T・R
花奈よりこ
1
「うるっせーんだよ、ブスッ」
プツン。
そのひと言で、あたしの中のなにかが切れた。
あったまきた。
もう許せないっ。
ずいっ。
あたしは腕組みしたまま、目の前の憎ったらしい鉄平に一歩近づいた。
「ちょっと。黙ってきいてりゃ、ずいぶんと言いたい放題言ってくれるじゃない。でも、アンタなんかにそこまで言われる筋合いはないっ」
「なーにが黙って聞いてりゃだよ。さっきから好き勝手言ってんのはどっちだっつーんだよっ」
鉄平が、けっとバカにしたように横目であたしを見る。
ム、ムカつくぅ!
「元はと言えば、そっちが悪いんでしょ⁉︎なのになによっ。人のことブスだのなんだの!」
「だから悪かったって謝っただろ?それによぉ、人のことエロだの痴漢だの人聞きの悪いこと言ってるけど。誰もおまえの色気のねーケツなんて見たくねーっつーの。見たくねーもん見せられて、こっちこそ勘弁してくれってカンジ」
「な、なによっ!」
ボンッ。
あたしは、すぐ横の机の上にあった鉄平のカバンを思いっ切り投げつけた。
「いてっ。なにすんだよっ。てめっ」
ふん、いい気味。
と、思ってぷいっと顔をそらしたら。
プシュッ。
「冷たっ」
「あっれ。まだ入ってたんだぁー。もう空になったと思って。やっぱさ、パックのジュースのゴミはきちんと潰して捨てないと、すぐゴミ箱いっぱいになっちゃうからさぁー。あ、かかっちゃった?わりぃ、わりぃ」
鉄平が、さっきから飲んでいたオレンジジュースのパックを、ちょっと残ってる状態でわざとあたしの目の前でブシュッと潰したんだ。
ーーーーーーーな。
なに、コイツ。
なんでこんなにムカつくわけ?
「ちょ、ちょっと2人ともやめなよぉ」
同じ班の女の子が、オロオロしながらあたしと鉄平の仲裁に入ると、鉄平がうんざりって顔でそっぽを向いた。
「あーあ。こんなうるせーヤツほっといて、さっさと掃除終わらせちまおうぜ」
……もぉ、ムカつくっ!
「バカッ!」
あたしは、机の上の雑巾を思いっ切りアイツに投げつけた。
「ぶっ。冷てっ」
もう、信じらんないっ。
なんでこんなイヤなヤツなの⁉︎
「アンタなんか……。アンタなんか、いなくなればいいっ!!」
バンッ。
あたしは思いっ切り叫んで教室を飛び出した。
あたしの名前は、
高校1年、16歳。
アイツの名前は、
同じく高校1年、16歳。
あたしは、コイツを絶対許さないっ。
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