第34話 会談 後編

絶技の検証の影響で、会談自体がグダグダになったのは間違いない。しかし、アクティーの件の説明には、やはり絶技の説明は不可欠となるのは、仕方ないことなのだろう。


エリスでさえ、言葉だけでは信じれなかった話を、赤の他人が簡単に信じるはずがないのだ。



勿論、アクティーを捕らえて白状させたことにし、ハリー陣営に差し出せばエリスたちにも、ハリーたちにもスキルの説明はいらなかっただろう。


しかし、それではアクティーは王族を狙った者として、拷問の上、確実に死刑になるだろう。そして、命令をしたマリア王女は証拠もないので、知らぬを貫くだろう。


俺には、その選択肢が一番自分の秘密を守るにはよい選択なのは、分かってはいても選べなかった。甘いとは分かっていても、どうしてもアクティーも守りたいと思ってしまうのだ。




ナディアとマリンの回復を待つ間、一旦休憩を取ることとなった。レオナルドの殺気の影響で、俺とましろ以外の者はフラフラになってるのも理由の1つだ。



今まともに動けるのは俺とレオナルドのみ。必然と声を掛けられる。


『アラン、君がハリー王子に近づいた目的は何なのだ?』


『目的も何も…

俺はただ就職試験を受けに来ていて、早く終わったので、連れのビアンカの試験が終わるのを待っていたら、ハリー王子に声を掛けられただけですよ。


最初はただの迷子の少年だと思ってましたし、途中からは、ただのイジメられてる孤独な少年だと思って、友達になりました。


友達になってから、王子だと知らされましたが、既にエリスさんと王女とは知らずに友達になっていた経験があったので、特に何とも思わなかったですね。』



『王女と王子と知らずに友達になる?

…そんな偶然が本当に続けて起きるはずないだろう?君は、この国で何を起こそうというのだ?』



『と言われましても…

その偶然が起こってしまったのですからどうしようもありません。本当に、俺はそんな大それた存在なんかではありませんので、変に買いかぶり過ぎですよ…』


『その年で、習得に10年はかかるはずの魔力の剣を習得し、あのようなあり得ないスキルを持ち、私の殺気の中平然と動け、


さらに…その者が、王族の者と不思議なほど近くにいる…


これを普通とは言えないだろう?』



(たしかに!人に言われると、俺怪しさマックスじゃないか!?本当に全てが偶然に偶然の結果なんだけど…事実が既に怪しいとなると言い訳がない。困った。。)


『ははっ…

レオナルドさんに言われて初めて気付きましたけど…俺の存在って、本当にかなり怪しいですね!?本当に偶然でしかないのですが、言い訳すら思い付きません。


あの技、魔力の剣って名前なんですね!?俺は、魔法剣と呼んでますが、3週間前に冒険者ギルドでたまたまジークハルトさんからあの技を見せて頂き、真似をしているだけで、別に習得したとは言えない代物です。』



もう苦笑して、素直に話すしかなかった。



『君は、ジークハルトまで知ってるのか?そして、3週間で真似事とはいえ、使えてる…?


益々普通の人間から離れていっているぞ?俺には、君が悪魔だと言ってもらった方が信じられる。』



(さらに余計な墓穴を掘ってしまったのか…?)


『話せば話すだけ俺って、レオナルドさんにとって危険な存在になっていってますよね…?


正直俺は嘘は1つもついていません。後はレオナルドさん自身で、俺のことを見て判断して貰うしかないかと…』



俺とレオナルドの会話は、そこで終わりを迎え、会談が再開される。今度は、スムーズな会談となった。


内容は、アクティーは暫く今のままハリー王子を狙った振りをさせ、マリア王女を嵌めて、暗殺者を雇っていた事実を公然のものとすることにより、失脚させる計画を立てる。


定期的に今回のような、両陣営による会談を執り行う。



そして、最後に何故か俺をハリー直属の部下にするというものだった…


これは、ハリーが最初は言い出したのだが、途中から何故かナディアとマリンも賛成してきて…


最後にはレオナルドが、


『君ほどの危険な存在は…野放しにするより、俺の管理下に置いて、常に見張ってた方が逆にいいのかもしれない。』


と、言い出す始末…



エリスとイアンは、

『うちの、部下になるものを、横から持っていかれては困る。』


と言ってくれたのだが、


『アランの危険が、もし完全に疑いが晴れたら、副団長の権限を利用して、そちらの陣営に返してもいい!


それまでは、うちの陣営との友好のためと思って、こちらに差し出せ!』


というレオナルドの発言により、拒否することが出来なくなったのだ。



(ハリーの側にいることは、嫌ではない。


しかし、常に疑われてるレオナルドさんに見張られてる生活はしんどいかもしれないな…


まあ、考えても仕方ない!レオナルドさんにも認めて貰えるように仕事を頑張っていくしかないか…)




レオナルドは、会談の終わった後、資料を漁った。アランの情報を、調べてるのだ。


就職試験

1次試験 200/200 開始35分で終了

2次試験 112/200 特に特記なし

3次試験 文句なしの合格よ❤️


(3次のこれは…今年は兄が試験をしたのか…1次試験は35分で満点だと?天才タイプで体力は普通か…そういえば、試験が早く終わって、連れを待っていたと言っていたな。。)



研修の様子

1日目 

砂腕立て伏せ

賢くテストの意図を読み、最初に適度に減らし問題なくクリア。20キロ。


その後、他の者の2倍の重量に苦戦するも、1度も弱音を吐かずクリア。クリア直後、気絶し、医務室で治療。足は血だらけだった。友と彼女のために最後まで頑張れたとの弁。根性はあるようだ。


2日目以降

賢いので適当に手を抜くと思っていたが、手を抜く様子なし、最後まで全力で全ての研修をこなしていた。



(根性もあり、手も抜かないか…やはり妙に完璧過ぎる。。)




(これは!最近の医務室記録にアランの治療記録だらけではないか…4日前、自主訓練中に左腕骨折に、全身打撲と内臓への負担で意識なし半死状態で運び込まれているのを境に、毎日4~5回は大ケガで治療に訪れている…どんな訓練をしているんだ?いや、本当に訓練で負った怪我なのかすら怪しいな。。)




『あらーん♪レオナルドちゃんが私に会いに来るなんて珍しいじゃない!?何か私に用?』


『ライ兄、ちょっと話を聞きたい!』


『今年の近衛兵の就職試験で最初にライ兄のところへ行ったアランというやつのことを聞きたい。』


『珍しいわね?レオナルドちゃんが他人に興味持つなんて!あの子のことはよく覚えてるけど、あなたが興味持つほどの子には感じなかったけど…


頭がよくて、素早くて器用、あとは平凡な子だったわよ。まあ、目だけはいいみたいだったわね。あの子がどうしたの?』



『そうか…今度うちの陣営に入ることになったからな。どんなやつか、ちょっと確認しときたかったんだ。』


『へー!珍しいわね?レオナルドちゃんいつも周りは古い付き合いの人間しか置かないのに…あの子に何かあるの?』



『いや、あのアランというやつはハリー王子の親友らしいんだ。ハリー王子が異常なほどの懐き具合だった。ハリー王子の希望でうちに来ることに決まったんだ。』


『なるほどね!弟を取られた気分だったのね?まあ、女の直感だけど、あの子は悪い子じゃないと思うわよ!そんなに心配しなくてもいいんじゃない?』


『あ~ありがとう。』


レオナルドは、それだけ言って部屋を出て行った。ブライトは、弟のその背中に何かを感じたが、これ以上は詮索できなかった。



(アランね~あの子に何かあるのかしら?)



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