真面目に生きたいのにジョブ遊び人って…ホンマもんの遊び人やん!
3匹の子猫
第1話 成人の儀
『そっちに1匹行ったわよ!』
オレンジのおさげ頭を揺らし、幼い見た目には似つかわしくない大きな両手剣を振り回す幼なじみが声をあげる。
『あいよ♪任せなって!』
俺は、慣れた手つきで2本のナイフを構える。向かって来るのは、こん棒を振りかぶったゴブリンである。俺の頭をミンチにしようとでも狙ってるのか、かなりの大振りで殴り掛かってきている…
『そんな大振り当たるわけないっしょ!』
左のナイフでこん棒を外に反らし、右のナイフでゴブリンの首筋を素早く切りつける。ゴブリンはその傷口から大量の血を吹き出しながら倒れる。
(ピクピクと動いてるし、まだ生きてはいるようだが…もう長くは持つまい。よし、完了。ビアンカも終わったかな?)
ビアンカの方を見ると、そこには体を真っ二つにされたゴブリンたちが転がっていた。残りは1匹のみ。その最後の1匹も既に戦意を喪失しているようで逃げ出そうとしていた。
『ヤー!!』
ビアンカはそれすら許さない。あっという間にその体に剣が吸い込まれていく…
『ビアンカおつかれさん!流石だなーあっという間にゴブリン4匹がスプラッタだ…怖い怖い。』
『アラン危ない!』
声と同時に左肩に鈍い痛みが走る…
ゴブリンがまだ生きていたようで後ろから肩を噛まれたようだ。俺は慌てて右手に持つナイフをゴブリンの顔にブッ刺す!流石に今度は絶命したようだ。
ビアンカが俺の方へ駆け寄り心配そうに言う。
『アラン大丈夫?油断しすぎよ!!器用に何でもこなす癖に、いつも爪が甘いんだから…』
『いたたた…、油断しちゃったな。。死にかけのゴブリンの力だし、傷は大したことなさそうだ!さっさと村へ帰って親父(村長)に報告しよう。』
『待って!傷を放っておいたら駄目だってばあさまがいつも言ってるでしょ!?そこに座って!!』
ビアンカは腰に付けている道具袋から薬草の葉を取り出し、傷口に張り付ける。
『痛ってー!シミる…!うぅ…俺この感じ苦手なんだよな~。』
『何子供みたいなこと言ってるの?明日からは私たちは大人の仲間入りするんだからいい加減しっかりしなさいよ!』
この世界では、12歳になると大人として扱われる。俺と幼なじみのビアンカは今年で12歳を迎え、明日は王都にある神殿にて【成人の儀】を迎える!国中の今年で12歳を迎える者が一堂に会するのだ!!
成人の儀では、神殿の神へ祈りを捧げ、これから生涯自身の力の源となる【ジョブ】を神から頂くのだ!
ジョブ、つまりは直訳すると仕事・職業のことだが、この世界では意味する内容は異なる。
例えば、ジョブで【戦士】を頂いたとして、これにより力や体力が上がりやすく、素早さが上がりにくいという特徴を得る。
また、【ジョブレベル】を上げることによって【戦士スキル】を使えるようになるという権利を得ることができるのだ。
仕事や職業の指す内容は、この者がどんな方法で働いているかということを指す。例えばお金で雇われ戦う【傭兵】、門を守る【門番】、町の治安を守る【衛兵】、中には城で王族を守る【近衛兵】などである。
つまりは、ジョブは1度選択すると生涯変更できず、内容次第で将来の仕事の方向が決まってくるのだ!本人はもちろん、家族、親族、皆が注目する大きなイベントなのだ。
『とうとう明日か~楽しみだな!ビアンカは戦士になりたいんだっけ?』
『うん!元々力任せに大きな武器を振り回すの好きだからね♪そして、王都の近衛兵になるのが夢よ!!
アランは、器用だから【レンジャー】、【盗賊】、【裁縫師】【細工師】なんかが選択肢に入ってそうね?何を選ぶか決めたの?』
『うーん…選択肢に何があるかも分からないのに今決めてもな~
…どうせよっぽど特殊なジョブを選ばない限り、【村長見習】の未来だしな。。』
『こんな王都に近くて、いい村の村長になれるなんて幸せ者なんだから文句言ってたらバチが当たるわよ!
