第41話 雨の降る日

 雨の降る日だった。

 外に出なくても、雨粒が地面に落ちる音が強くて、嫌な雨だと分かってしまうような雨。しかし、不幸中の幸い。雷鳴は轟いておらず、そこまで不安定な気候なわけでもなかった。

 とはいっても、雨となれば気分は下がる。

 雨が降ると、湿気のせいでいつも通りの調子は出ず、ジメジメしていると口うるさく言ってしまう。そんな雨の日には最適だったかもしれない。

 ――彼女が学校から、いなくなると宣告するには。

 舞台が整いすぎてしまったのであろう。


  ※

 

 遊園地に行って以来、春太の周辺の人間関係は次第にちぐはぐになってしまっていっていた。

 楓花は学校に来なくなってしまい、話すことはなくなっていた。

 香織と話すことがなくなっていった。

 羽籠と話すことも次第に減っていった。

 香織も、羽籠も春太に気を使い話しかけなくなってしまったのだろう。

 しかし、それは彼らの人間関係が修復不可能になる原因を加速させただけ過ぎなかった。

 現に、春太は誰とも喋らなくなり、羽籠と香織は二人で話している。

 ここまで人間関係が拗れてしまった理由――春太が、辻香織を振ってしまった。それが一番の要因だ。

 春太は自分自身の行いに疑問を感じていた。辻香織と付き合いたくない理由を見つけられていないのだ。

 香織が嫌いなわけではない。話は合うし、春太にストレスを感じさせることをしてくるわけでもない。

 それでも、違和感が拭えなかった。

 意地で優しくされているような……本心ではなく義務というか、とにかく恋愛感情を抱けない。どうしても、辻香織を――。

 自分を好きになってくれた女子を好きになれなかったのだ。

 そのまま付き合っていれば、よかったのではないか。と思うときもある。

 だが、梓弓春太は辻香織を振ってしまった。この事実が変わることはない。

 そこに明確な意思はないのに、どうしても付き合いたくはなかった。

 どうして、別れを告げたのか。

 それは簡単なことだ。

 風見楓花を好きになってしまったからだ。

 そして、人間関係は拗れる。

 楓花が学校に来ないのであれば、部活は活動しない。

 今まで仲の良かった、梓弓春太、風見楓花、羽籠鎖奈恵、辻香織はいつしかバラバラになってしまった。

 四人が揃うことはもう……ない。

 そう思っていた。

 

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