ドラゴンさんの子育て日記㉟
新聖歴892年 宵月の一日
我の子供たちは、本当に愛い。目に痛くないぐらい我が子が可愛いなどといっておった雌たちの気持ちを我は昔は理解できていなかったが、今は理解出来る。我が子達は本当に愛い。
新聖歴892年 宵月の四日
年があければルグネも五歳。そのことも踏まえて我はラオと話した。ルグネが魔力を持っていた場合と、持ってなかった場合のことを。持っていてもいなくても我の愛しい子には違いがないが、魔力を持つか持たないかでルグネがどんな未来に進んでいくかというのが異なるのだ。
新聖歴892年 宵月の七日
今日もパシャパシャする。我、結構飽きっぽいけどパシャパシャするのは全然飽きない。子たちの成長をこうして形に収められるのは良いことである。
新聖歴892年 宵月の十日
肌寒くなってきておるから、ルグネが寒くないようにしなければ。我ら竜は寒さに弱くないが、人というものは寒さに強くないからの。村の人間が作ってくれた防寒具をルグネに着せている。ルグネのために人が作ってくれたもので、ルグネに似合っていて愛い。
また、おそろいでシノウールとラビノアのも作ってくれていた。着る必要はないが、お揃いということで着せている。同じような恰好をさせるのも愛い。あまりにも愛いため、我は顔をにやけさせてしまっていたらしい。シノウールとラビノアに「母さん……」と呆れた目を向けられた。そんな風に言われても愛いものは愛いのである。
新聖歴892年 宵月の十五日
ラオが我にくっついている。くっつきたくなったらしい。ラオが我のことを好きだと示してくれるのは心地よいものだ。
新聖歴892年 宵月の二十日
ライラからの手紙を読む。ライラが幸せそうでほっとする。もうすぐ生まれる子供もどれだけ愛いのだろうか。我、ライラの子だと思うとより一層生まれる前から愛おしい気持ちになる。我、ライラ、大好き。
新聖歴892年 宵月の二十七日
思えば、宵月にルグネを拾ったのだ。ルグネを拾ったからこそ今の我が居る。ルグネが居たからこそ、我はこうして変わったのだ。
そう思うと、ルグネに我に拾われてくれた感謝でいっぱいになった。親が子を捨てるというのは子をいとおしく思っている今では憤慨することだが、それでもルグネの親がルグネを捨ててくれたからこそルグネは我の息子になったのだ。そう思うとその捨てたルグネの親には感謝する。
新聖歴892年 深月の三日
もう深月かと思ってしまう。ルグネを拾うまでは我はあまり時の流れが早いなどと感じたことがなかったのだが、日に日に成長していく子達を見ていると月日の流れの早さに驚いてしまうものだ。
新聖歴892年 深月の十日
母君、父君、ミカガネが子達の面倒を見てくれるということで、ラオと二人で過ごす。ラオとの二人の時間も結構楽しい。ラオと沢山のことを話す。子供達の話題ばかりなのは、我もラオも子達のことを大切に思っているからだろう。ラオも血がつながらなくても、種族が違っても我と同じようにルグネを大切に思ってくれておる。それが、嬉しいと我は思う。
新聖歴892年 深月の十二日
ライラに会いたくなったから王都にいく計画を立てる。
ついでに劇も見に行くのである。
新聖歴892年 深月の十七日
王都では、ライラのお腹は大きくなっていた。触るとお腹が動いていた。此処にライラの子がいるのだなと実感する。劇に家族で行こうと思っていたが、劇場にまだ幼いルグネ、ラビノア、シノウールは入れないらしい。そのため、きんきらきんの家の者達が子達を見てくれることになった。
ラオと一緒に劇を見に行った。劇の内容は悲しい恋のお話だった。我にはよく分からないが、人の世の中にある身分、それが違う男女の恋。そして最終的に引き裂かれてしまうという話で、我は悲しくなった。あれだけ好き合っているのに結ばれないなどと、身分というものは面倒なものだ。
というか悲しくなって泣いてしまった。
ライラに感想を沢山話した。ライラはその劇の原作の本も貸してくれた。我、本というものは存在は知っていてもあまり読まない。でも気になって読んだ。
ライラの家に泊まることになっていたのだが、夜更かしして読んだ。
我、号泣。
このお話、元々現実であったことを元に書いているそうだ。となるとかわいそうなハーレは実際にいるということに……。
新聖歴892年 深月の十八日
徹夜して目の赤い我に、子達はそれぞれ反応を示した。
ルグネは「どうしたの? 大丈夫?」と優しい反応を、ラビノアとシノウールは「……母さんは本当に、ほら、赤くなってる」と呆れながらちょっとの優しさを見せてくれた。
なんか劇とかお話を気に入った我を見て、きんきらきんの家が色々本もくれた。棲家に帰ったら読もう。
新聖歴892年 深月の二十二日
棲家で我は本を読んでいる。ラオが本に夢中な我を見て拗ねていた。
新聖歴892年 深月の二十七日
劇は子達は一緒に楽しめなかったので、年が明けたら祭りにでも出かけようかと話になっている。我、それも楽しみである。
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