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『奈々⁉︎あたし、ちとせっ。さっき電話の途中で誰か来たって言ったでしょ?あれ、宅配便の人だったんだけど、すぐそこのコンビニでうちの高校の学生が交通事故に遭ったらしいって言うから、あたしもビックリして慌てて行ってみたら、それが鉄平だったのっ!よくわかんないんだけど、とにかくはねられて大変なのよ!!奈々、早く来てっ!』




ーーーーーーーーーーーーーーー




どうしてーーーーーーーーーーーー⁉︎






「奈々っ」


「ち、ちとせっ。鉄平はっ……?」


ちとせからの電話を切ったあと、あたしは無我夢中でその現場まで走っていった。


どうして?鉄平は?


なんで?なんでっ??



辺りには、パトカーや救急車のサイレンが鳴り響いていて、たくさんの人々でざわめいていた。


騒然としている現場。


「ねぇ!て、て、鉄平はっ……⁉︎」


ガクガクと手足が震える。


「て、て、鉄平……」


「奈々っ。落ち着いてっ」


ちとせが、あたしをぎゅっと抱きしめた。


「佐河っ。大丈夫か?」


てつやの声も聞こえる。


鉄平とつるんでいる連中の中でも、てつやと鉄平は特に仲が良かった。



「鉄平っ。鉄平はぁっ?」


ふと見たアスファルトの上には、真っ赤な絵の具に少し黒を混ぜたような色の血が流れていた。



「……イ、イヤだよ……。イヤだよぉぉ!」


「奈々っ」


ちとせが、震えるあたしを更に強く抱きしめた。


もうなにも考えられない。


頭の中、真っ白。


「佐河、落ち着け。鉄平は、今救急車の中に運ばれたから。これからすぐ病院に向かうからっ」


てつやの声が、ぼんやり聞こえる。



鉄平の血が………。


鉄平の血が………。


どうして道路に流れてるの………?


そんなことしたら、鉄平の血がなくなっちゃうじゃない。


鉄平、死んじゃうよ……?


そんなの……。


ーーーーーーーーイヤだ。



その時。


ハッキリとあたしの頭の中に映ったの。


アイツの笑顔が。


太陽みたいに明るい、アイツの笑顔が。


そして気づいたの。


滝のように流れてる、自分の涙に。



人の心ってホントによくわからないものだね。


あんなにムカついて、絶対許せないって思ってたハズなのに……。


心は、鉄平を離さない。


やっぱり、アイツが好きだよ。


恋とか愛とか、そんなのわからないけど……。


鉄平を好きなことには変わりはないんだ。


どうして崖っぷちに来ないと、心の奥の奥の気持ちに気づかないんだろう。



たったひとりのあたしの大切な幼なじみ。


大切な鉄平。


その絆は、壊せない………。



あたしの中に、幼い頃の鉄平の姿が蘇っていた。



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