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あたしの中で、アメリカ国旗の星達がチカチカ浮かんでいる。
ど、どういうことっ?
驚いているあたしをよそに、先輩は穏やかな表情で言った。
「オレの兄貴が向こうに住んでるんだよ。オレも、いつかは向こうに行って語学留学したいって昔から思ってて。それで、今回高校卒業してから兄貴もいるニューヨークに行くことになったんだ」
「………そうだったんですね。ニューヨーク……すごい」
突然の話でビックリしたけど、やっぱ先輩ってすごいなぁ………。
「先輩、ニューヨーカーですね!ホントにすごい!!」
あたしが目を輝かせながら拍手していると。
「やっぱりあんまり寂しそうじゃないな」
先輩がニヤッとしながらあたしの顔を覗き込んできた。
「えっ?そ。そんなことないですっ!もちろん、寂しいです……」
「ジョーダンだよ。でも、だからかな。どうしても佐河に自分の気持ちを伝えたいーーーって思ったのは……」
「え……」
「卒業も近いし、留学するし。もうあんまり時間がないんだなって思ったら、オレも黙ってられなくてさ」
先輩がサラッと髪をかき上げる。
「どうしても佐河と一緒にいたかったんだ。向こうに行っちまう前に少しでも多く……。卒業したら離れ離れになるのもわかってたんだけど。もし佐河がいいって言ってくれるなら、遠距離でもいいって……。オレも勝手に考えたりしてたんだ。
まぁ、実際問題はそんな簡単なことじゃないってこともわかってはいたんだけど」
「先輩……」
「どっちみちオレは佐河にふられたから。もうどうしようもないけどな」
カラッと笑う先輩。
「でも。佐河がちゃんとオレのことふってくれてスッキリしたよ。これで心置きなく向こうに行けるよ」
先輩……ーーーーーーー。
本当にカッコよくて、優しくてステキでした。
あたしにはもったいないくらい、最高の人でした。
ほんの短い時間だったけど。
きっと、忘れられない大切な想い出。
あたしの初めての恋ーーーーーー。
あたしにとって、もうひとりの大切な人。
もうひとりの、T・Rーーーーーーー。
「先輩……。アメリカに行っても、元気でがんばって下さい」
がんばって下さい。
あたし、心から応援してます。
「ありがとう。でも、今日でお別れみたいなカンジになってるけど。まだ卒業式まではいるからな」
「あ、そうですよね」
2人で笑った。
「ところで佐河。肝心の利久原とはちゃんと話したのか?」
ドキ。
「やっぱりまだか」
「……鉄平とは、先輩とちゃんと話して。それから会おうと思ってました……」
あたしがそう言うと。
「じゃあ、もう行ってこい。オレとの話はもう終わったよ。大丈夫。オレもちゃんと気持ちの整理がついたよ」
先輩……。
「ほら、早く行って佐河のホントの気持ち、ぶつけてこい!」
笑顔の先輩。
「ーーーーーーはいっ」
あたしは、涙まじりの笑顔で大きく返事をした。
先輩、最後の最後まで優しかったね。
ホントにありがとう。
ありがとうーーーーーーーー。
ペコ。
あたしは心を込めて先輩にお辞儀をして、お店を飛び出したの。
そして。
店を出たあたしは、真っ先に電話したんだ。
鉄平のケータイに。
プルルルルーーーーーー。
緊張。
しばらくして、電話の向こうから鉄平の声が聞こえてきた。
『……もしもし』
あたしは鉄平が出たと同時に勢いよく切り出したんだ。
「鉄平っ。今からあの病院の近くの自然公園に来てっ。話があるのっ」
『……なんだよ』
「いいから来い!待ってるからっ。じゃあねっ」
あたしは、一方的に言うだけ言って電話を切った。
ドキドキドキドキ。
き、緊張したぁーーーーー。
自分でもこの強引さにビックリだよ。
でも、もう言うしかないんだ。
「ーーーーーよし!」
あたしは気合を入れると、そのまま待ち合わせの公園にダッシュしていったんだ。
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