ドラゴンさんの子育て日記㉑
新聖歴891年 新月の一日
新年である。
ルグネも三歳になる。拾った頃は小さかったルグネが大きくなってきている。人の子というものは、すぐに成長してしまうもので、本当に目が離せない。まぁ、竜も子のうちは、ちょっと見ていないうちにすぐに変わってしまうものだからの。
新年のお祝いは、今年も村の人間たちと祝った。我らを受け入れてくれるこの村の人間を我は気に入っている。
ルグネも子竜たちも人の子たちと遊んでおる。でもまだ子竜たちは人化が出来ない。人化したいという気持ちが強くなっているようで、新年のお祝いのときも我とラオに早く教えてといっていた。
我なんてラビノアとシノウールぐらいの歳の頃は、人化したいとさえ考えておらんかった。やはり人の子のルグネと育ち、人とかかわる暮らしをしているからこそ人化したいという気持ちが大きくなっていくものなのだろうか。我の小さな頃など、人とかかわってもこなかったからの。ふむ、小さな頃にどう過ごすかはやはり、様々な影響を与えるのだな。などと、我は考える。
母君も新年の祝いに村にやってきた。村の人間が母君の像も作りたいと言っていた。母君はそれを了承した。我とラオの像の近くに母君の像も出来るのか。
新聖歴891年 新月の五日
ラビノアとシノウールに人化を教える事になった。とはいえ、こんなに幼い頃から人化を学ぶ子竜はあまりいない。もう少し大きくなってからするのが基本である。しかし、子竜たちは早く人化出来るようになりたいといっておったから我らは教える事にした。
新聖歴891年 新月の七日
ラビノアとシノウールが落ち込んでいる。人化が上手く出来ないのだ。まだ始めたばかりなのだからそこまで落ち込む必要はないと思うのだが。
新聖歴891年 新月の十日
ラビノアとシノウールは飛ぶ練習も相変わらず続けている。飛ぶ事や人化など子竜たちは今色々学んでいる最中だ。
その様子を見るとやはりルグネも飛ばしてやりたいと我は思う。魔力検査が行える年まであと二年。ルグネはその頃もっと大きくなっているだろうと思うと、二年後が楽しみだった。
新聖歴891年 新月の十三日
ラオへの交換日記を今日も書く。ライラに相変わらず仲良しですねと言われた。交換日記を書かないとラオが悲しそうな顔をするのだから仕方がなかろう。それに喋るのと交換日記をするのとでは別の楽しさもあって我は面白くなっているのである。
……ラオが我の事を沢山書いているのは恥ずかしいけれども、嬉しい事であるしな。
新聖歴891年 新月の十七日
ライラがきんきらきんからの手紙が嬉しいと笑っていた。
本当にライラはきんきらきんが好きであるな。
新聖歴891年 新月の十九日
ミカガネが一生懸命に人化の術を教えている。我とラオは、教えようとしたけれど教え方が下手だったので、見守っている。我の場合気づけば出来るようになっていた人化なので、コツとか聞かれてもよくわからないのである。
飛び方に関しても我は上手く教えられないし、凹む。凹んでいたらルグネに元気を出して―といわれた。愛い。
新聖歴891年 新月の二十日
ルグネが竜体の我の身体をぺたぺたと触って、笑っている。一緒に我の身体をなでているライラが言うには、竜の鱗がひんやりとしていて、触っていて気持ち良いらしい。それにしても息子に自慢の鱗で喜んでもらえると、我は嬉しいのである。
新聖歴891年 新月の二十二日
ラオと二人で、子供達の将来についての話をする。交換日記の中でも、我が子達の将来について考えて盛り上がっておるが、こうして口に出して子達の未来について話すのも楽しい。
ルグネを拾う前の我は子を産む事や、子育てする事に関心などさっぱりなかったのに、今ではすっかり子達が可愛くて仕方がない。我は子達の将来を考えるだけで楽しくなるものだが、他の子を持つ竜たちも同じなのだろうか。
新聖歴891年 新月の二十四日
母君がルグネと遊んでいる。ちなみに「ばあば」呼びをしている。子竜たちは、「おばあちゃん」と呼んでいる。母君的には子竜たちにも「ばあば」呼びをしてほしいらしいが、やってくれないらしい。
新聖歴891年 新月の二十七日
母君とミカガネと我で会話を交わした。個人的に子育ての先輩である母君とミカガネとじっくり話してみるのも楽しそうだと思ったからである。子達はライラとラオが見てくれている。
母君はまさか我が孫を見せてくれるとは思わなかったから嬉しいと、言いながら我の子供時代の事を話す。我もまさか自分が人の子を此処まで可愛がり、我が子を産み落とすなどと思っていなかった。
ミカガネはもう成竜になっている自分の子達の子育ての話をする。ミカガネは我が恵まれているといった。子育ては助けてくれる人がいなければ結構大変なものらしい。我とラオはミカガネの配慮から二人の時間などが結構とれているが、そういうのも取れないぐあいバタバタしたりもするらしい。
我にはミカガネもいるし、ライラもいるし、母君も近くにきたし、それで大分楽なのだと。そういわれて、改めて母君とミカガネに感謝の気持ちを伝えた。
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