第22話 それだけは嫌だ
【さなえ:どうだった? どうだった? 香織とのデートどうだった?】
【春太::別にデートじゃねえよ。ただ、映画見てご飯食べて帰ってきただけ】
【さなえ:それ、デートじゃん】
【春太:は? デートってお互い好きな男女同士がやるものだろ?】
【さなえ:へー。じゃあ、香織のこと嫌いなの?】
【春太:別に嫌いじゃないけどさ】
【さなえ:じゃあ、デートじゃん! ひゅーひゅー】
めんどくせえ。と春太は画面を見つめながら思う。もう既読無視でいいやと、トーク画面を開いたまま携帯の電源を消す。
帰宅して、ベッドで寝ころんでいると羽籠から鬼のようにメッセージが届いていた。アプリの通知が八十五件だなんて。放置してたアプリでもそんなになったことないのに。
だが、羽籠が気になってしまうのもわかる。香織と、春太が二人で出かけていたのだ。
もし目撃したら、デートだと思ってしまうかもしれない。
二人だけで出かけて映画館に行って、食事にまで行った。確かにデートに見えるかもしれない。けれども、それは元々友好度が高い男女がすることで成立するもので……。
春太は、一緒に出掛けるまで香織と話したことがなかった。
それをデートと呼べるのか。
(にしても、俺よく話せたな。話したことなんてなかったのに)
ほぼ初対面の女子と、オタク同士とはいえ会話があそこまで弾むとは思わなかった。
なんだか、前にも話したことあるような……いつも話しているような……妙な安心感がそこにはあった。
【さなえ:ちょっとー! 既読無視しないでよ!】
携帯が鳴り、画面を確認すると羽籠からメッセージが届いていた。怒り狂う猫のスタンプを添えて。
【春太:だって、めんどくさいんだもん】
【さなえ:ひどくない? 香織には優しくして、あたしには冷たいの?】
それとこれはまた別の話だろ、と思いつつこれ以上面倒なメッセージが来るのも嫌なので、春太は突き放してしまうことにした。
【春太:うん】
【さなえ:へぇー。そうなんだ。じゃあ、あたしのこと嫌いなんだ】
【春太:そこまでは言ってないだろ】
春太も鬼ではない。
それに相手は、一応スクールカースト上位のギャルさん。刃向かう勇気はない。
【さなえ:嫌いだったらそれはそれで、傷つくけど】
【春太:嫌いだったら、わざわざ返信しないから】
必死にフォローを入れる。冷たくしすぎた。
腹が立つし、面倒くさいけど相手は女子。もう少し優しくするべきだっただろう。
【さなえ:ほんと? 春太クン、ツンデレじゃん笑】
【春太:じゃあ、もうそれでいいよ】
【さなえ:じゃあ、あたしともデートしてくれるの?】
【春太:それだけは嫌だ】
この日のやり取りはここで終わっていた。羽籠から何分待っても返信は来なかったため、春太は寝る準備をしてすぐに寝てしまった。
明日も学校があるのだ。この疲労を引きずったまま、登校したくない。
この時、春太は自分が辻香織……クラス内付き合いたいランキング第一位の女子と二人で出かけてしまった重大さを分かっていなかった。
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