ドラゴンさんの子育て日記⑭

 新聖歴890年 文月の三日


 ラオはまだ戻ってこない。教えるのが上手い竜の場所までそれなりに時間がかかるようだから仕方ないか。

 そう思うのだが、ラオと番ってから基本的に我はラオとずっと一緒に居た。だから、正直我寂しい。

 番う前はラオとどれだけ会わなくても正直気にならなかったのだが、ラオを好きだと自覚したせいか我寂しい。



 新聖歴890年 文月の十日


 ラオがまだ戻ってこない。

 寂しいという思いがにじみ出ていたのか我母親なのにラビノアとシノウール、ルグネに慰められた。

 ライラにも元気出してくださいって色々貢がれた。

 我はそんなに顔に出ているのだろうか。もう少しこう母としての威厳をもちたいと思った。



 新聖歴890年 文月の十三日


 遅い。我、寂しくて死んでしまうぞ。



 新聖歴890年 文月の十五日


 ようやくラオが戻ってきた。一緒にやってきたのは見覚えのある竜である。

 名が出てこないが、交流はあるはず……だ。名を思い出せないのを悟ってか、呆れた声をあげられた。



 新聖歴890年 文月の十六日


 やってきた竜はミカガネというらしい。我とも何度か会った事がある。

 ミカガネは四体の子竜を育てた事があるらしいのだ。それを聞いた時思わずおおっと思った我である。

 そしたらの、前に会った時は何も反応示さなかったのにといわれた。

 仕方がない事である。その頃の我は自分の子など持つ気もなかったのだから。

 ちなみに戻るのが遅くなったのは準備をしていたのと、途中で絡まれたかららしい。



 新聖歴890年 文月の十九日


 子たちとライラが我が寂しがってたなどと告げたせいで恥ずかしい。

 ラオがその発言を聞いて本当に嬉しそうに笑っておって、何とも言えないむず痒い気持ちになった。



 新聖歴890年 文月の二十三日


 四体の子竜を育てたミカガネも流石に人の子の育て方は知らないのでライラに色々聞いていた。

 何故、そこで我に聞かぬのだと問いかけたら我の子育ては不安だといわれたのだ。

 ぬぅ、ルグネをこれまで育ててこれた実績があるというのに。



 新聖歴890年 文月の二十五日


 子たちはミカガネに懐いていた。我、母親なのにミカガネの方が慕われている気がして、ラビノアとシノウールに飛行を教えるのに混ざる。

 教え方が本能的すぎてよくわからないから邪魔といわれた。我凹む。

 凹んでいたらラオとライラに慰められた。ルグネは飛ばないというのに一緒に飛ぼうとジャンプを繰り返していた。



 新聖歴890年 文月の三十日


 ルグネが泣いていた。

 一生懸命、ラビノアとシノウールの真似をして飛ぼうとしていたルグネにミカガネが貴方は飛べないのよといったからだ。

 まだ二歳のルグネは竜と人の違いもわからないのもあって、説明が出来なかった。



 新聖歴890年 蛇月の二日


 何時かちゃんと竜と人の違いを言わなければならないだろう。そして我の子でないという事実も。

 それを知ったらルグネはどう思うのかの。人間はそういうものを気にするとライラが言っておったしと色々考えてしまう。



 新聖歴890年 蛇月の四日


 ライラがきんきらきんから手紙が来たと喜んでおった。

 国の長が来るまでまだかかるというのも書かれていたが、後はライラに対する恋文であったようだ。

 ライラは手紙一つで喜んでおって愛い。嬉しそうにしながらルグネをあやしておった。

 嬉しそうな顔のライラを見て「ねーね、うれしい?」とルグネが聞いていた。凄い愛い。



 新聖歴890年 蛇月の十日


 ミカガネに我が子育てをしているのが不思議といわれた。

 我自身もルグネを拾う前の事を思うと不思議である。



 新聖歴890年 蛇月の十二日


 ライラにきんきらきんの事をきんきらきんといっていたら、ちゃんと名前があるのですよと怒られた。

 でも我興味ない存在の名は覚えられぬ。ライラは大事だから覚えておるぞといったら恥ずかしそうにそっぽを向かれた。

 それにしてもきんきらきんの名がなんだったか本当にわからぬ。



 新聖歴890年 蛇月の十五日


 ミカガネとライラに自分たちが子を見ておくから二人で過ごしたらといわれたのでその言葉に甘えた。

 子が生まれてからラオと二人というのも珍しい。ラオは嬉しそうにしておった。

 うむ、我も子たちやライラ、皆で過ごすのも嬉しいが、ラオと二人というのも嬉しい。

 それを言ったらラオは感激していた。こやつ、本当に涙腺が弱いの。

 あとそのまま交尾した。



 新聖歴890年 蛇月の十七日


 人型の姿でルグネの事を抱っこしてたら、ラビノアとシノウールに自分も!と二匹に鳴かれた。

 可愛かったので交互に抱っこしていった。そしたら今度がルグネが自分もという。

 同時に抱っこは無理である。ルグネと子竜たちを同時に抱えたらルグネが傷つきそうであるし、そもそも人型の我の腕はそこまで大きくない。



 新聖歴890年 蛇月の二十日


 ラビノアとシノウールが力加減を覚えたと自信満々に言うのでルグネと遊ばせてみる。

 ただ心配なので我とラオとライラとミカガネではらはらしながら見守った。

 大丈夫だった。でも心配なので何度もラビノアとシノウールに言い聞かせた。



 新聖歴890年 蛇月の二十五日


 ミカガネはすっかりこの場になじんでいる。

 我ミカガネ好きであると告げたら今まで名前も憶えてなかったのにと呆れられた。


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