんなに沢山空いてないかもしれないし」みたいな流れだったのに、鏡也が女性陣と同じ部屋で泊まることに日和って「さ、流石に俺はべ、別の部屋取った方が良くない?」と言ってしまったのだ。


「(でもさ、でもさ!? あそこで何も言わなかったら、あの三人と一緒の部屋に泊まることになってたんでしょ!?)」


 お姉ちゃんのように思っている撫子が泊まりに来たときに、お風呂上がりの姿をみただけで卒倒しそうになった鏡也である。

 お風呂上がりだけじゃなくて、パジャマ姿とか、寝顔とか、寝起きとか。そう言うのを見せられたら、心臓がいくつあっても持たない。


 それに、あれほどまでの美少女を前にして、なにも出来ないのは完全な蛇の生殺しである。思春期の男子的にはいろいろな意味で辛い状況だ。


 故に鏡也は、部屋を別けたのは多少値段が高くなったことを考慮しても英断だったと思う。

 とは言え、とは言えだ。


 いくらドキドキして死にそうになる未来が見えて日和ったとは言え、桃とか柳とかのお風呂上がりとか、パジャマ姿とか、見てみたかったという気持ちもある。

 一緒の部屋に泊まって、一泊だけでも寝食を共にしたかったなぁとも思うのだ。


 鏡也は、やり場のない後悔と自分の意気地のなさと安堵の混じった微妙な感情を噛みしめながら、部屋に荷物を置いて、とっとと着替えてしまうことにした。

 まぁ、着替えるって言っても……


「水着は中に着てきてるんだけどね!!」


 鏡也は上着とズボンを脱いで、パーカーを羽織った。

 楽しみすぎて水着を中に着てきたのは良いものの、それに反応してくれる人がいないのが少し寂しいところである。


 まぁ、それもこの先のことを考えれば大した問題じゃない。


 鏡也はそのままホテルの部屋の鍵を閉めて、鍵を手首に巻き付けたままホテルのエレベーターを降りていく。

 そして、受付でビーチパラソルとレジャーシートをレンタルしてから、ウキウキ気分で浜辺に出て、レジャーシートとビーチパラソルをセッティングする。


 完成した日陰の下で、座ってみると海水浴場にはそれなりに人がいるのが見える。


 カップルと思わしき人や、男だけで来ている人。逆に女の子だけの人たちや、家族連れ。海で泳ぐ人が居たり、砂で遊ぶ人が居たり、ビーチバレーをしてる人も居る。

 かんかん照りの浜辺を見つめる鏡也は、それらの景色に興味はなく。しかし、内心はもの凄くソワソワしていた。


 なにせ、色々と意識している桃とカガミのことをスゴく好きで居てくれる柳とスッゴく美人なお姉ちゃんである撫子の水着姿だ。


 彼女たちが鏡也の水着を楽しみにしているように、いや、鏡也の気分的にはそれ以上に、彼女たちの水着姿が楽しみだった。


「(まだかな、まだかな)」


 期待を胸に膨らませ、鏡也は海を眺める――





―――――――――――――――――




次回、水着回!!!!


是非、コメントでどのヒロインの水着が楽しみか教えてください!!

『楽しみ!!』という方は、↓から☆も入れて頂けると幸いです!!

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