第11話 ボス部屋

それからどれくらいの時間が経ったのだろう…俺は体に痛みを感じながら目を覚ました。


『あ痛たたっ…確かクリスさんに体当たりを食らって崖から落ちたんだっけ?


何で俺生きてるんだ?』



周りを見渡すと、狭めの通路の中にいるようだ。


側には、窓のように高さ1メートル、横幅も2メートルくらいしかない壁の裂け目があり、外には僅か50センチほどの足場が出ているだけ…


そこに偶然落ち、さらに運良く内側の方へ転がったから助かったらしい…



遊び人の運の良さ様々だな。。あの高さから落ちてよくこんな狭いとこに入り込めたものだ…


裂け目から顔を出し、下を覗き込むと恐ろしくなってくる。普通なら落ちて今頃死んでいた…




身体を色々と確認したところ、身体中に痛みはあるが、骨折はなく、動かせないところはないようだ。この洞窟はダンジョン壁で出来ているため周りを見渡せる明るさがあり、狭いなりに奥まで続いてるようだ。



(それにしてもクリスさんに殺されるほど恨まれる覚えが全くないんだが…一体なぜ?


いや!理由なんてどうでもいい!戻ったら必ず罪を償ってもらわないと!崖をよじ登るのは無理そうだし、奥に行ってみるしかないか…)



俺は警戒をしながら奥へと進んでいった。ここには特にモンスターはおらず、1本道だったため、何事もなく進むことが出来た。突き当たったところは、大きな扉がある広間だった。



『こ…これは。。ボス部屋の入り口か!?こんなところにあったから今まで見つかることがなかったのか…』


(後ろは崖、前はボス…1人になっての選択肢がこれはヤバい…泣きそう。。)



暫く佇んでいたが、手元には食料も水もない、ここにはモンスターも出ないので、食料も確保できない。じっとしてても弱っていくばかりだ。迷ってる暇があれば進むしかない!



俺は覚悟を決めて、扉を開いた!!


そこは何故か妙に生活感溢れる部屋だった。そこには筋肉質で毛むくじゃらな人間のような男の体にネズミの顔を持つモンスター【ウエアラット】がいた。俺が入ってきたことに驚いて固まっているようだ。



よく見ると武器すら持っていない!これは間違いなくチャンスだ!俺は勢いのままにウエアラットに飛び込んでいく。


『うぉおー!』


首を狙った最初の一撃は左手でガードされる。続けて、逆手で切りかかるもまたもや今度は右手でガードされる。


痛みからようやく襲われている状況が掴めたのか反撃をしようと動き出すが…


『まだだっ!!』


俺は今度は防御されるの前提で徹底的に手を切りつける。こいつが武器を持って振り回してくるのは、正直怖い…今のうちに相手の火力を奪う!


たまらずウエアラットは


『キュッアッー!』


と吠え何処かへ移動しようとする。おそらくは武器のところだろう…



『させない!!』

俺は進行方向の前に入り込みさらに腕を斬りつけていく。


このウエアラットはとにかく硬い!これだけ斬りつけても手は致命的な大きな傷を負うことなく血まみれだが動いている。


『今だ!』


俺は手の防御に意識を取られているウエアラットの隙を付き、左目を斬りつける!


『グギャーャッ』


これにはさすがに怒りを顕にして、俺に腕を振り回してくる。しかし、これは悪手だ。



俺はウエアラットの左側へ攻撃を避けながら再び腕を斬りまくる。ウエアラットには俺の姿は見えてないはずだ。ようやく左手は全く動かなくなった。



俺はこれをチャンスと思い、全力で死角から首を斬ろうと斬りかかる…


しかし、まるでそれを読んでたかのようにウエアラットがしゃがんで避ける、さらにそのまま体当たりをくらい一瞬だが距離を取られる。


この隙にウエアラットは武器のところへ走り去る。右手に持っているのは鉈のような大きめのナイフを持っていた。


『グルゥアー!』

傷を負わせた俺に怒りの声を上げるウエアラット。



改めて相対すると大きい!身長は俺とそう変わらないが筋肉の厚みが俺の2倍はあるのではないだろうか?


ウエアラットはその太い腕を高く掲げ、鉈を振り下ろしてきた。思っていた以上に早く、避けきれず左のナイフで流すしかなかった。


『ぐっ!重い…』


予想以上の重い一撃に片方のナイフだけでは完全に流しきれず、体ごと回転するように鉈を避ける。さらに、追撃に蹴りを放ってくる。俺は後方に転がって避けるしかなかった。


(片目、片手を潰してもこの力、迫力か!?やはりボスなだけはある!俊敏は俺の方が上、力はウエアラットがはるかに上か…焦るな!!。。俺の火力では例え首を攻撃出来ても致命傷を与えることは不可能だ。上手く立ち回って相手の戦力を1つ1つ奪っていくしかない)


怒り狂うウエアラットはゆっくり考える暇を与えてくれない。再び同じように斬り掛かってくる。


『同じ攻撃が通じるか~!!』

今度は両方のナイフをクロスしてから左へ流す。そして、その斬撃の勢いをそのまま利用して、駒のように回転速度を上げ鉈を持つ腕に斬りかかる。回転斬りが手首と肘に決まった。


『グギャーゥアー!!』

痛みから鉈を落とすウエアラットへ次々に斬りかかる。


『1.2.3.4.5.6.7.8.9.10…止めだ!』


俺はこれで終わりとばかり右のナイフを喉に突き刺す。確かに刺さった。俺はこれで終わったと一瞬気を抜いてしまった。そのとき…



『アラン大丈夫?油断しすぎよ!!器用に何でもこなす癖に、いつも爪が甘いんだから…』


ビアンカの声が聞こえてきた気がした。俺はハッとなり、サイドステップで横に飛んだ!先ほどまで俺のいたところへ何かが飛んできている…


「ジュッ…」


何か毒液っぽいものらしい。触れた地面がが少し溶けて煙を出している。ウエアラットはまだ諦めていない。目も死んでいない。



(いい加減学べ!どんなに有利になっても油断するな!止めを確認するまで命のやり取りは終わらない…


気を抜けば死ぬのは俺だ!!俺はビアンカのところへ絶対に帰るんだ!)


俺はウエアラットの右目を…鼻を首を斬りつける。ウエアラットが倒れても、背中から心臓を刺し、刺し、ウエアラットのうなり声も聞こえなくなっても、繰り返し刺しまくった。10回程刺したところで、



【ジョブレベルがあがりました】

【スキル 絶技を取得しました】



(勝った!…戦闘終了だ!俺はボスを倒したんだ!!


これでビアンカに一歩近づいた。)





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る