ドラゴンさんの子育て日記52
新聖暦894年 深月の一日
今年もあとふたつきほどで終わる。なんとも時が経つのははやい。
日記を書いていたら我の肩にルアノが乗ってきた。愛い奴よ。
新聖暦894年 深月の三日
まだルアノは小さき鳥なので、王都まで連れて行ったりと大きな移動をさせるのは厳しいらしい。生まれたばかりの個体はすぐに死んでしまうのだ。正直新たな家族をライラにも見せたいが、しばらく我慢するしかないだろう。ライラが妊娠していなければライラの方を連れてきたのだが、仕方がない。
新聖暦894年 深月の七日
ルグネがルアノと話していた。とはいえ、言葉が通じ合っているとかそういうわけではない。ただルアノに話しかけて、ルアノがぴぃぴぃと返事をしていたのだ。愛い。
ラビノアとシノウールも、ルアノの面倒を一生懸命見ようとしている。我の子達は、いい子である。
新聖暦894年 深月の十日
子達がラオに剣を習っている間、ルアノの事は我が預かる。竜体で寝転んでいる我の上でピィピィ鳴きながらルアノは勝手に遊んでいる。我の体の上で飛び跳ねたりする遊びらしい。我は遊具か何かか? と思ったが、楽しそうなのでいいだろう。
それにしても、ルアノは生まれたばかりのようだが、それなりに知能が高そうだ。こちらが言った事を理解しているというか、何度かちゃんと行動で示せば剣の練習をしている子達に近づいたらいけないとかちゃんとわかってくれている。賢き子よ。
新聖暦894年 深月の十五日
手紙で友人について聞かれた。我が友人についてまたちゃんと本としてまとめようという動きがあるらしい。我に話を聞きたいと。我は聞きたいなら聞きにくればいいと返信しておいた。
ルアノの写真などを一緒に入れておく。ちなみにライラからも写真が届けられていた。イラフもすくすくと育っているようでいい事だ。
新聖暦894年 深月の十八日
村に下りたら、来年か再来年に王都でも竜の祝祭をやるために王都と連絡を取り合ってバタバタしているらしい。しかし、この村、ルグネを拾った頃に比べて少しずつ立派になっている気がする。そんな風に言ったら我らのおかげだとか言われた。
感謝をされると何だか嬉しい。そういえば村でのルアノの初お披露目だった。ルアノの事を村人達は興味深そうに見ていた。我の家族だと自信満々に告げれば、笑顔で受け入れていた。
新聖暦894年 深月の二十日
今日はラオが構ってほしいと朝からやってきた。夢見が悪かったらしい。我との結婚生活が幻想だったという夢を見たらしい。我に「何を言っている? 番など作るわけがない」と言われていたらしい。
ルグネを拾う前の我ならそんな感じな気がする。何だか泣きそうな顔をしていたので今日は朝からラオを慰めた。我はラオを好きになっていて、番としてちゃんと大切にしていると告げていればラオに抱き着かれた。愛い奴。
でも我もそういう夢を見たらショックを受けるかもしれない。
新聖暦894年 深月の二十四日
友人についての事を色々と思い起こしてみる。昔の記憶なので、すべてを覚えているわけではないけれど、あの友人は我にとって大切だったからこそ他のものよりよく覚えている。
友人は他の大陸に嫁いで行って、それから会う事もなかったけれど、友人は我にとって特別な人間だったのだ。
我がルグネを拾ったのも友人の影響がある。本当に凄い友人だった。もう会えないのが悲しい。あの友人の事だから突拍子のない事をして今も生きているとかないかなと期待した時もあったが、流石に百年も音沙汰がないので死んでいるのは間違いないだろう。やっぱり悲しいのである。
新聖暦894年 氷月の一日
きんきらきんがやってきていると村から知らせを受けた。
わざわざ友人の話を聞きにきんきらきんが来たらしい。というか、妊娠しているライラを置いてこんなところで何をしている? と言ったら、我から話を聞く人材として相応しいと言われて、行くように言われたらしい。我、他の人間でもちゃんと友人の事は語ったぞ。
新聖暦894年 氷月の四日
沢山友人の事をきんきらきんに語った。ついでに、友人と交換していた交換日記も見せた。その交換日記を写していいかと聞かれたが、それは拒否した。あくまで見せるだけである。それにこれは我の宝物である。
それにしても友人はこれだけ死後もいろいろ研究されているとは凄いのである。
新聖暦894年 氷月の五日
きんきらきんが明日王都に帰るというので、我が巣でもてなした。ライラの番なので招待したのである。ライラを泣かしたら許さないと何度も言っておいた。
人間の雄は番以外に手を出したりもよくするらしいと本に書いてあったし、改めて言っておいた。ライラを悲しませる人間は我、許さない。
新聖暦894年 氷月の十日
我が子達をぎゅっとする。こうやってぎゅっとするの我、好き。
新聖暦894年 氷月の十七日
今日は父君と母君が遊びに来ていた。子達は楽しそうだ。そういえば、ラオの両親達に、我らが番になったことは言ったのだろうかとふと気になってラオに聞く。言ってないし、何処にいるかも知らないと言っていた。もし知ったらすぐに飛んでくるだろうとラオが言ってた。我もそう思う。
新聖暦894年 氷月の二十三日
ミカガネが子達を連れて雪遊びに出かけた。我は沢山パシャパシャしたものを見ている。
愛いものは幾ら見ても楽しい。
新聖暦894年 氷月の二十五日
父君と母君はまた遊びに来ていた。暇なのか? まぁ、子達が楽しそうなのでよしとしよう。
父君と母君はこのまま、年収めまでここに泊まると言っていた。そういうのもいいだろうと我はそれを受け入れた。
新聖暦894年 氷月の三十一日
年収めである。
明日になれば、年が明け、ルグネも七歳になる。子達がこうして成長していく事を感じられると何だか我は嬉しい。
村の者達との年収めは相変わらず楽しい。おもてなしをしてくれる。去年より少し豪華になっていたし、美味しいものも沢山だ。
子達は村の子供たちと遊んでいる。そこに今年はルアノも混ざっている。村の子供達もルアノの事を可愛がってくれていて、良い事である。
もう六回目の年収めだと思うと、不思議な気分だ。ルグネを拾うまでこんなものに参加する気が一切なかった我が、こうして村の年収めに参加する事が当たり前になっている。不思議な事よ。
父君と母君も楽しそうに混ざっているし、毎年の年収めは楽しいものだ。ラオは相変わらず我にべったりであるが、それもいつもの事である。
来年がどんな年になるかは分からないけれど、子達がすくすくと育ってくれて、皆でこうして笑いあえれば我は嬉しい。
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