ドラゴンさんの子育て日記㉕

 新聖歴891年 茄月の一日


 ライラの結婚式が今月ある。それを思うだけで、我はライラの結婚式が楽しみである。

 正直、ルグネを拾って人とかかわるまではこんな風に考えたことなんてなかったのだが、人とかかわるようになってから年月をきちんと人の基準で考えるようになった。我、ルグネと、ライラと仲良くなれてよかった。

 こんな気持ちを、知れてよかった。ああ、楽しみである。


 新聖歴891年 茄月の三日


 ラビノア、シノウールとルグネが楽しそうにはしゃいでおる。我は、子たちが楽しそうに過ごしているだけで嬉しくて仕方がない。愛い。どうして子というものはこれだけ愛いのだろうか。ライラも……いつか、子を産むのだろうか。ちょっと、楽しみになってきた。


 新聖歴891年 茄月の十二日


 ライラ、元気かな。すぐにそういうことを考えてしまう。人というものはすぐに年を重ねてしまう生物なのだから、ライラに時々会いに行かなければ。我、ライラが気づいたら寿命になっていたなんて悲しいのだ。

 あとライラの結婚式は正式に二十五日に行われるらしい。我、楽しみ。


 新聖歴891年 茄月の十四日


 母君とミカガネはライラへのプレゼントにいずれ子供が生まれた時に使えるものをいくつか選んだらしい。あとは体に良いとされている貴重な果物を結婚式前に取りにいくといっていた。


 新聖歴891年 茄月の十七日


 王都へ向かうことにした。ついたらきんきらきんの所に泊まらせてもらうことになっているそうな。

 ラオがそういう風に手続きしたらしい。きんきらきんの家は人の身体には過ぎたる大きな住まいだった。貴族というもの以外の住まいは、小さかったが、貴族と平民というもので同じ人でも住む場所でもこんなに違うことに我は驚いたものだ。

 ということを、ラオにいったらあのきんきらきんはこうしゃくとかいう家系らしい。同じ読み方で公爵と侯爵とあるらしいが、きんきらきんは公爵の家系らしい。うむ、違いが分からぬ。とりあえずラオが言うには人の世の中でもそれはもう偉いらしい。


 新聖歴891年 茄月の二十日


 王都で、ライラに会う。きんきらきんの家に人の姿のまま泊まることになった。しかし、きんきらきんの家の人間……世話をしてくれるものらしいが、彼らは我らにおびえておった。

 というか、別に世話などしてもらわなくても我らは自分のことは自分でやるしいいというのに。

 あと、ライラが我らと仲良く話しておるのをその世話をしてくれる人間たちは驚いてみておった。


 新聖歴891年 茄月の二十五日


 ライラの結婚式である。ライラは綺麗な衣服を身にまとっておった。人間というものは不思議で、服装で雰囲気ががらりと変わる。ライラはとても綺麗だった。きんきらきんも煌びやかな服装をしていた。

 結婚式にはたくさんの人がおった。2号とその家族も結婚式に参加していた。あと凄いきらきらしている連中がいっぱいおった。

 我も今日はきらきらしたものをきた。ラオもちゃんとしたものをきた。ラオは、我がドレスなるものをきているのを見て、嬉しそうにはしゃいでおった。うむ、ラオは我がこういう恰好すると嬉しいのか、今度から人型でラオが喜ぶものを着ても良いかもしれぬ。

 ルグネとラビノアとシノウール、ミカガネ、母君もきらきらした服を着ていた。きらきらした服を着た子たちはそれはもうかわいらしかった。

 我の子たちはどうしてこんなに愛いのじゃろう、とつぶやいたら、俺の番はどうしてこんなに可愛いんだろうとかラオに言われた。……人が大勢いる前で何をいっておる! 恥ずかしいではないか!

 ライラときんきらきんは誓いの口づけなるものをしておった。うむ、人は結婚式なるもので口づけなるものをするのか。しかしこのような大勢の前で口付けとは……うむ、もし我がラオとそんなことをしたらと考えると恥ずかしいものだと思った。いや、でもこれは、そうか、口づけを人前ですることで、番が自分のものだと周りに見せつける役目はあるのであるか。

 ……きんきらきんのものに我のライラがなると考えると複雑な気持ちである。ライラはきんきらきんのものに正式になって。ライラは、我らのもとにはもう帰ってこない。ライラは……結婚しても我にとって、大事な人間。家族みたいなもの。だけど、ライラは本当に……きんきらきんとずっと一緒に生きていくんだなと思うと、我寂しい。でもライラが幸せそうで、びっくりするぐらい綺麗で。それでも何だか我、涙腺が緩んでしまった。

 その後パーティーなるものがあった。我らにはきらきらした連中は近づかなかった。近づこうとした連中は鎧をまとった騎士に連行されておった。我らには必要以上近づかぬようにとなっていたようだ。確かに我ら、面倒なものがいたら殺しそうである。ライラの晴れ舞台で誰かを殺すのもとラオにいわれたし、それにこの場にいるきらきらしたものたちと争ったら面倒らしいのだ。

 ライラやきんきらきんと、あと2号たち一家とだけ交流した。2号は番と子が多く居るらしいが、その場には一番の番とその子供たちを紹介してくれた。しかし、番が多くいるというのに複雑な気持ちになった。我、ラオが誰かといい仲になったら我、暴走する自信あるのである。といったら、ラオが驚くほど喜んでいた。喜び過ぎである。嬉しいからいいのである。

 パーティーを楽しんでいたら、ライラにプレゼントを渡すのを忘れそうになっていた。ラオに言われて気づく。ライラの元へ駆け寄ってライラにプレゼントを渡した。ラオの提案で綺麗な袋の中にいれて渡した。

 ライラは中を見てちょっと唖然としていた。きんきらきんも見て驚いていた。中身はパーティーの間は出さなかった。あとでつけてくれるらしい。

 あと子たちや母君たちもプレゼントを渡した。ライラは喜んでいた。ライラが喜ぶと、我嬉しい。

 そんな感じでライラの結婚式は終わった。


 新聖歴891年 茄月の二十七日


 今日まできんきらきんの家に居た。ライラは我とラオのプレゼントをつけてくれていた。しかし、全部つけるのは……と全部を常につけることはないといっておった。パーティーとかでは全部つけるかもって。

 今日は指輪と首飾りをつけていてくれた。我、それを見るだけで嬉しくなった。明日にはもう帰る予定だから、ライラとルグネとラビノアとシノウールで一緒のベッドで寝た。ベッドなるものはふかふかであると驚いた。貴族なるもののベッドはふかふか度が高いらしい。

 ライラに何かあったらすぐ我に言うのだぞと告げて寝た。

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