ドラゴンさんの子育て日記㉒

新聖歴891年 文月の二日


 今日もラビノアとシノウールが人化を学ぶ。また失敗したと落ち込んでいた。

 落ち込んでいても我の子らは可愛いのぉ。


 新聖歴891年 文月の五日


 村にたてられた我ら竜の像を見ると何だか感心してしまう。我は細かい作業が得意ではないから、こういう細かい作りのものをみると驚く。

 我ら竜は人よりも力は強いけれども、こういう細かい作業が得意なものは少ない。うむ種族にとって得意なことと不得意なものがあるということであるな。

 我は細かい作業をやると苛々してしまうからな。我からしてみればそういう細かいことをやるよりもどんっと力押しの方が楽だと思ってしまうからの。

 でも我もルグネと暮らすようになって力加減を覚えられるようになってきた気がする。



 新聖歴891年 文月の十日


 ラオと二人の時間を過ごした。母君やミカガネ、ライラが気を利かせてくれて、二人で過ごした。

 ラオと二人で過ごす時間は嬉しくなる。家族で過ごすのも嬉しいけれど、ラオと過ごすのも嬉しいのである。子たちはまだ、子供だけれど、いつか彼らは巣立ちをする。そのいつかの日は、ルグネの場合特に早い。我らに取っては一瞬。そう思えるほどの時間でルグネは大きくなる。

 ……にぎやかな今も、しばらくしたら当たり前ではなくなるのだなと実感する。特に人間と、我ら竜の寿命は違うから。あの、友人が亡くなった時のような喪失感を我はいつか味わうのだろうなと思うと少しだけ寂しくなった。

 寂しくなった我を、ラオが慰めてくれた。


 新聖歴891年 文月の十五日


 きんきらきんがもうすぐまたやってくるらしい。

 ライラが教えてくれた。


 新聖歴891年 文月の十八日


 ライラがご機嫌な様子で我は嬉しい。我は、ライラが好きだ。

 ライラが楽しそうにしていると、嬉しくなる。

 ラオも、子達も、母君も、ミカガネもライラが嬉しそうで嬉しかった。


 新聖歴891年 文月の二十一日


 ラビノアとシノウールが人化を一生懸命やっていた。だけど半分しか上手くいかないという中途は半端な状態になっていた。尻尾とか、鱗がそのままで、下半身は竜のままみたいなそんなそんな感じになっておった。

 二匹とも泣いておるし、ルグネは不思議そうな顔をしておるしで、大変だった。


 新聖歴891年 文月の二十五日


 ラビノアとシノウールに元気を出すように言う。

 しかし、我がルグネを抱っこするために人化しているのを見て何とも言えない表情をして、ふいっと顔を背けられてしまった。我、凹む。ライラに「お母さんを無視したら駄目でしょ」と怒られていた。



 新聖歴891年 蛇月の二日



 きんきらきんが村にやってきている。ライラが村の方にいっている。



 新聖歴891年 蛇月の四日


 ラビノアとシノウールが頑張って、人化が出来るようになった。

 ラビノアは我似で、シノウールはラオ似である。ミカガネに一目で我らの子とわかりそうなほど似ているといわれて、何だかうれしかった。ルグネは人化した二人を戸惑った目で見ていたけれど、ラビノアとシノウールとわかると、嬉しそうに笑って近づいていった。


 新聖歴891年 蛇月の十日


 ライラがやってきた。きんきらきんはまだいるらしい。ライラの様子がおかしかった。


 新聖歴891年 蛇月の十二日


 ルグネ、ラビノア、シノウールが遊んでいる。子竜たちは、人化している。子たちは可愛いのぉ。

 我はその様子を見ているだけでも和む。しかし、ライラが何か悩んでるのがわかって、我は気になる。


 新聖歴891年 蛇月の十五日


 きんきらきんが、明後日帰るらしい。そしてライラの悩みを聞いた。ライラは、きんきらきんにプロポーズされているらしい。


 新聖歴891年 蛇月の十六日


 ライラは平民で、きんきらきんは貴族というやつで。我にはよくわからんが、同じ人の中でも身分差というのがあるらしい。我より人の世に詳しいラオがいっていた。でも、我たちとライラは親しくしているから平民でも、貴族に嫁いでも問題ないとかそういう話になっているらしい。

 きんきらきんは、帰るまでに返事が欲しいといっていたそうだ。それで、ライラがそのプロポーズを受け入れるのならば……、すぐにではないけれどもいずれライラに一緒に王都に来てほしいとそういっているんだと。

 ライラはきんきらきんのことが好きだけど、我らと離れたくないという、我にとって嬉しい思いがあったり、あと貴族の夫人になることへの不安とか色々あるらしい。我は、ライラに行ってほしくないと思った。だけど、人のライラの短い人生を我が縛る事はできないとも思った。だから、我は背中を押した。


 新聖歴891年 蛇月の十七日


 ライラがプロポーズを受け入れた。きんきらきんは笑顔で帰って行った。次にきんきらきんがこちらにきた時に、ライラもそのまま一緒に王都に向かうということになるらしい。それまでに準備をしなければならないという話だ。

 人は結婚式なるものをやるということで、その準備をきんきらきんは王都でしておくらしい。ライラの晴れ舞台、我も参加できるであろうか。



 新聖歴891年 蛇月の二十日



 ライラが幸せなのは嬉しいけれど、ライラがしばらくしたらいなくなると思うと我は寂しい。どうしても寂しい。という思いをラオに沢山聞いてもらった。



 新聖歴891年 蛇月の二十五日


 子竜たちはライラが結婚するということもなんとなく理解しているらしい。幼いルグネは、まだ理解していない。

 子竜たち、ライラに懐いていたから何だか我同様寂しそうだ。

 我も寂しい! でもライラが幸せになるのは嬉しい。我もラオと思いが通じて嬉しくなった。ライラもきっとその結婚式なるものをしたら嬉しいはずだ。我が、ライラに何かできることあるだろうか。

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