でも特殊なジョブ…憧れるわよね!?明日、【勇者】とか【賢者】とか【聖女】とかになっちゃったらどうしよう!?』
この時はまさか本当に俺が、そんな特殊なジョブを引いてしまうことになるとは思いもしなかった…
そして、それが俺の運命を大きく変えることになることも。。
『さっ!怪我も治ったみたいだし、そろそろ村に戻りましょ!』
ビアンカが笑顔で言った。
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村へ戻ると門番をしているガルフおじさんが声をかけてくる。
『おう!アランにビアンカじゃないか。外で何か仕事だったのか?』
『親父の命で、近くの森で目撃されたゴブリンを退治に行ってたんだ。5匹もいたよ!』
『ほう!それはご苦労様だったな。そんな大量のゴブリンを倒せるなんて腕を上げたな?』
『4匹はビアンカが倒したんだよ。俺は1匹だけ…しかも油断して怪我までしちゃったよ…明日はもう成人の儀なのに情けないもんだよ。』
『そうか…怪我はもう大丈夫そうだな!成人の儀は、とうとう明日だったな?今年はこの村からはお前ら2人だけだ。夫婦水入らずの日帰り旅行とは楽しみだな?』
『俺らはそんなんじゃないって!』
『…そうか?既に尻に敷かれて、お似合いだと思うんだがな!』
ニヤニヤと俺をからかってくる…
『そうだよね…アランは馬鹿力の私のことなんて女として見れないよね…』
ビアンカが悲しそうに言ってくる…
『あっ!いや…その…ビアンカは見た目も性格もかわいいと…』
俺は焦ってシドロモドロになってしまう。
『あれー!アランってばやっぱり私のこと好きだったの?』
ビアンカがからかい顔でニヤニヤしている…
『っ!馬鹿野郎!みんなして、純情な少年をからかうなよ!
ほら…親父に報告に急ぐぞ!』
俺は振り返りもせず、逃げるよう村の中心にある我が家に向かう。
無事にゴブリンを退治したことを村長に報告を済ますと、
『ご苦労様だった!
明日はとうとうお前たちも成人の儀だ。朝早くに村を発たねばならんし、今日はもうゆっくりと過ごせ。何のジョブを得ることになるか楽しみにしているぞ!』
と親父が格好つけて言ってくる…
『はい!頑張ってきます!!』×2
俺らは元気に返事をする…
『それと、ビアンカちゃん…明日はうちのアランのお守り頼んだよ!』
『どうせ格好つけるなら、最後まで俺らを大人扱いのままで終われよ!結局締まらない終わり方になっちゃうだろ…』
そう言ってみんなで笑い合う…
俺の子供時代は文句なく幸せなものだった。優しい母と、厳しいが尊敬できる父、村の皆は村長の息子ということもあり、小さい頃から可愛がってくれた。
こんな幸せな環境を与えてくれた神?に俺はこの時点ではとても感謝していた。
あれは前世の話…俺は地球の日本という国で、どこにでもいる社会人として生活をしていた。
特に何もイベントもなく、日々を何となく過ごすだけの毎日に飽き飽きし、そんな毎日を変えたいと思いつつも、相変わらず1人部屋で大好きなゲームをして過ごしていた。
それは突然起きた…
テレビと俺の間の空間に次元の歪みが現れ、そこからバチバチ雷のような電流が溢れ出ていた。次の瞬間、「ドカン!」と何が飛び出して来て、俺にぶつかった…ただそれだけ。。
『あいたたた…次元の女神は怒りっぽいな~浮気したくらいで別次元へぶっ飛ばすなんて…
おや?その勢いで、この世界の人間を1人殺してしまったようだ…困ったな。。完全に死んでいる。
仕方ない!俺の管理できる世界へ連れていくか…』
たったそれだけ…
それで、俺はこのゲームのような世界にいるのだ!本当に運命とは不思議なものである。。
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