ドラゴンさんの子育て日記㊾

 新聖暦894年 茄月の一日


 ラオとの交換日記も結構な冊数になった。日記も同様だ。こうして記録が積み重なっていく事は良い事である。ずっと後になって、読み返したら懐かしくなるだろうか。


 新聖暦894年 茄月の三日


 今日は読書をした。本はライラがよく送ってくれる。楽しいのである。

 我が子達も、文字を読めるようになっているので、住処にある本を結構読んでいる。難しい字は読めないみたいだけど、大体は読めるのだ。


 新聖暦894年 茄月の五日


 ミカガネの元へ竜がやってきた。ミカガネは家族の事情で少し、住処を離れるという事だった。寂しいが、そういう事情なら仕方がない。本当にいつの間にか、ミカガネが傍にいるのも当たり前になっている。


 新聖暦894年 茄月の十日


 ラビノア、シノウール、ルグネが我とラオの絵を描いてくれた。素晴らしい。我の宝物。人型のと、竜体の両方を描いてくれたのだ。我もお返しに子達の絵を描こうと思ったが、全然上手く描けなかったのでへこんだ。我には、我が子達の可愛さを絵で表現する事は出来ない。


 新聖暦894年 茄月の十三日


 ライラから手紙がきた。友人の事だった。今は亡き友人の関連遺跡が見つかったとの事。ライラは我とフェスタリアが友人であった事を覚えていたようで、手紙をくれた。我の友人は結婚して大陸を渡ったが、それまではこの大陸で好き勝手にしていた。

 自由気ままに、やりたいように行動し続けていた友人だった。ちょっと気になるので王都に顔を出したいと思った。ラオに言ったら、一緒に行こうといってくれたので子達もつれて王都に向かう事にする。


 新聖暦894年 茄月の十五日


 王都に急いで向かった。我、案外友人の事を気にしているのかもしれない。こんなに気にかけているつもりはなかったけれど、亡き友人の事を、気にかけていたようだ。

 ライラもきんきらきんも我らが来るのが早くて驚いていた。いつもよりスピードを出してしまったから、子達が少しくらくらしていた。悪い事をしてしまった。


 新聖暦894年 茄月の十六日


 《紅蓮の魔女》、《破滅の魔女》などと言われていたフェスタリア。大陸を渡って、この大陸には帰って来なかった。友人がなくなったのは百年ほど前だけど、この大陸の歴史から消えたのはもっと前だ。

 でも短い間でも、あ奴は多くの痕跡をこの大陸に残している。まぁ、その証がいまだに書物や伝承で伝えられている《紅蓮の魔女》や《破滅の魔女》という名であろう。

 我の友人。結婚してからは会う事もなかった友人。ルグネを拾ってから、よく友人の事を思い起こすようになっていた。またこうして、友人がいた痕跡を見る事が出来るのが我は嬉しくて、寂しい。

 友人は、憧れと怖れと、様々な感情を今生きている人たちにもたれてるらしい。人の身でありながら圧倒的な力を所持していた友人。人である事が信じられないぐらいの強さを持っていた。それだけの事をやらかしていた友人の生きた証は今もなお、存在しているのだ。


 新聖暦894年 茄月の十八日


 友人の関連遺跡に、ラオと共に向かう。子達はライラの家で見てくれるらしい。ちなみに、国の騎士達やきんきらきんも一緒に向かった。地下遺跡って、ここは確かフェスタリアが隠れ家にしていた一つだ。

 あ奴は中々、いろんな事をしていたのである国では英雄で、ある国では指名手配犯のような扱いだったはず。

 この隠れ家、我も来た事ある。懐かしい。ここに来るまで覚えてなかった。

 中に入る際に、友人が作ったゴーレムと狙撃用の魔法が邪魔をしてきた。我とラオがいたからどうにかなったが、きんきらきん達だけで来たら怪我をしたかもしれない。それにしても死してなお動く魔法というのは、やはりあ奴は人として凄かったのだなぁと思った。きんきらきん達もすごく驚いていたし。

 それなりに私物が残っていた。懐かしいものだ。ラオは此処に来た事がなかったので、物珍しそうに見ていた。百年前の遺物として色々回収されていた。


 新聖暦894年 茄月の二十日


 住処に帰る事にする。友人の事を思いだして、ちょっと寂しい。


 新聖暦894年 茄月の二十四日


 友人の事が書かれた本をきんきらきんがくれたので読む。ルグネ達にも教えておく。


 新聖暦894年 茄月の二十六日


 ミカガネが戻ってきた。ミカガネに会うのも久しぶりに感じる。ちゃんと戻ってきて良かった。かえって来なかったら、我、悲しい。ただでさえ友人の事を考えて我は悲しいのだ。ミカガネまでかえって来なかったらもっと悲しくなる所だった。人間の友人なんてあ奴だけだったから。ライラは家族。


 新聖暦894年 茄月の三十日


 友人の事が劇として上映されているらしいので、今度見に行こうと思う。友人の事を考えるのは悲しくも寂しいけど、友人の生きた証があるのは嬉しい。

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