第34話 遊園地③

「――ちょっと待て。それってどういうことだ……?」

「だから、思いを寄せられてる男性を呼ぶことで、どのような男性が女性から思いを馳せられるのかというのを――」

「香織が俺のことを好きって……いつから!」

「なんで、そんなに怒っているのですか……。梓弓さんを勧誘する前ですし、五月とかではないでしょうか」

 香織と春太が付き合うようになったのは、クラスの連中に二人で出かけていることが広まってしまい、嘘で付き合うことになっただけ。

 香織が演技ではなく、本当に春太のことを好きなら――。

 恋愛成就部は、なんのために作られたんだ……?

「風見。どうして、お前は恋愛成就部を作ったんだ?」

「急ですね。それは、私が恋愛をしたかったからです。なので、鎖奈恵に頼んで作りました」

「羽籠が……?」

「大体、鎖奈恵がやってくれましたよ。梓弓さんのことを勧誘しようと提案したのも鎖奈恵ですし」

 たちまち頭が真っ白になる。

 どうして、恋愛成就部ができたのか。――楓花が恋愛をしたいから。

 どうして、春太を勧誘したのか。――香織が春太のことを好きだから。

「待ってくれ、風見。訳がわからない」

「何かおかしなことでもありました?」

「全部が全部、初めて聞くことばっかで、頭の中が……」

「香織が梓弓さんのことを好きって知らなかったのですか?」

「知らないよ! 知るわけない! 話したこともなかったし」

「そんなはずは……」

「なんなら、初めて話したのはアニメショップに行った時だぞ」

「アニメショップ……? 課外活動をした時ですか?」

「そうだ。あそこまで、泣いている香織と話して、それが初めてで……」

「あの時の香織は最悪でしたね。目の前に梓弓さんっていう好きな人がいたのに、恥ずかしがって話しかけれないなんて」

「だから、なんで香織が俺のことを好きになってるんだよ!」

「そんなの香織に聞いてくださいよ」

「俺は香織とそれまで、関わったことはない。一度もだ」

「だったら、なんで映画に行ったんです?」

「だって、それは羽籠が――」

 また、羽籠。

 春太はなぜ香織と映画に行くことになった? 羽籠のせいだ。

 その前に何があった? 香織が春太にオタクだとバレたせいで不登校になったから。

「……風見、もう羽籠と関わるな」

「急にどうしたんですか……」

「いや、なんでもない……」

 スクールカースト上位のギャル、羽籠鎖奈恵。

 彼女はどうして、話しかけてきた?

 利用するため? 何かと好都合だったから?

 やはり、春太には羽籠鎖奈恵が分からない。理解ができない。

 しかし、もうどうでもいい。

 少なくとも、楓花は嘘をついていないと思えた。

 自分に今信じられるのは、友達と呼べるのは楓花しか残されていないと春太は思ってしまっていた。

「なあ、風見。俺らって仲いいはずだよな」

「さっきからなんでもかんでも、唐突ですね。いいと思いますけど」

「じゃあ、名前で呼んでもいい? 楓花って」

「別に構いませんけど……」

「うん、ありがとう」

「じゃあ、私も春太って呼びますね。梓弓って言いづらくて……」

「分かったよ、楓花。じゃあ、行こうか」

「行くってどこにですか? 具合はもういいのですか?」

「おう! すっかり治った」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る