第67話 リザードライダー

俺は、エリクサラマンダーの稀少種に名前を尋ねたが、ましろの時と同じで、特にないので俺が好きに呼んでくれていいとのことだった。


俺は悩みに悩んだ末に、エリクサラマンダーの女の子ってことで、【エリー】と名付けた。ましろからもヘレンからも、微妙な反応されたが、センスのない俺に名前をつけさせる方が悪いのだ!



『分かりました。私はこれより、「エリー」と名乗ります。主の役に立てるよう頑張ります。』


『いあ、普段からそんなに頑張らなくていいから…エリーにはエリーでしたいことをしたり、のんびりと過ごすのも大事だからね。


俺は、俺と一緒に過ごすことで、ましろやエリーにストレスになるのは嫌なんだ。』


『私は、ダーリンの側が好きだから、いつも服の中にいるのが好きだにゃん!』


『私も、出来る限り主の側で過ごしたいです。しかし、人間の街で生活するには身体が大きいのは理解してます。


可能な範囲で我慢はしますので、側にお仕えすることをお許しください!』


『それはいいのだけど、その主ってのどうにかならない?俺はアランって名前だから、アランと気軽に呼んで貰えると嬉しいかな?』


『それは、出来ません。私には、主は、主なのです。友達でも仲間でもありません。そこは、ご理解頂きたい。』



『そうか…じゃー呼び方はそれでいい!


でも俺は、これから共に行動するからにはエリーのことも、「仲間」もしくは「家族」だと思って接するよ。


ましろも最初にペットとして、同行するようになったんだけど、今では俺にとって「大事な家族」なんだよね!


俺は…残念ながら、ましろやエリーに比べると単純な戦力でいうと比べようもないほど弱い。主と思ってもらえるのが申し訳ないほどにね…


だから、守ってもらうようお願いすることもあるだろうけど、遠慮なんてする気はない。だって、家族には遠慮なんてしないで甘えることが出来るだろ?


だから、同じようにましろもエリーも何かして欲しいことがあったら、家族として気軽に甘えて欲しい。


俺に出来ることはかなり限られるかもしれないけどな…』



『ダーリンの大事な家族…!嬉しいにゃ♪』


『優しい主に仕えることが出来て、私は幸せであります。』



『それでは早速主にお願いがあります。

…私に騎乗して貰えませんか?


私のように大きなエリクサラマンダーは、遥か昔、一部の人間が騎乗して移動に利用していた過去があります。


私はその頃、いくら神に認められた特別な者とはいえ、人間なぞ乗せることを恥とし、バカにしておりました。


しかし、主に出会い、仕える喜びを知った今では、逆に是非私に乗って頂き、役に立ちたいと心から思っているのです。』



『俺がエリーに乗っていいの?助かるけど、そんな話聞いたこともないな…それってどのくらい前のこと?』


『乗って頂けるのですね!?嬉しいです!


確か1500年ほど前までの風習だったと思います。

その当時、エリクサラマンダーに乗ってる者を「リザードライダー」と呼んでおりました。』



『1500年!?そんなに前からエリーは生きてきたのか?一体今いくつなんだ?』


『主…。。。


あまり年齢のことを言われるのは、レディとして傷つきます。』


(…!?。。。そうか…種族が違ってもそれは、共通認識なんだよな…)



『そうだよな…すまなかった。』



『それでは、一度試しに騎乗してみませんか?最初はゆっくり動きますので。』


『今からか?それじゃ、少しだけ試してみようか。』



エリーの皮膚は、硬い鱗に覆われてなかなかにゴツゴツしていた。


しかし、背中に上がると、見た目には分かり辛いが、1箇所丁度座るのに適した形に変形してる部分があり、そこはまるで車の座席のように見事な座り心地と、安定感を持っていた。



(さっきエリーは神に認められた特別な人間の乗り物だったと言ったな…エリクサラマンダーは、もしかしたら、神がその目的のために生み出した生物なのかもしれないな…!?)



『乗り心地すごくいいよ!鞍も無くても問題無さそうだ。』


『では、少し動いてみますね。もし、お気づきの点ありましたら、お知らせ下さい。』


そういうと、エリーはゆっくりと走り出した。


不思議なことに、周りの風景の変化ではそれなりの速度が出てるように思えるのだが、俺には風も殆ど感じることがなかった。


『エリー、不思議と風の抵抗を殆ど感じないんだけど、エリーが何かしてるのかい?』



『それは、スキルの影響ですね。私たちエリクサラマンダーは生まれながらに、3つのパッシブスキルを持って生まれて来るのです。


どんなに強い風が吹いていても、影響を受けない「風避けの加護」というスキルと、


どんなに強い雨や雪が降っても、影響を受けない「雨避けの加護」というスキルと、


どんなに寒くても、暑くても、影響を受けない「寒暑の加護」というスキルがあります。


これらのお陰で、私たちは世界の殆ど何処にいても生活が出来るのです。』



『それは、物凄いスキルだね?それに結構な速度で走っていても殆ど揺れを感じないのも凄いな!?』



『壁でも地面と変わらず走れるように、地面に対して衝撃を与えるような走りはしません。』



(乗り物として必要な要素を詰め込み過ぎている!やはり、神が乗り物として利用するために生み出した生き物というのが濃厚か…)



『壁も走れるのか…どのくらいの壁まで走れるの?』


『油でも塗られてなければ、私には普通の壁は地面と変わらないです。天井でも普通に歩けます。』



(なんて優秀な…)



『天井に上られると、俺はまっ逆さまに落ちちゃいそうだけどね?』


『そんなことはありません。私が意識をしてれば、今主が座られている座席の部分は吸着させることができます。試しに立ち上がろうとしてみてください!?』


俺は言われるように立ち上がろうとするが全く動けない。



『これは凄いな!これなら確かに落ちないだろうね?』



『ありがとう!エリーが凄い優秀なことはよく分かったよ。あまりヘレンとましろを置いておくと心配するだろうから一度戻ろう。』



俺はこうして、優秀な乗り物でもあり、頼もしい仲間であるエリーを得たのだった。


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