ドラゴンさんの子育て日記68
新聖暦896年 氷月の一日
今年も最後の月がやってきた。ルグネが寒そうにしているので、どうにか温めてやりたいと思ってならない。
竜である我は寒さをそんなに感じないが、人の身だとやはり気候の差には影響されてしまうのであろう。代わってやれるのなら代わりたいと思うが、それは不可能である。出来るのは魔法で温めたりすることぐらいだ。
新聖暦896年 氷月の三日
ミカガネはまだ帰ってきていない。
年収めまでに帰ってきてほしい。我はミカガネがいないと寂しい。
新聖暦896年 氷月の四日
村に下りたら相変わらず竜の道場の連中が絡んできた。母君の友人は楽しそうになんか一緒にいるし。楽しそうなのはいいが、我を巻き込まないでほしい。
新聖暦896年 氷月の八日
ミカガネが帰ってきた。我は嬉しくてミカガネをぎゅっとした。シノウールに「母さんが一番子供っぽいよね」などと言われた。ガーンとショックを受けた。我はそんなに子供っぽいのだろうか。
新聖暦896年 氷月の十日
ショックを受けたが、我は我である。うむ、嬉しい時に嬉しいとちゃんと言いたい我である。
新聖暦896年 氷月の十二日
今日は雪が積もっていたので、雪で遊ぶ。村の子供達も楽しそうだ。
新聖暦896年 氷月の十三日
雪にはしゃいで遊びに出かけた村の子供が一人行方不明だと聞いた。村の事が好きなので、村の子には死んでほしくない。なので家族総出で捜索した。
ちゃんと見つかった。
危ない所だったが、すぐに見つける事が出来て良かったらしい。我らは感謝された。良かった。
新聖暦896年 氷月の十六日
ライラから年収めを王都で過ごさないかとはまたお誘いが来ている。今年はまだルアノが無理そうなので来年考えると返信した。王都の年収めはどんな感じなのだろうか。色々大変とは手紙で書いてあるが。
新聖暦896年 氷月の十八日
子達が魔法の練習をしている。ルアノは興味深そうだ。幸運の青い鳥何て呼ばれるルアノは魔法とか使えないのだろうか。と言ってみたが、使えないと体を張って表現された。
使えないというのは本当にか弱い存在だなと思って、ルアノに何かないようにしなければと思った。
新聖暦896年 氷月の十九日
寝る前に今日もラオと話している。眠っている我が子達が愛い愛いと口にする我の話をラオは沢山聞いてくれるのだ。少し離れたところに居るミカガネに「寝なさい」と少し注意されてしまった。
確かにあまり夜に起きていると明日起きられないかもしれぬと、眠った。
新聖暦896年 氷月の二十一日
今日は子達を連れてラオが村に下りた。我は巣でのんびりとしていた。そしたらしばらくしてラオたちが戻ってきた。
なんでも隣国からやってきたものが「竜は悪しきもの」とか言って絡んできたらしい。そしてラオ、ラビノア、シノウールが竜だと気づかなかったようだ。ラオが適当にあしらったらしいけど、また来るかもしれないとうんざりしていた様子だ。
2号やきんきらきんに報告しておくことにした。人の世界だと色々面倒らしいので、2号やきんきらきんに対処してもらった方がいいらしい。我はよく分からないので、ラオに任せておくことにした。
新聖暦896年 氷月の二十三日
人の姿で村に下りたら、竜は悪しきもの~がうんぬんかんぬん、色々言っているのを見かけた。村人たちは何だか冷めた目をしていた。というか、我に気づかないで竜は~とか語られても。我、目の前にいるんだけど。
「美しいあなたが竜の毒牙にかかるのは~」とかなんか言われたが、ラオが引きはがしてた。竜の毒牙も何も我、竜なんだが。あと戦いとか出来なさそうな見た目なのだが、竜がいたとしてどうする気なのかよく分からない。こやつごときが我らを殺せるとは思えないし。
新聖暦896年 氷月の二十五日
像を壊そうとかしていたらしく、村人たちに「竜は悪しきもの~」とか言ってた連中が追い出された。なんかいろいろ言っていたようだが、年収め前にいなくなってくれて良かったと我は思ってならない。
だっているとちょっと邪魔だし。
2号たちから何も返信はないが、あの連中がこの村に何かしないように目を光らせておかないと。我、村人たちに何かあったら悲しくて仕方がないのだ。
新聖暦896年 氷月の二十七日
母君と父君がやってきた。「竜は~」とか言っていた連中の話を聞いて「殺す?」とか聞いてた。母君と父君、我と似てる。あんまり考えるの好きじゃないのだ。
ラオやミカガネが言って、大人しくすることにしたらしい。まぁ、ラオならいいようにするだろう。
新聖暦896年 氷月の三十日
年収めである。また明日になればあたらしい年が始まる。
今年も楽しかった。
ルグネ、ラビノア、シノウールがすくすくと元気に育っている事が何よりも嬉しい。
村人たちは相変わらず優しいし、我は気に入っている。此処での年収めは本当に楽しいものだ。母君と父君も楽しそうにしている。
竜であるとか、人であるとか関係なしに、楽しく年収めが出来るのってとても良い事だと我は思う。
来年はどんな年が待っているだろうか。
楽しい年が来るのを我は望んでいる。
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