ドラゴンさんの子育て日記④
新聖暦889年 新月の一日
所謂新年というやつである。年の始まり。この日は色々な催しを人は行うのである。
ドラゴンたちはあまりそういうの気にしないため、我は忙しそうにしている人間たちを見ていた。
ライラに突っ立ってるのは邪魔と言われて、我は悲しかった。そのため、我は役に立つぞと気合を入れて人間たちのお手伝いをしようとしたら色々壊してしまった。すまぬ。我、人より力が強い。気合を入れたら壊してしまった。
ライラに怒られた。もう少し制御できるようにしなければルグネのことも傷つけてしまうかもしれないと。我、それ聞いてルグネの事を思った。
我が制御を誤ればルグネはすぐに死んでしまうだろう。人の子とは脆弱なものである。それはいやである。我、もっとがんばる。
あと人の世では新年に、前の年に生まれた赤子が無事に年を越したことを祝う儀式が行われるということでルグネも里でその儀式に参加させてもらったのである。我、母として参加である。この我が人の赤子の母として、人の里でこのような儀式に参加するとは。真に世の中何が起こるかわからないもので、面白きことよ。
それにしても人の年の数え方は、この新年のときに一つ年が上がるというもので、我のルグネも一歳ということになる。ルグネも一歩大人に近づいているのだなと思うと我はなんともいえない気分になる。なんといえばいいのだろうか、じーんとくるのだ。
ちなみに今日も人の雄共は我をちらちら見ておった。ライラがにらんだら視線をそらしたが。なんなのだろう?
新聖暦889年 新月の四日
ルグネを抱っこしたライラを見てふと、そのまま抱きついたら最高のふにふにになるのではないかと思った。
新聖暦889年 新月の五日
決行したら怒られた。赤子を抱いているときに抱きつくなと。
すまぬ。
新聖暦889年 新月の八日
ルグネは竜体の我を見てきゃっきゃっ笑っておる。
我の姿を見ておびえもせずに笑う人間などそうはいないのだが、などと考えた。ルグネにおびえられないのはうれしいことである。
そういえばライラも最初はおびえておったのに、今ではすっかり我にそんなもの見せない。
友人は我に対抗するだけの力を持っていた……というか、本当にあの友人は人のくくりに当てはめてはいけない存在だと思う……、が、ライラはか弱い人である。たぶん我が何かアクションを起こせばすぐ死ぬだろう。でもライラは我がおっても笑っておる。逆に我に説教もする。
人は不思議だ。
新聖暦889年 新月の十一日
人の里に騎士が訪ねてきたらしい。何でも我がライラと最初に出会ったときの様子をどこからか聞いたらしく、人をさらうドラゴンを退治しなければという正義感にかられておるらしい。
我はライラに赤子の扱い方を聞きたかっただけであり、人をさらいたかったわけではないのだが。
ライラに我が里に行こうかといったら、「話がややこしくなるので来ないでください」ってきっぱり言われた。
ひどいぞ、我だって説明ぐらいできるのである。
里まで我まで行くとややこしいからとライラを送り届けた。あとで戻るのでおとなしくしているように言われた。
新聖暦889年 新月の十五日
行っていいという合図が来たらすぐにライラを迎えに行く予定だったのだが、合図がこない。
ルグネを拾ってからライラにこんなに会わないのははじめてである。我、ちょっとさびしい。ルグネもさびしそうだ。
新聖暦889年 新月の十六日
うーむ、行っていいのだろうか。行ったら怒られそうだが、どうなっているか気になる。我、うずうずしてじたばたする。
ルグネになかれた。
すまぬ。
新聖暦889年 新月の十八日
ようやく合図がなった。
そこに向かったら、なんか武装した人たちがいた。我を警戒しておった。
が、ライラが「シルビア様は危険なんかじゃないですよ」と怒ってくれておった。
なんかその言葉がうれしく感じた。
我、その時ルグネが落ちぬように結界を張った上でルグネもつれてきていたのだが、武装した人間に「赤ん坊を食べる気か」などといわれた。意味がわからぬ。我がなぜルグネを食べねばならぬのだ。
ライラがそれに対して怒っておった。我、ライラと武装した人間たちを見守る。
ライラが一生懸命説明している。我、難しいことはライラに任せて人型になってルグネと遊んでおった。
人型の我を見て武装した人間たちはぽかんとしておった。何を驚いておるのかさっぱりわからなかった。
「我、帰っていい?」と聞いたらこくこくうなずかれたので、ルグネとライラと巣に戻った。
なぜあやつらは顔が赤かったのかとライラに聞いたら、答えてくれなかった。なぜじゃろう?
新聖暦889年 新月の二十四日
あやつらは元いた場所に帰っていったらしい。これで静かな元通りの生活である。
しかし少し前までルグネとライラがいる生活など考えられなかったのだが、今では二人がいないとさびしくなる我なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます